終わりと始まり

Α:エピローグ、或いは前日譚。

「悪いお知らせ。それはね、使。この世界にんだ。僕の想定するよりずっと早く。僕の対策を打ち破ってその結果君はこの世界、次元に囚われた。この世界から抜け出せなくなったわけだ。まぁ、簡単に言えば”元の世界に帰れなくなった”ってことさ」

 「えっ…………ちょ、ちょっと話がよくわからないんですが……それに関してはもう、あの隕石で死んでるはずですし……未練はまぁないですかね……」

 いまでも思い出せる。

 あの10年前、この世界に転生する前の、最後の記憶を。

 あの隕石の最後の煌めきは本当に美しかった。

 それに衝突までの時間と大きさから推測して、あれがぶつかった時点で人類の生存は絶望的だろう。

 滅んだ世界に戻っても、戻れても正直意味がない。

 だからこれでいいのだ。


「そうかい? それなら良かった。次に良いお知らせだ。

 ソラくん、いや、”時田 空”くん。

 この世界の全てを無窮自在むぐうじざいに操る絶対支配者であり、世界の管理者であるになるつもりはないかい? ……まぁ、強制的になってもらうんだけどね」

「はぁ……!? 何が何だかよくわからないんですが!?」

「分かんないのは俺もだっての! お願いだから説明をくれ!」

「う~ん……しょうがないなぁ。それじゃあ僕から説明しようかな。

 とっても簡単に説明すると、『異世界から転生したソラくんは未知の敵と戦ったせいで前世の世界に帰れなくなっちゃった!』って感じだね。これ以上は、言えない、というか世界管理上の機密事項に抵触する。申し訳ないね。あ、僕がここに来た理由は普通にソラくんにお知らせしに来ただけさ。空間のあれは証拠隠滅。これでいい?」

「よ、よくわかりませんがそれで構いません……。情報量が多すぎて……1回整理させてください……」

「あっ……うん……どうぞ……」

 頭を抱えながら、オリジックさんが近くの木へおぼつかない足取りで向かい腰掛ける。

 それを見送った? 《多元存在アカシックレコード》も少し困惑した表情をしている。


「……えーっと、なんかややこしくなったけど、つまりは僕に世界を管理する神になれ、ってことでいいんだね?」

「あぁうん。とりあえずこの世界のの修正からだね――っとその前に。君の力はこの世界に存在するだけで危険なほどになってしまったんだよ。だから僕としては今すぐにでも神の世界に来てほしいものなんだけどね。ほら、その証拠に。ソラくん。を見てごらん?」

「自分の……影? ……って……なんか……薄い……?」

「た、たしかに何故か影が薄いのじゃ……」

「そうだな……ぶっちゃけ影と呼べるかどうかってとこだなこれ……薄すぎるぞ……」

「ね? もうソラくんはやばい状況さ。生死の狭間ってこと。あとで神託を下して君の……は伝えておくよ。それにやり残したことも、後々どうにかする。だから来てもらうのさ。《天よ、目覚めよ》」

 そう聞こえた瞬間、僕の視界はまたしても白く染まった。




 ◇




「ふぅ……。おはよう、アカ」

「あぁ、おはよう。アード。今日もいい一日だね」

「そうだな……」

「どうした? 哀愁漂う雰囲気になってるけれど」

「いや、昔のことを思い出してね……。僕が神になった日からの思い出を」

「なるほど。それじゃ、それを聞かせてよ。たまには過去を振り返るのもいいと思わない?」

「……それをアカシックレコード世界記憶である君が言うかね……まぁいいでしょう。先にタイトルから言おうかな」

「ほぉ? 型から入るタイプかい?」

「別にどっちでもいいだろ……」

「はいはいそうだね」

「適当にあしらわないでくれ……さてと。そうだな……名前を、

 タイトルをつけるならば――――

『異世界転生したら神以上になってしまったんだが?』だ」




《 完 》

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