自殺が禁制された未来社会で自殺するには――?

「私」は塔を登る。自殺が最大の罪悪となったこの世界では、この塔を登るしかないのだ。
下層から10階へ、土産物売り場では不謹慎なグッズを売るボットがいる。そのボットともに60階へ。まだ先がある。身体の限界を感じながらも、さらなる高層へ。

「私」が何を忌み嫌い、何を思って「自殺塔」と登るのか。
サイボーグと化した人類、皮肉を理解するボット。未来社会のディティールがブラックユーモアをもって語られる様は興味深いとともにシニカルで、現代文明の先を暗示しているようでもある。
自殺という普遍的なテーマを軸に、ディストピア社会の正しさと歪みを正鵠に捉えた未来SFの名品。

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