第11話 真実は語りたくないもの Truth is something I don't want to tell

(うぅ、心配ないよね?)


 もう遅い時間だと、子供扱いするディーにうながされ、寝室のベッドに横たわる。


 二日続けて家族が惨殺された時の悪夢を見たけど、今日は昼過ぎまで熟睡していたから大丈夫と、やや強引に自身を誤魔化した。


 そうしてシーツに顏をうずめるも、次は同じ屋根の下にいる彼の事を考えてしまう。元所有者より良心的であり、浴室の件を省みれば貞操の危機も少ないはずだ。


(んぅ… 悪い人ではなさそう、かな?)


 そう呟きつつも、まぶたを下げて眠りに落ちる間際、“此処ここにいてはいけない” と、何かの囁きが聞こえた――




 するりと意識が落ちた先、夢の中で衣服を着替えてボタンの掛け間違えも、私は深夜の旧市街を彷徨さまよう。


 途中でパブの近くを通っても明かりが灯っているだけ、無人の街に違和感を覚えながら、足は暗がりを求めて人気の無い場所に進んでいく。


(変なの、どうせ誰もいないのに……)


 やがて寂れた公園に辿り着けば、悪夢の元凶たる血塗ちまみれの猟奇殺人犯が猟銃をたずさえ、記憶と寸分違わない姿のままたたずんでいた。


 隠れていたクローゼットを開けられた瞬間、幼い私が突き出した “果物ナイフ” も深々と心臓に刺さっている。


 全ての親戚に忌避された最大の理由… 正当防衛とは言え、低年齢でしている事。


「なん、で…ッ、うぐッ!?」


 茫然としている私に向けられた銃口が火を噴き、弾丸が左胸を貫通した。溢れる血を飲み下せども、四肢から力が抜けて奈落の底へ落ちる。


 家族の分まで幸せになろうと、つたない決意はあったけど、やはり自分は重荷で沈んだ天秤から落ちる運命のようだ。


 諦めて観念したところで、暖かい手に身体が支えられる。


「深夜徘徊は頂けない、まるで夢遊病者だな、リズ」

「あ… れ…… 私、撃たれて?」


 慌てて胸を触っても致命傷の痕跡は一切なく、戸惑う私を抱いたディーは呆れた態度で、止めの一言を投げてくる。


「胸を揉みしだく癖は直せ、はしたない」

「~~~~ッ!!」


 散々な指摘をされて、声にならない絶叫が響き渡った。

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