ミクスチャの種類

 ・割れて増える者

 小国パセタを滅亡させた中型のミクスチャ。遺跡から何らかの理由で放出された、高濃度のエーテル汚染により自然発生した個体であり、複数に分岐する触手状の身体と、その先端部分に様々な動物の頭部と思しき器官を持っていた。名前は、肉体が損傷するとそこから新たな触手を生成、回復していたことに由来する。

 最終的には、ユライア王国国境の渓谷へ進出したが、ユライア王国軍が準備していた複数の罠と防御陣地、更にはカーネリアン・ナイトからの連携攻撃を受け、カーネリアン・ナイトと相打ちになる形で撃破された。



 ・団結する者

 フラットアンドアーチに出現した群体ミクスチャ。

 通常型は赤紫色の体表を持ち、大きさも人間程度と小型。4本の足を持つ下半身と8本の腕が生える上半身で構成され、胴体中程に牙の並ぶ口を持ち、頭部らしき部位は存在しない。一方、コマンダーは通常型に比べて一回りほど大きく、胴体上部に頭部に似た器官を備え、体表色も燃えるような赤色をしている。

 元々はイーサセラ・テクニカで生み出された群体ミクスチャだったが、フラットアンドアーチにおける試験の際、カサドール帝国側がイーサ管による制御に失敗して野生化していた。

 ブラッド・バイトの噛みつきを無傷で耐え、強固な外皮と頭骨を引き裂くほどの力を持つ上、群れとしての探知能力や脅威判断能力も高い。

 コレクタユニオンから依頼を受けた玉匣一行と交戦し、翡翠の右腕アクチュエータを損傷させた他、マキナ用狙撃銃も破壊している。しかし、リミッター解除を行った翡翠によってコマンダーが倒されると、通常型は統率を失って動きも鈍くなり、各個撃破されて全滅した。その後、持ち帰られたコマンダーの死体がコレクタユニオンによって解剖され、内部からカサドール帝国軍の鎧を身につけたキメラリア・アステリオンの遺体が出現したことで、カサドール帝国に疑問の目が向けられることになる。



 ・見つめる者

 カサドール帝国がポロムルへの攻撃に用いた大型の個体。

 球体状の身体に巨大な1つ目が特徴であり、全方位へ伸びる多数の触腕を備えている。この触腕は攻撃に用いる他、周囲の建物や地面、地形に突き刺すことで、身体を空中に固定することにも使用する。大きな眼球は分かりやすい弱点だったが、一般的な弓やクロスボウ程度の威力では全く効果が無く、大型クロスボウアーバレストから放たれた真銀製のボルトでさえも、怯ませることしか出来ないほどの強度を誇る。

 大型ではあるものの、あまり能動的な個体ではなく、固定地点から動こうとしないまま、自己に攻撃してくる相手を迎撃するような戦い方を基本としていた。しかし、長い触腕による攻撃範囲は凄まじく、建物を倒壊させることで足場を奪うと同時に、街路に展開した部隊をまとめて攻撃するなど知能も高い。

 ポロムルでは玉匣と交戦し、アポロニアに瓦礫をぶつけて軽傷を負わせたが、反撃に放たれた対戦車が眼球に直撃したことで撃破された。



 ・大地を踏み鳴らす者

 カサドール帝国軍がユライアシティへの侵攻に用いた大型の個体。見た目からはわかりにくいが、群体ミクスチャである

 巨大な胴体部はお椀型の甲殻に覆われており、その下部からは大樹のような2本脚が伸び、全体を支えている。胴体底面は甲殻に覆われておらず、房状に膨れ上がった肉が露出しており、そこからは人の手足に似た物が無数に生える。これらは群体の通常型として分化される部位であり、状況に応じて投下することが可能。投下された通常型は短い芋虫状の体をしており、甲殻を持たず全身がぬめりのある液体に覆われる。胴体部からは人間のような手足が複数生え、移動に使用する他、胴体部前方には円口類に似た口が存在し、攻撃や捕食に用いられる。ただ、小型個体の戦闘能力は失敗作と同程度であり、外皮強度もバリスタ程度で貫通することが可能であるなど、ミクスチャとしては貧弱。

 コマンダーは確認されている中でも最大種と呼ぶべきミクスチャであり、その防御力は対戦車擲弾を跳ね返し、ポラリスの魔術にも一定耐える程。特に甲殻部分は非常に堅牢であり、危険を察知した際には足を折り曲げて全身を覆う防御姿勢を取る他、その強度を用いた突進にも用いる。動きも巨大な見た目の割に機敏であり、特に直線移動速度は驚異的。ただ、旋回性には難があり、小さな目標を捉え続けることは苦手。

 ユライアシティの戦いでは、西門付近の大防壁を体当たりで崩壊させ、平民街にも戦闘により大きな被害をもたらした他、迎撃に当たったマオリィネ率いる重クラッカー隊を壊滅させている。しかし、重クラッカー5番機からの捨て身の攻撃により、ハーモニックブレードで脚部に僅かな傷を負い、流れ出た体液をポラリスの魔術に捕捉、追跡されたことで、体内の循環体液全てを凍結させられて撃破された。



 ・編み込む者

 カサドール帝国がポロムルを攻撃した際に用いた小型の群体ミクスチャ。

 上半身は房状の肉塊から、細くするどい6本の腕が生え、下半身は先端部に口を備える腸管のような器官で構成され、足などは持たない。ロガージョ程度の体躯であり、下半身を伸縮させることで跳躍を行い移動する。群体ミクスチャではあるが、コマンダーの存在は確認されていない。

 非常に機敏であり、対戦車ロケットや機関銃を回避する反射能力を持ち、鋭い碗部による素早い刺突を主要な攻撃手段として用いる。肉体の強度もミクスチャらしく、一般的な鋼の武器程度では傷もつけられない。

 ポロムルでは複数体が玉匣と交戦し、前衛に立ったファティマに軽傷を負わせている。しかし、翡翠の到着とファティマがミカヅキを装備したことで状況が一転。驚異と判断して攻撃を集中したものの、逆にまとめて一掃された。



 ・舞い遊ぶ者

 カサドール帝国軍が用いた飛行型ミクスチャ。ユライアシティとアルキエルモの戦いの際に投入された。

 樽のような胴体から、蝙蝠のような見た目の歪な翼が4枚と、短い手足がそれぞれ1対伸びる。頭部らしき部位は持たず、代わりに胴体上部には球体状の器官が2つ存在し、長い触腕を射出することが可能。この触腕は主な武器である他、先端部には口吻部が存在しており捕食にも用いられる。

 飛翔のために体は軽量であり、骨格や外皮は一般的なミクスチャよりも脆弱。また、飛行能力についてもホバリングや急旋回こそ可能だが、高速移動は不得手であり、機敏な動きは難しい。ユライアシティの戦いにおいては、この動きの鈍さは大きすぎる弱点であり、空戦ユニットを搭載した翡翠には一方的に撃破された他、アルキエルモの戦いでも特に戦果を残すことなく殲滅されている。



 ・音を立てぬ者

 ガルヴァーニ・トツデン配下の影が、ユライアシティに潜入する際に使役した中型の個体。

 胴体にあたる部分をほとんど持たず、6本の手足だけで体が形成される異形。この手足は人間の物と似ているが、体を支える脚部が手だったり、左右で手足が非対称だったりと不自然な形をとる。僅かに存在する胴体部分には2つの関節が存在し、腕足の可動域を広げている他、底面には小さな口吻部が存在している。

 似たような格好の個体が3体確認されているが、手足の形や配置がそれぞれ異なっており、群体ではない可能性が高い。

 移動時の静粛性に優れており、高い跳躍や高速移動を行ってもほとんど音を立てず、これが名前の由来にもなっている。同時に、ミクスチャらしい戦闘能力も併せ持つ。

 ユライアシティ中心部の宮殿裏庭園へ影と共に侵入し、ウィラミットと交戦。人体を切断できるアラネア糸を突進だけで容易く引きちぎった上、イーサ管を所持する長を庇うような動きも見せ、ウィラミットを追い込んだ。しかし、自動修復金属で作られた専用槍を装備するエリネラ・タラカ・ハレディが参戦したことで形成が逆転。瞬く間に3体とも撃破されている。

 


 ・抱え運ぶ者

 アルキエルモの戦いにおいて、ガルヴァーニ・トツデン麾下の奇襲部隊が使役していた中型個体。

 甲虫のような光沢のある胴体に、多数の関節を持つ4本の脚と4本の腕を持ち、胴体上部に短く太い口吻部を持つ。

 重量物を抱え上げて利用する性質が、名前の由来となっており、アルキエルモの戦いにおいても巨岩を転がすことで、マキナ輸送用トレーラーを攻撃している。その姿から、運転者だったダマルにはフンコロガシとあだ名された。

 このとき、似たような見た目の2体が出現し、格闘戦によって甲鉄1番機を破壊している。しかし、直後にイーサ管による制御をサンタフェが奪ったことで戦闘から離脱を開始。無警戒に背を向けたことで、甲鉄2番機による重榴弾砲の直接射撃を背面に受け撃破された。



 ・エーテル変異生物(事故により発生した存在)

 コルニッシュ・ボイントンによるキメラリア生成実験中に発生した最初のミクスチャ。

 外見等の情報はないが、エーテル遺伝子薬の投与に加え、施設の破壊によって漏れだした大量の安定化エーテルを吸収したことで肥大化しており、非常に大型の個体だったと考えられる。

 空間中からエーテルを吸収できる能力を持っており、エーテル機関で動作する機械類を動作不良に陥らせたことで、軍の行動を阻害し、結果的に共和国の都市1つを破壊し尽くす程の大被害を引き起こしている。

 しかし、政府の秘密研究だったことから、事故を隠蔽するため企業連合の生物兵器として一般に報道されたことで、大量破壊兵器等の使用に関する条約が破棄され、文明が崩壊へ向かうきっかけとなった。

 


 ・アンノウン(クロウドン災禍)

 帝都クロウドンの地下から出現した超大型不明存在。ミクスチャという呼称は用いられず、アンノウンとのみ称される。

 赤い半透明のゲルのみで構成され、それ以外には一切の外見的特徴が存在しない。あらゆる生命体、有機物を飲み込んでエーテルとして分解する他、金属などを溶解することも可能。また神代に出現したミクスチャと同様に空間中のエーテルを吸収する能力を持ち、マキナを含めたエーテル機関を搭載する機械類に動作不良を引き起こす。

 発生原因の詳細は不明だが、施設から漏れ出た大量の安定化エーテル燃料によって空間エーテルが高濃度化。エクシアン試薬を投与されたルイス・ウィドマーク・ロヒャーの遺体が核となって生成された可能性が高い。

 ゲル体であるため物理攻撃は効かないが、熱エネルギーによるダメージは受ける。しかし、クロウドンを飲み込む程の質量を持つため、通常の熱兵器での殲滅は現実的ではない。

 作中においては、クロウドン城から突如出現したことで避難が間に合わず、街に住む皇族貴族を含む住民や、包囲していたコレクタユニオン本部部隊に数え切れないほどの死者を出している。また、空間エーテル濃度の低下により、翡翠やノルフェン、玉匣などの行動に制限が発生した他、退避中だったダマルが自然に分解するという状況も引き起こした。しかし、安定化エーテル燃料を食い尽くしたことで肥大化は停止し、その後は囮となった翡翠に食いつき、移動することなく交戦を続け、最終的には天雷からの戦略レーザー照射を受けて蒸発消滅した。

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