第14話

 練習を終えて帰ろうとして、駐輪所に向かいながら、悠人と彩は自然な形で一緒に帰ることになった。

「方向が一緒だから」と、つい言ってしまい、彩から

「えっ、私の家知りませんよね」と言われ、悠人は内心ヒヤっとした。

「……以前朝日中学校って言ってたから……俺も朝日中学だから大体方向一緒かなって」と誤魔化したけど。

幸い彩はなるほどといった顔をしてくれ、その後朝日中学校の話題につながったのでほっとした。

同じ中学校の出身ということもわかり、彩も親近感が湧いてきたのか、中学校の先生のことなどいろいろ質問してきた。


 悠人が放送部に入ったきっかけは小学校の時からの友達の亮に誘われて最初はその気はなかったこと、でも活動するうちに面白くなったと話すと、彩も最初は放送部に入るつもりはなかったが今は面白くなってきたと話し、共通の話題もあり、思いのほか話が弾むのだった。


 突き当りの大丸スーパーまで来ると、彩の家は道を左、悠人は右に曲がるのでそこで、

「また明日」

「はい、また明日」と言って別れた。


 彩と別れた悠人は、先ほどの2人の会話を思い出し顔が緩むのを感じながらも、親しくなればなるほど心が苦しくもなってきた。

『マシュウおじさん』のことを隠している自分に、後ろめたさを感じるのだった。

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