崩壊世界の絶対的な攻略法、俺だけが知っている

ハーーナ殿下@コミカライズ連載中

プロローグ

 地方都市の中心街にある、ごく普通の商業ビルの1階。


 だが今、1階ホールは異様な場と化していた。


「……ん? ここはどこだ?」

「……さっきまで部屋にいたのに、俺は……?」

「……おい、誰かのイタズラなのか⁉」


 彼らは互いに知らぬ男女の集団だった。

 だが気がつくと見知らぬビルの1階で、目を覚ましていたのだ。


 そんな混乱に更なる追撃がある。


『『『グラララ……』』』


「……ん? なんだ、アレは?」

「……えっ……人じゃない……?」

「お、おい、見ろ! アイツら“人”を食ってやがるぞ⁉」


 突如、ビルの外に集まってきた異形。

 ゾンビのようなクリーチャー集団が出現したのだ。


「――――っ⁉ ひっ⁉ なに、あの化け物は⁉」

「おい、こっちもいるぞ⁉」


『『『グラララ……』』』


「お、おい! とりあえず入り口を塞げ!」

「ひっ……悪夢なら覚めてください……神様……」


 まるでゾンビパニック映画のような世界に、十数人の男女は真っ青になる。


 何が起きているのか?

 これは現実なのか?

 誰もが理解できず、必死でバリケードを築いていた。


 だが抵抗は虚しく、老嬢は長続きしない。


『『『グラララ!』』』


「――――っ⁉ お、おい、こっちの窓ガラスが破られたぞ⁉」

「こ、こっちもだ⁉」


 クリーチャーの知恵は低いが、無知ではない。

 バリケードを迂回して他のルートから侵入してきてきたのだ。


『『『グラララ!』』』


「――――うっぎゃ――――⁉」

「ひっ――――⁉ も、もう、お終いだ……」


 次々と惨殺されていく避難民。

 生き残った者たちも絶望感に押し潰されていた。


 生きたままクリーチャーに惨殺されていくと、誰もが諦めかけてきた。


 ――――だが、そんな時だった。




 ――――ズッ、バーン!


 ホール入り口付近に、何かの爆発音が響きわたる。


 ……モワ……モワ……モワ……


 直後、灰色の煙が広がっていく。


『『『グルルル?』』』


 その煙を受けてクリーチャーの動きが止まる。

 何かが起きようとしているのだ。


「え……なに?」

「これは……?」


 立て篭もっていた集団も、何が起きたか理解できずにいた。


 ――――直後、更なる衝撃が走る。


 ――――ズッ、バァ――――ン!


 耳を討つ爆音が。

 火薬が弾ける衝撃音が、ホール内に連続で響き渡る。


『グルァ⁉』

『グァ⁉』


 爆発音が鳴り響く度に、クリーチャーが倒れていく。


 何者かが強力な銃の攻撃で、クリーチャーを倒しているのだ。


「おい、お前ら。身を引くくしていろ!」


 叫びながら巨漢の男がホールに突入してくる。


 ――――バッキーン!


 巨大な斧でクリーチャーの頭を、次々と吹き飛ばしていく。


 ――――シュッ! バッキーン!


「ちょっと、二人とも。気をつけてくださいよ!」


 更を構えた少女も参戦。


 ――――シュッ! バッキーン!


 強力な弓矢で、次々とクリーチャーを射殺していく。


 ――――ズッ、バァ――――ン!


 三人の男女は慣れた手つきで、次々とクリーチャーを駆逐していく。


 ――――バッキーン!


 ――――シュッ! バッキーン!


 その動きは歴戦の戦士のようであり、熟練の狩人のような鋭さがあった。


 ◇


 気がつくと動いているクリーチャーはいなくなる。


「ふう……これで終わりか」


 散弾銃を構えた青年が小さくつぶやく。

 商業ビルにいた全てのクリーチャーを、彼ら3人だけで完全に駆除してしまったのだ。


「おい、動けるか、お前たち?」


 銃を肩にかけ青年が、避難民に歩み寄ってくる。

 ごく一般的な顔立ちだが、その顔は精悍で歴戦の戦士のようなオーラを発している。


「あ、ありがとうございます……」

「この化け物は何だんですか⁉」

「ここはどこなんですか⁉」

「貴方たちは一体何者なんですか⁉」


 命の危機を脱した避難民は、次々と質問をしていく。誰もが状況を知りたがっているのだ。


「落ち着けお前ら。俺の名前はリュウジ。ここはゲームや映画のような世界だが、現実の世界だ」


 散弾銃使いの青年リュウジは説明しながら、自分が最初にここに来た日のことを思い出すのであった。

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