第12話:帝都へ

 10歳になって数ヶ月。

 今まで侯爵家の領地にいた僕は、ついに帝都へ向かう、というか引っ越すことになった。

 学生になるまで帝都でいろいろな事を、主に社会を学ぶという名目で、普通に貴族のしきたりらしい、

 と、いっても帝国以外の――皇国の――学校へ行くのだから半年くらいしかないんだけどね。


 そんな日の朝。

 僕は家の前で家族に見送られていた。


「いってらっしゃい、ソラ。帝都を楽しんできてくださいね」

「はい。お母様。いってきます」

「ソラおにいちゃん! 頑張ってね!」

「うん。頑張るよ、シャーロット」

「しばらくの別れだね~」

「そうですね、カダム兄さん。そのしばらくのあとに、また」

「ソラ、行くぞ」

「帝都はいいところだ。楽しみにしとけよ?」

「はい!」

 家族に見送られ、お父様とソリュース兄さんと共に出発し、

 馬車が動き出す。




 ◇




 整備された道のおかげか、それとも馬車のおかげか、

 或いはその両方か。

 僕は快適な馬車旅を送っていた。

 柔らかいソファのような座席、さすがは侯爵家の馬車だと感心する。

 流れゆく景色、微かな振動、ゆったりと流れる時間と静かな空間。

 ――――それら全てが僕に安らぎを与えてくれた。 

 前世でもここまでゆったりとした時間を過ごした事があっただろうか。

 それほどだった。

 そのゆったりさが睡魔を誘ったのだろう。

 僕はいつの間にか意識を失っていた。

 そして目を覚ますと、帝都が見える場所まで来ており、

 すぐに帝都の外壁に到着した。

 貴族用の門から入り、ついに屋敷が見えてきた。




 ◇




「おぉ……!」

 展望台、というよりは監視塔のような場所――それが屋敷にある――へわざわざ来た僕は、そこからの景色に思わず感嘆の息をこぼした。

帝都は広い。その広い都を高くから見下ろしたとき、どんな景色が広がっているかくらいは予想がつくだろう。

しかし想像と現実は違う。

所狭しと並ぶ家々。しかし考えられて作られているのがわかる。

等間隔でありかつ綺麗だ。

三重の城壁の黒、それに囲まれた家の白。

それが見事に組み合わさっている。


(僕はこれから、そんな都で暮らしていくのか)

――――そう考えると、思わず胸が高鳴る。

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