役に立たない無能は必要ないとSランクパーティを追放された最弱ジョブの【アイテム師】~しかし奴らは俺が【複製】【融合】【付与】などのチートスキル持ちの最強だとはまだ知らない~

大田 明

第1話 フェイト・レイフォース

「なあフェイト。もしパーティーに役立たずがいたとしたら……お前はどうしたらいいと思う?」


「もちろん、役に立つまで面倒を見る!」


「優しいな! お前が仲間で良かったよ!」


 俺、フェイト・レイフォースは、現在Sランクパーティである輝く風シャイニングウィンドと共に、とあるダンジョンにやって来ていた。


 ダンジョンとは、突如として世界に現れた正体不明の迷宮。

 その最奥では、この世の常識を超越した力を持つ【神器】が眠っていると言われている。


 この世界には冒険者と呼ばれる者たちがいて、俺もその冒険者の中の一人だ。

 冒険者の中には【神器】を探して、ダンジョンを攻略する者がいる。

 俺たちのパーティは、これまでそんなことをしてこなかったのだけれど……今回初めて、ダンジョンに挑戦をしているというわけだ。

 でもいきなり何故こんなことに挑戦を始めたのかは聞かされていない。

 なんで?


 俺のパーティのメンバーは、俺を除いて5人。

 一人目はリーダーのゲイツ。

 金髪で爽やかな良い奴だ。

 彼の【ジョブ】は剣を扱う【ソードナイト】。


 二人目はヒューバロン。

 大柄で髭を生やした男で、【ジョブ】は【パラディン】。

 攻めよりも防御に定評のある奴だ。


 三人目はクィーン。

 仲間の中では一番年下だが、一番偉そうな女。

 【ジョブ】は【ウィザード】。

 魔術を使用し、氷の魔術が特に得意。


 四人目はシャイザー。

 クールな男で、あまり喋っているところを見たことがない。

 【ジョブ】は【アーチャー】で、弓の扱いが得意。


 もう一人は……今回のダンジョン攻略には参加していないので割愛させてもらう。


 俺に質問をしてきたのはゲイツ。

 よく分らない質問をしてきて、仲間たちと苦笑いをしている。


 ダンジョンの中は天井や床から光が生じており、まるで明かりの灯った建物の中にいるようだった。

 迷宮の中なのに不思議な感覚。

 人工としか思えないような造りの道を進みながら、話を続ける。


「でもさ、そんな役立たずがいつまでも役立たずだったとしたら、どうする?」


「その時は辛抱強く面倒を見てやるかな」


「ははは……お前さ、そろそろ気づけよ」


「何だがよ、ヒューバロン?」


 俺の背後からヒューバロンが口を挟む。

 俺とゲイツは振り返り、冷たい目つきのヒューバロンを見る。


「……何が言いたいんだ?」


「何が言いたいって……さっきから自分の話をされているのが分からないの? 本当にバカね、あんた」


「誰がバカだ! バカって言う方がバカなんだぞ!」


「……本当にバカだわ、こいつ」


 人にバカと言っておいて呆れ返るクィーン。

 人をバカ呼ばわりするお前の方がバカなんだからな。


 しかし、自分のことって……どういうことだ?

 俺は怪訝に思い、ゲイツに訊ねてみる。


「俺の話って何? ゲイツは役立たずの話をしてたんだよな?」


「ああ……だから、お前の話だよ、フェイト」


「俺が……役立たず? それ、本気で言ってるのか?」


「本気も本気さ。だってお前は【アイテム師】じゃないか。【アイテム師】って最弱の【ジョブ】で、普通はそこから覚醒するもんだろ?」


「いや、そうだけどさ……」


 【ジョブ】とは、生まれた時に与えられる適正のような物で、これには大きく分けて三種類の職業がある。


 戦闘型の【戦士】。

 魔術型の【魔術師】。

 そして支援型の【アイテム師】だ。


 最初は誰もがこの中の一つを授かり、そして経験と共に成長していく。

 ゲイツとヒューバロンは【戦士】の系統。

 クィーンは【魔術師】の系統で、シャイザーは【アイテム師】の系統である。


 そして俺は初期ジョブである【アイテム師】のままだ。

 これにはがあるのだが……しかし俺は、それなりに役に立っていたと自負をしている。

 なのに役立たずとはどういうことだ?


「あんたは、役立たずの無能でパーティに必要無い男。分かる?」


「クィーンは辛辣だな」


「ゲイツがハッキリ言わないからでしょ。私にばかり嫌な役をさせてさ」


「でもおめえ、愉しそうな顔してるじゃねえか」


「あれ、バレた?」


「…………」


 ゲラゲラと大笑いする三人。

 シャイザーはクスリと笑うだけだが、俺を見下したような目をしている。


 俺をとことんまでバカにしているようだ。

 【ジョブ】が最弱である【アイテム師】だから。

 

 俺は怒りを覚えつつも、冷静に話をしようとした。


「だけど俺は、十分すぎるほどに役に立ってきたはずだ。アイテムは俺がいたから――」


「助かっていたって言いたいんだろ? 確かにアイテムの扱いには長けているようだけど、その点はシャイザーがいれば問題は無い。彼も最初は【アイテム師】だったからな」


「いや、シャイザーじゃ――」


「てめえの言い訳は聞いてねえんだよ! アイテムの扱いなんてシャイザーがいればそれでいい!」


「ただアイテムの扱いがそれなりだってだけで、これまで使ってやっていたことを喜んでほしいものね」


「ちょっと待て……これまでって、どういうことだよ?」


「お前は本当にバカか? 要するにお前は――追放だ!」


「追放……?」

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