生物・植物

生物一覧

 【人種ひとしゅ


 ・人間(現代人間)

 現代世界に生まれた人間を指す。人種人口の大半を占めており、現代における文明社会を築いた中心的存在。一般的な人間は、外見や精神面において800年前との違いはないが、神代人と異なりキメラリアとデミを祖としていることから、肉体の環境耐性が大幅に強化されており、特に空間エーテル濃度への順応性が極めて高い。また、稀に魔術と呼ばれる遺伝子的な超能力を発現する者も居る。



 ・キメラリア

 動物のような特徴を身体の一部、あるいは大部分に持つ亜人種。中には人間の特徴が全くと言っていいほど見つからない者も居るが、その見た目に関わらず全ての種に共通して、人語を理解し会話が可能であること、胎生哺乳類であること、あらゆる人種と交配し子を成すことが可能であるという特徴を持つ。

 キメラリアの現代における社会的地位は基本的に低く、都市部では庶民と認められる者も少数であり、ほとんどが貧困層や奴隷といった身分に位置する。この背景には、人間に対して数が少ないことは勿論、ほぼ全ての種が家族単位程度のコミュニティしか形成せず、異種はおろか同種の間にも連帯するという意識が薄いことが一般的にあげられる。また、種族の特徴に対する人間側の不理解も、差別の原因となっていることが多い。

 原初のキメラリアは、800年前の文明において生物学者であるコルニッシュ・ボイントンによって生み出された。これは当時、将来的危機と考えられていた重度のエーテル汚染問題への対策として、人類にエーテル汚染耐性を備えさせることを目的とした遺伝子合成実験の1つであったとされる。そのため、キメラリアは現代人間以上に優れたエーテル汚染耐性を持っていたが、変異などを引き起こすエーテル親和性も高かったため、800年前の実験段階ではミクスチャを発生させる事故も起こしていた。

【種族ごとの詳細についてはキメラリアの種族を参照】



 ・デミ

 キメラリアと人間の間に生まれる混血存在。キメラリアの身体的特徴などは、ほとんどの場合完全に失われ、見た目や身体能力から人間と区別することは難しい場合が多い。しかし、嗅覚に優れるキメラリアは、人間と異なる臭いからデミを判断することが可能である。

 デミの生殖に関する特徴として、デミ同士の夫婦の間に産まれた子は人間となり、子がデミとはならないことが挙げられる。同様に、デミと人間との間に子を設けても人間となる。唯一、キメラリアとの間にのみ、デミの子が産まれるが、この場合にはキメラリアとして生まれる可能性あるため絶対ではない。

 現代の人間社会におけるデミは、キメラリアの親を持つことを理由に、キメラリアと同様に差別的な扱いを受けることが多い。そのため、多くは人より沐浴を繰り返したり、裕福な者なら香水や香木で臭いを消すことで、出自を隠して過ごす者が大半である。

 800年前の時点におけるデミは、キメラリアからエーテル耐性を継承したことが確認され、人類の存続と進化の希望ともくされていた。しかし、デミが子成すよりも早く文明崩壊が発生したため、デミからの遺伝や、産まれてくる現代人間について、神代文明による研究が行われることはなかったとされている。



 ・神代人かみよびと(古代人間)

 800年前に存在した人間。エーテル汚染耐性及びエーテル親和性が低いこと以外、現代人間と大きく異なる身体的特徴はないとされる。

 長い歴史を持ち、非常に高度な科学技術文明を誇ったものの、続く戦争と一連の文明崩壊によって大幅に数を減らし、地下シェルター施設に逃れていた僅かな生存者も、仕組まれたマキナの暴走や生命保管装置の罠により、一部の例外を除いて絶滅した。

 現代においては、言葉の通り神の如き力を持ち、人種を生み出した祖として語られるが、テクニカ等の知識層を除く一般大衆には、架空の存在のように捉えられている。



 ・骸骨(生命の器)

 意識を持った骨格。ダマル以外に確認例はない。

 筋が存在しないにもかかわらず、骨は普通に結合し動いており、感覚も人と同じようにある模様。自らの意思及び外力によって部品ごとに分解することが可能で、バラバラにされても頭蓋骨と下顎骨以外動かせなくなる他には、特に活動に支障は生じず、誰かに組み直してもらえれば元通りになるなど、とにかくほとんどが謎の存在。

 800年前に企業連合軍が行った生命の器計画において、アストラル体を別の身体に移す実験によって生まれた唯一の成功例とされる。ただ、同じ条件でも他に成功例はなかったため、何故成功したのかが解明できず、計画は放棄されている。

 当時の研究者は、頭蓋骨にアストラル体が存在し、その制御によってエーテルによって骨格を、動作させているのではないか。エーテルは空間中から取り込んでいるものの効率が悪く、有機物のエーテル化(食事)による不足分の補給が必要と考えられる、と仮説を立てていたが、実態の解明には至っていない。

 唯一ハッキリしていることは、骨格は元々、自動修復性のある超硬セラミックで作られた実験用擬似人体だったということくらいである。




【現代生物】


 ・アンヴ(一角鹿)

 額に枝分かれする1本の角を持つ、鹿に似た草食動物。

 環境適応能力が高く、草原地帯は勿論のこと、雪に覆われる寒冷地帯や乾燥地帯にも生息する。これら植物が少ない地域では食性が雑食となり、小型昆虫類などを捕食する。角は一生伸び続けて生え変わることは無いが、枝分かれした先が衝撃で折れることはよくある。

 野生個体はやや気性が荒く勇敢であり、騎獣としては飼育個体よりも向いている場合が多い。

 流浪民族の中には、野生個体を捕まえて乗りこなすことを、成人の証としている場合もあり、人間との関係は非常に深い。

 重装備の兵士を乗せて、長距離を軽快に走り抜ける優れた身体能力を持ち、強力な個体だと角を用いた突進で軽装兵を貫くこともできることから、一般的には軍獣と呼ばれ、多くの国の軍隊において騎獣として扱われている。

 また、角の大きな個体ほど強いとされ、騎士のステータスとして見なされている。



 ・フウライ(風来)

 非常に長く枝分かれしない1本角を頭頂部持つ草食動物。見た目はアンテロープに似ている。

 主に乾燥地帯から草原地帯、樹林帯などに生息している。雌は角が生え変わるものの、雄は一生かけて伸び続ける。

 警戒心が非常に強く、天敵や人間が近づくと猛烈な勢いで逃げるため、狩猟が困難な生物。子どもが居る場合に襲われると、群れ全体で反撃してくる場合もある。

 アンヴよりも高速かつ長距離を走ることが可能であり、騎士の騎獣としては最上級に位置する。ただ、人に慣れにくく、乗りこなすにはかなりの根気が必要。



 ・ボスルス(毛長牛)

 長い毛を持つ牛に似た大型の獣。

 乾燥帯から草原帯にかけて、大きな群れを生して広く分布しており、季節によって移動しながら生活している。

 現代の畜産業や狩猟産業、農業において重要な役割を占める生物であり、家畜としては牛乳の生産、狩猟では毛皮や食肉、骨細工など、様々な用途に用いられている。バックサイドサークルなどの流浪民族では、最も重要な財産とも見なされている。

 また、力に優れることから駄載獣とも呼ばれ、農民がプラウ耕に用いる他、商人、軍隊などは獣車を牽引する獣として飼うことも多い。



 ・ポインティ・エイト(腐肉漁り)

 成人の腰丈程の体高を持つ、ザトウムシに似た大型の節足動物。乾燥地帯に大きな群れで生息し、一定範囲を徘徊しながら食料を探す。

 基本的な食性は腐肉食であり、あらゆる生物の死体を捕食して生活する。しかし、死体だけでは大型の体を維持できないことが多く、生物を襲って殺し捕食することも多い。

 攻撃の際には鋭い脚による刺突を行う。その威力は人体を軽く貫通する程。金属製の板金鎧ならば防ぐことも可能だが、鎧の隙間を狙う知能も備えているため確実ではない。

 また、甲殻が非常に硬く、斬撃は通らない場合が多い。一方、打撃には弱く棍棒やハンマーなどの攻撃が有効。最大の弱点は毒であり、弱い燻煙毒を浴びただけで、細い足がバラバラにとれて絶命するため、大量発生時の駆除や乾燥帯を移動する際のお守りとして使われる。



 ・ブラッド・バイト(大顎獣)

 硬い表皮と大きな口を持つ、カバに似た大型肉食獣。

 原産はレッサー・グラデーションゾーンであり、基本的には単体から数匹で水辺に生息している。ただ、フラットアンドアーチに進出した個体群はこの限りでなく、環境に適合して大きな群れを形成している。

 主に魚や甲殻類などの水中生物を捕食して生活しているが、陸上に生物を発見した場合も積極的に捕食する。

 非常に縄張り意識が強く獰猛で、他の生物は勿論、同じ集団に属さない個体であれば共食いも行う。

 大顎の威力は驚異的であり、鋼の板金鎧程度ならアルミホイルのように噛み潰すことが可能。また、表皮は斬撃も打撃も通さず、クロスボウすら跳ね返す。特に頭部は非常に頑丈であり、作中では玉匣から放たれた車載機関銃の射撃さえ防いでみせた。

 弱点は口腔内であり、特に高温には極端に弱い。そのため、狩猟や駆除の際には囮を用い、攻撃のために開いた口の中に火矢を撃ち込むのが一般的。ただ、口を開いている時間は短いため、狩猟の成功率は非常に低く、猟師が返り討ちに遭う確率の方が圧倒的に高い。

 しかし、その皮革は斬撃刺突双方に耐える強靭さを持ちながら柔軟であるため、単体でも高級な防具となる他、貴族の用いる鎧の裏当てなどにも使われるなど、非常に価値が高い。そのため、一攫千金を求めて挑みかかる猟師は後を絶たない。



 ・ムールゥ(毛糸獣)

 脚以外の全身を白い毛に覆われる草食獣。立方体の体から、爪楊枝のような脚が生える変わった生き物。頭はなく、体に直接目口鼻がついている。

 草原帯や高原帯に生息し、集団で体を寄せ合い固まって生活する。

 非常に温厚かつ臆病な生き物であり、逃走以外の自衛手段を持たない完全な被捕食者。

 年中毛が伸び続けることから、立方体の身体全体は短期間で覆い尽くされ、何らかの手段で毛を落とさない限り視界すら奪われてしまう。そのため、集団で体を寄せ合って生活するのは、外敵から身を守ること以上に、群れの移動に置いていかれないためだとされている。

 上記の特徴から、毛織物の生産に用いられる重要な家畜であり、草原帯では飼育が盛ん。野生個体の中に飼育個体を一旦合流させた後、放牧地へ飼育個体を誘導することで野生個体を誘引することが可能。数も比較的増えやすいことから、最大の産地であるユライア王国領内では食肉加工も行われる。

 なお、毛刈りを行った直後は視界が開けることからやや活動的になるため、放牧地などで立方体が活発に動き回る異様な光景が見られる。



 ・ヘルフ(兜狼)

 狼に似た肉食獣。頭部に兜のような硬い甲殻を持つことが特徴。

 乾燥帯から湿地帯に至るまで、各地に生息する一般的な捕食者であり、生育環境によって体格や見た目が大きく異なる。大型の個体の中には、成人が騎乗できるほどに成長するものも見られる。

 少数の群れで行動し、様々な生物を捕食する。狩りは追い込み式に行い、群れのリーダーに当たる最も大型の個体が、疲労した獲物にトドメを刺す。強力な個体は単体で行動する場合もある。

 人間も捕食対象であり、夜間の街道などで襲われることも多い。一方、子どもを拾って育てれば使役することも可能であり、肉食獣からの襲撃に警戒が必要な農村や牧場、流浪民族などでは、非常に大切に扱われる。また、キメラリア・カラ・ウルヴルとは意思の疎通が可能であるとされ、ウルヴルをリーダーとして群れを形成することもある。



 ・バイピラー(双頭大芋虫)

 森林地帯や草原帯、湿地帯に生息する大型の昆虫。寸胴な体を持ち、全長は1mに達する。

 見た目は巨大化した芋虫そのものだが、両端部に頭を持つ特殊な体構造をしている。食性は雑食であり、基本的に植物を好むものの、人間程度の大きさの生物までなら捕食することがある。

 見た目に反して動きはそれなりに素早く食欲も旺盛で、畑などに群れを生して突如出没し、作物を食い荒らす被害が後を絶たない。特にユライア王国のアチカ周辺では、定期的に駆除を行う必要があるほど生息数が多いとされる。

 食料に恵まれて一定まで生育すると、樹木に登って繭を作る。この繭を経て蛾に似た産卵形態に変態すると、自己防衛のために周囲へ神経毒のある鱗粉を撒き散らす。繭及び産卵形態での寿命は非常に短く、繭を形成してから数日で産卵までを終え絶命する。

 上述の理由から、繭の採取はかなりの危険が伴うが、繭から採れる糸が現代ではシルクとされており、高級繊維の1つとして高値で取引される。そのため、冒険者などが採取を試み、神経毒を浴びて死亡する自体が相次いでいる。



 ・ロガージョ(迷宮建築士)

 蟻に似た巨大な昆虫。

 あらゆる環境に適合して生息するが、乾燥地帯にもっとも数が多い。食性は基本的に菌類食であり、乾燥地帯では特殊な岩に、草原や森林などでは丸太に胞子を植え付け、茸や苔などを栽培して食料とする。

 地面を掘り進んで巨大な巣を作り出すが、何らかの理由で引っ越す場合が多いことから、ダンジョンメーカーと呼ばれることも多い。空き家となった巣穴には、別の生物が住み着いたり、新たな鉱脈が発見されたり、時としては地盤を弛めて地形を変えることすらある。

 上述の理由から、商人や国家からは鉱脈を見つける可能性として面白がられる一方、鉱山やトンネル等においては、巣穴と繋がってしまう事故が度々起きているため、労働者や駆除を担う軍隊、コレクタ等からは厄介者として扱われている。

 一般的な蟻と同様、クイーンを中心とした真性社会を形成する。クイーンは2m近い体躯であり、分厚い甲殻と強靭な生命力を持つ他、溶解性と可燃性を持つギ酸を噴射することも可能。基本的には産卵とワーカーやアーミーへの指揮を行い、専用の部屋から動くことは稀だが、巣が危機的な状況に陥ると自ら侵入者の排除を行う。

 ワーカーは全長60cm程の黒い個体であり、巣の中で最も数が多く、食料の確保や卵の世話、巣の拡張など様々な作業を行う。

 アーミーは全長40cm程とワーカーよりやや小型で、色が赤っぽいことを特徴とする。巣を防衛する役割を担っており、普段は巣穴の拡張の補助と、ワーカーの護衛を担当している。

 なお、雄は生まれてまもなくクイーンに捕食されて体内器官となるため、巣の中で見かけることは極めて稀。

 巣の外では主にワーカー以外を見かけることは珍しく、ワーカーは人間に対してほとんど興味を示さない。攻撃された場合も、ワーカーは逃げに徹するので襲われることは無いが、襲撃された地点は巣の中で共有されて、アーミーが護衛につくようになる。アーミーはワーカーに近付く存在に対し、顎を鳴らして警告を発し、なお接近した場合は攻撃して排除しようとする。

 また、巣穴の中に侵入した相手に対しては、ワーカーもアーミーも攻撃を行って排除を試みる他、人種には知覚できない臭いを発して仲間を呼び寄せる。更に、この臭いはワーカーやアーミーが殺される度に強くなり、一定を超えるとクイーン自らが排除に乗り出してくる。なお、クイーンが死亡すると統率が失われ、ワーカーと アーミーは外へ脱出するものの、間もなく他の生き物に捕食されるか餓死してしまうため、群れが存続することは無い。



 ・マイリッチ(水走鳥)

 ダチョウに似た大型の走鳥類。

 湿地帯や多雨地帯に生息しており、軟弱な地面や浅い水場を移動するため、水鳥に近い水かき状の足を持つ。食性は雑食で、水草や魚を捕食する。

 野生種は群れを生して水場近くで生活する。基本的に気性が荒く、何者かが群れに近づくとクラッタリングを行って威嚇する。それでも近づいてくる相手には、捕食者であろうと立ち向かい、強烈な蹴りを放って追い払おうとする。

 湿地帯の多いリンデン交易国では軍が騎獣として扱っている他、農民や商人の間でも、獣車を牽引させたり、プラウ耕を行うための獣としてボスルスの代わりに扱われる。ただ、ボスルスに比べて牽引力に劣るため、多くの場合は多頭引きを行わなければならない。

 基本的な役割は牽引であるものの、副産物として卵の一部を食料に、羽や骨は工芸品や矢羽根として利用される。



 ・チコハグ(抱卵鳥)

 鮮やかな羽根を持つ鳥。見た目はウズラに似ており、ニワトリ程度の大きさを持つ。

 食性は雑食であり、植物の果実や種子、新芽、小型昆虫などを捕食する。砂漠地帯や乾燥帯、草原に至るまで広い地域に、群れを為して生息する。野生生息数は多いものの基本的には被捕食者であり、野生個体は警戒心が強い。地域の温度によって、羽の色や羽毛の厚さが大きく異なることで知られる。

 人間社会においては、卵や食肉の生産を目的として、各地で飼育される。また、矢羽根の獲得を目的に軍隊や猟師が飼っていることも多い。

 卵の生産は安定的であり、飼育していない庶民でも手に入れることは可能。ただ、高級品である菓子類への需要が大きいため、値段は安くなくちょっとした贅沢という扱いが多い。

 


 ・ホウヅク(伝書梟)

 フクロウにそっくりの外見を持つ小型の猛禽。頭頂部がソフトモヒカンのようになっているのが特徴。

 各地で見られる肉食の渡り鳥で、1度決めた番と一生連れ添い、番を遠く離しても合流する習性を持つ。背中に番羽という特殊な羽があり、そこから発される何かを察知して合流しているとされ、番羽を抜いて別の場所に持っていくと、そちらへ向かって飛ぶ。

 この習性を利用して、伝令や書簡の高速郵便に用いられる。夜目も効くため夜間も移動を続け、素早く相手に文書を届けることが可能。ただ、体が小さいため運べる手紙はメモ程度である他、酸性雨に弱く、打たれると死んでしまう。また、情報の獲得を目的に矢を射掛けられ、落とされることもある。

 上述の理由から需要は常に高く、野生個体を狙う猟師は多いが、擬態が巧妙である上に骨格が脆く生け捕りが難しいことから、それだけで財をなせる者は極めて稀。



 ・ニーヴヘコ(腐毒蜥蜴)

 極彩色を持つ大型の爬虫類。外見はヤモリに似ている。

 食性は雑食で様々な物を口にするが、最も一般的な食糧は発光する菌類である。そのため、生息域は同種の菌類が存在する湿地帯に限られる。夜行性であり基本的に単独行動で生活を行う。これは餌の発光を発見しやすいことが影響していると考えられる。

 体に神経毒発生器官を備えており、体表の発光部から噴霧することが可能。これは外敵から身を守る目的で用いられる他、求愛行動の中でも噴き出す様子が見られる。人種が誤って吸引すると数秒で痺れて動けなくなり、長時間曝露されると痙攣や呼吸困難を引き起こして死に至る。

 上述の効果から器官から抽出した神経毒をそのまま暗殺用として用いたり、コゾと混ぜて乾燥させた粉末を香として焚くことで、ポインティ・エイトの駆除に使用される。また、効果を薄くした香は人体を痺れさせるだけで致命傷にならないことと、薬草を入れたマスクで完全に防ぐことが可能であることから、奴隷狩りにも使われることがある。ただ、生息範囲が限定的で絶対数が少ない上、狩猟時のリスクが高いこともあって毒腺は貴重かつ高価であり、簡単に手に入る代物ではない。

 


 ・レ・ノック(渡凧)

 エイに似た小型の飛行生物。

 季節によって地域を渡る移動性を持ち、カサドール帝国には乾季の終盤に飛来するとされる。食性は未解明で、群れを成すこと以外は生活環にも謎が多い。

 群れの中に警戒役が居り、危険を察すると群れ全体が素早く空中へ退避する特徴を持つ。探知方法が不明であるため狩猟も容易ではない。ただ、カサドール帝国領では翼に当たる部分の肉が珍味とされており、高価で取引されることから、飛来時期になると猟に出る者も多い。

 


 ・ストン・ブレーカ(岩砕蟹)

 シオマネキに似た甲殻類。

 鉄蟹の語源となった生物であり、乾燥地域の岩場に生息する。杭のようになっている右腕が大きく発達しており、これで岩を粉砕し、破片を小さな左腕のハサミで拾って食べる。岩そのものを食べているのか、内部に居る生物を捕食しているのかは不明。

 大きいものは1m近くにまでなるが、基本的にはその半分ほどの個体が多い。硬い甲殻を持つことから捕食対象になることは稀だが、フラットアンドアーチに生息して水中生活を行う亜種は、ブラッド・バイトにとって中心的な捕食対象となっている模様。

 身も味噌も噛み切れない程硬く、煮ても焼いても食べるのが難しいことから、基本的に食料とはみなされない。また、甲殻も加工が難しいことから、狩猟の対象とはみなされておらず人間との関りは薄い。



 ・ポミプース(樹木兎)

 兎に似た巨大な哺乳類。

 体長は小型の個体でも1m以上あり、大型の個体だと3m以上に成長する。特にグランと呼ばれる長寿固体は、地形と一体化して丘のように見えるなどかなりの巨大さを誇る。

 背中から2本の樹木を生やしているのが外見的特徴であり、本来毛皮であろう部分はほとんどの場合深い苔に覆われる。主な生息域は乾燥地帯で、食性は不明。稀に茸を捕食している姿が目撃されることもあるが、それだけで巨体を維持しているとは考えづらく、背中から生える樹木が栄養源となっている可能性が高い。背負う樹木は個体ごとに異なっており、果樹や低木を背負う場合もある。この条件はグランも同じだが、生えている木は種類に関わらずかなり巨大化することが知られている。なお、その理由についてはわかっていない。

 基本的にはポミプースの森と呼ばれる大きな群れを形成して生活する。とはいえ、普段はほとんど動くことがなく、足を体の下に敷いてジッとしていることが多い。ただ、日当たりを求めて移動することが稀にある他、群れの中心であるグランが何らかの理由で移動を始めると、全個体が同時に動き始めるため、森の大移動と呼ばれる現象が発生する。

 ポミプースの森はレンド地域以西において重要な木材資源となっており、同地域では木こりが群れの管理と木材の切り出しを行う伝統が存在する。木こり以外がポミプースの森に入ることは固く禁じられおり、これは稀に起こる個体の移動によって目印が失われ、森から出られなくなってしまう可能性が高いことと、誤って背中から生える2本の樹木両方を切ってしまうと、ポミプースが衰弱死してしまうことが理由と考えられる。

 ハーコート集落群にはこの木こりを生業とする部族が存在しており、グランとの意思疎通を行って群れを移動させることが可能で、過去には戦争の最終手段として用いられたこともあった。



 ・キャリコ(背負獣)

 猫に似た中型の哺乳類。

 砂漠地帯に生息する肉食獣であり、前足を器用に使って獲物を背負い、巣穴に運び込んでから捕食するという特徴を持つ。食料としているのは主に小型の獣や昆虫類で、人間を襲うことはなく距離を取ろうとする。

 背負って物を運ぶ姿が似ていることから、荷運びに従事する者や奴隷をキャリコと呼ぶ場合がある。



 ・粉虫

 非常に微細な虫と思われる存在。

 人間の目では基本的に確認できない、キメラリアには知覚することが可能。夜間に飛んでいることが多いと言われているが、昼間にはキメラリアでも知覚できなくなっている可能性が高い。

 現代においては益も害もない存在だが、粉虫が多く飛ぶ日はよくないことが起こる、と言われることもある。また、神代の機器類に対しては有害で異常をきたす場合があり、特にレーダーや通信系等にはチャフと同様の働きしている可能性が高い。



 ・赤魚

 ベル地中海に生息する魚。全体が赤いためそう呼ばれるが、単一の種類であるかどうかは不明。

 港町では安価な食材の1つであり、ポロムルでは香草焼きが有名。




【変異生物】


 ・ミクスチャ

 エーテル汚染によってキメラリア、あるいは動植物が変異して発生する存在。

 様々な動植物を混合したような異形でありながら、生命活動に必要な器官などは備わっていない場合が多いなど、一般的な生物とは明らかに異なる存在。肉体が大きく損傷すると活動を停止し死亡することは同じ。ほとんどの場合、非常に強固な外皮と神代の兵器を破壊できる程の身体能力を誇る。

 全てのミクスチャが、人種を含めたあらゆる生命体を襲撃し捕食する特徴を持つ。これは捕食した対象をエーテルに分解することでエネルギーとして吸収しており、生命活動の維持と肉体の肥大化に利用するためである。ただ、ミクスチャが自然発生する際に空間エーテル濃度が不十分である場合は、多くの場合空間中のエーテルを獲得する能力を持たず、生命活動の維持を捕食に依存するため、肥大化することはほぼ不可能である。同時に捕食対象をエーテル分解する能力も低いため、エーテル汚染耐性が高い現代人間やキメラリア、デミなどは捕食しない。文明崩壊後はエーテルを使用する技術が失われたことで、空間エーテル濃度が安定化しており、現代で自然発生するミクスチャの全てがこれに該当する。一方、エクシアン試薬と大量の安定化エーテルによって生まれたクロウドン災禍のアンノウンや、神代において発生した個体は空間中よりエーテルを吸収する能力を持つため、捕食によって得られたエーテルによって肥大化することが可能。

 現代においては一種の激甚災害であり、発生時には国家存亡の危機と言っても過言ではなく、持てる全ての戦力をぶつけて対応する事になる。鋼や真銀の武器では全く歯が立たないことから、熱した油や火矢を使って消耗を狙ったり、罠に誘引して岩や丸太を落下させて傷を与えたり、濁流によって押し流したりと、大掛かりな作戦が実施されるが、それでも、撃破できる可能性は低い。最も効果的な方法はテイムドメイルを使用することだが、結果的にテイムドメイルも損傷、または撃破されてしまうことも少なくない。


 【人為的なミクスチャの発生について】

 元々はコルニッシュ・ボイントンが神代に行っていた、エーテル耐性を人類に獲得させることを目的とした実験において、キメラリアから事故的に発生した存在。投与されたエーテル試薬の量を増やしたことが原因とされており、安全装置としてイーサ管が開発されるきっかけとなった。

 ルイス・ウィドマーク・ロヒャーはこの実験結果を元に、エーテルから生成したエクシアン試薬の開発を行い、その研究中に多くのキメラリアが試薬の過剰投与によってミクスチャやイソ・マンへと変貌している。


 【個々のミクスチャについては、ミクスチャの種類を参照】



 ・イソ・マン

 ルイス・ウィドマーク・ロヒャーの実験によって生み出された、ミクスチャの成り損ない。失敗作とも呼ばれる。見た目は異様に身体が膨れ上がって大型化したり、腕部が太い触手のようになったりするものの、ギリギリ人型を維持していることが多い。

 人種のエーテル耐性には、種族による違いだけでなく個人差が存在することを、ルイスは長く解明することができず、エーテル試薬を定量投与したことで多数のキメラリアが変異している。ただ、結果的に変異を一時的に抑える薬品の開発にも繋がっており、前哨基地の戦いにおいては変異前のキメラリアを捕虜として送り込むという方法で奇襲に用いられた。

 身体能力全般はミクスチャに及ばないものの、重装兵複数人を纏めて吹き飛ばすような筋力を持つ上、多少の傷ではビクともしない強靭な生命力を誇る。そのため、一般的な人間程度の筋力で剣や槍を振るっても、なかなか致命傷とはなり得ない。一方、巨大な武器を振るうことができるキメラリア・ケットやシシ、キムン等の攻撃には耐えられない他、熱にも弱く、火矢の集中射撃やアクア・アーデンを用いた攻撃で撃破されている。



 ・エクシアン

 ルイス・ウィドマーク・ロヒャーの実験によって生み出された完成存在の1つ。実験によってモデル1とモデル2に分けられる。

 元となったキメラリアと見かけ上の変化はほとんどないが、身体能力がミクスチャ並みに強化されており、その戦闘能力は有人機のマキナと渡り合えるほど圧倒的。また、空気中からエーテルを吸収することが可能であり、それを生命活動の維持に用いている他、余剰を放出することでプラズマトーチのような一時的にエネルギーを放出するマキナ用兵器の運用が可能だった。また、モデル2は驚異的な自己再生能力を持っており、頭部を含めた身体の8割を消し飛ばされても数秒で修復する程。

 実態は、モデル1は試薬に混合した薬剤の投与により、モデル2は空間エーテル濃度の均一化によって、ミクスチャへの変異を停滞させているだけの存在であり、既にキメラリアだった頃の意識や感覚は失われている。一方、ミクスチャと異なり自ら敵味方を判断する理性は存在しており、イーサ管による制御が無くともルイスを指揮官と認識し、命令に従っていた。

 しかし、モデル1は時間経過によって薬剤の効果が切れ、モデル2は空間エーテル濃度の均一化が失われたことでミクスチャへ変異してしまい、結果としてエクシアンという存在の維持が不可能であることが証明されている。

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