第8話 言えなかった事


「卒業式には間に合わせる」

「晃、私達絶対に行くからね?」


 親父も母さんも共働きだったが卒業式と入学式には来るようにしていた。


「そう」


 別にどっちでも良かった、本当に。


 中学の卒業式、担任が昼休みの時、担任は男の先生で良くしてくれていた。あぁ思い出した、本当に昼休憩が始まり、友達が感慨深く給食を食べようと準備をしていた時に必死の顔で来た。


「晃、さっき伯父さんから電話があった!」

「伯父さんからってなんかあったんです?」


 両親が事故にあった、らしい。


「先生が車で病院に送るから、急いでっ」


 ■


 結局、俺が着いた時にはもう死んでいた、即死だったようだ。トラックとぶつかって遺体の状態も酷くて、父と母の姿をもう見る事は出来なかった。

「晃......」

 伯父さんは悲しそうにこっちを見ていた。


「......親父、母さん、俺......」


 多分、俺にとっての日常はその日から終わってた。



 ―――

 ――

 ―




「――アキラ」


 ......なんか夢を見てた気がする。


「メイドが起こしても起きないというから、来てみれば......」


 懐かしい気もしたが......


「......アキラ?」

「......へベルナ......もう時間か......」


 どんな夢だったか思い出せないが、あまり良い夢ではなかったのだろうな。



 ■



 座学の間もこのモヤモヤが一向に消えない。


「......」


 朝起きてからずっとだ、こんな状態じゃあ、ダメだと思うのにな......。


「起きてから、そんな調子ですか」

「こんな調子......調子が悪い訳じゃねぇんだが、何かな......」


 へベルナは少し考える素振りを見せて

「......アキラ、今日の予定は変更しましょうか」


 へベルナを本をパタンッと閉じた。


「外に行きましょう!」



 ■



 へベルナに連れられて前にスライムを倒した森に向かう。



「ほら、アキラ、魔力を杖に込めれば――こうっ!」


 へベルナの大きな濃い赤い杖を地面に叩きつけると

 バァンッ!という衝撃破と共に地面に小さなクレーターが出来上がる。


「へベルナは力持ちなんだな......」

「......私の力ではなく......魔力の力です」


 魔力......万物に宿る万能のエネルギーだっけか。


「杖は基本は魔法の補助ですが、最悪の状態では打撃武器として扱う事になりますからね、魔力を纏わせて武器を強化するのも大切な事です」

「魔力なぁ、魔法に必要なのは知ってるが......やっぱ大切なのか?」


 当たり前のように魔力、魔力言うからな......


「......前に説明した気がしますが......まぁいいでしょう、魔力は大切なんてものではなく、魔力が尽きる事は死を意味します」

「え、そこまで?」

「まぁ完全に尽きる事は普通ありません、魔力というのは生涯にわたり生成され続けますし......ただし魔法を使いすぎれば魔力は減ります、一気に減りますと生成が間に合わなくなり、酷い能力低下に襲われてしまい、足手まといになるのです」

「なるほど、魔力は生命力みたいなものか......」

「確かにそう思う方が分かりやすいかもしれませんね......魔導士というのはそんな魔力を専門に操るというそれはそれは名誉ある職業なんです」

「勧誘すか」

「違います......そして、そんな魔力ですが通常の方法では可視することはできません」


 へベルナは地面に杖で何やら描き始める。


「そんな魔力が物質化したものを魔石と呼ぶのです......」


 石のようなものを描くと周りに人のような細長い円を4つ描き始める。


「魔石というのは魔力が圧縮して出来ます、簡単ではありませんが製造は可能なのです」

「でも金と時間がかかるんだろ?」

「はい、4人の魔導士が囲んで同程度に強い魔力を注ぎ続ける......私も実は経験したことあります」

「へベルナは色々経験をしてるんだなぁ」

「ふふっ当然ですかねぇ......魔法が使えなくても、アレが出来るのなら普通に食べていけますよ、それくらい技術が求められます」


 協力が必須な技術職って感じか、想像するだけで大変そう。


「作るのに手間がかかる魔石は採掘した方が手っ取り早く、安く済むのですね」

「なるほどぉ」


 魔石は万能のエネルギーが凝縮した石だから需要がある、というわけだな。


「そして魔石について話したら魔水晶についても話さないといけませんね」


 ん?魔水晶?


 へベルナはクリスタルの絵を地面に描き始める。


「魔水晶は簡単に言えば魔石よりも膨大な魔力が凝縮されている結晶です」

 へぇ、そんなの聞いた事なかった。


「そんなのがあるのか」

「まぁ、魔石は少量とはいえ一般的にも流通していますが魔水晶は基本流通していないので、知らない人もいると思いますよ」


 魔石だけでもすごそうだからなぁ、それより上となると想像できない。


「正直一般人には関係ないですね、基本的に隕石から取れる魔石よりも重要なモノと認識すれば良いかと」

「なるほど」


 魔石とか魔水晶とか色々あるんだなぁ。


「これも説明しておきましょう」


 へベルナはそういうとローブの中から何かを取り出す。

 水色の手の平に乗るくらいの石だ。


「アキラ、みんなには内緒ですよ?」


 へベルナはシッと唇に指を立てるとコッソリと見せてくれた


「これが魔石です、触ってみますか?」

「えっこれが!?」


 へベルナに手渡された魔石をまじまじと見つめてしまう、少し重く暖かい、そして何より綺麗だ、太陽の光が水色と青色を交互に光らせる。これが万能のエネルギーである魔力を凝縮しているのか、こんな綺麗ならエネルギー源としてでなくとも装飾品にも扱える。


「それ一つで1週間くらいは食べていけます」

「......」

「ただ自然物ではないんですよね、それは私が自分で作った魔石、実は魔水晶を目指していたのでそんなに綺麗なんですよ」

「でも、一応は魔石なんだろ?」

「はい、魔石以上魔水晶未満といった所でしょうかね」


 たった1週間、といえば安いと感じるが、違うなこれは普通に売ればそうなるだけだ、これを加工すれば、宝石として扱えば......あぁ理解した、これは売れる。


「魔石は魔力の塊、そして魔力が減ると生物の能力は低下する」

「......?」

「そういった物をですね、持っておくのも冒険者、特に魔導士として活動するのなら必要な知識の一つですよ」

「......!そうか、これを食べれば......」


 魔力を回復できるのか......


「それを砕いた欠片をですがね」


 こんな綺麗な石が......ねぇ


 太陽に照らされる魔石の水色はまるで海だ、本当に綺麗だと思う。


「釘付けですね」

「あぁ納得した、どうして魔石採掘場なんてものがあったのか、シンプルにエネルギーとしての価値だけと思っていたが......」

 これはみんな欲しがるよな、一度見てしまえば釘付けだ。


「これは本来の魔石も持ってくるべきでしたね」

「へベルナの作った石だもんな」

「はい、魔水晶とまではいかずとも、魔石より魔力は込められていますし、他の人の魔石よりも精妙に作れたと自負しています」


 へベルナは少し自慢気にする。


「これは大切な事ですが、魔石の接種はリスキーですから最後の手段ですよ」

「暴発するとか?」

「その魔石をそのまま食べればそうなるかもしれません、欠片だけでも拒絶反応が起きたり、そもそも欠片を食べられる状態ではなく、喉に詰まらせて窒息したり」


 他人の魔力を取るって事だから、危険なのか。


「少し長く話過ぎましたね......帰りましょうか」

「あぁ」


 そういえば、俺は疑問だったと事をへベルナに聞いてみた。


「......え、ルキウスのフルネームを知らなかったのですか?」

「はい......」


 やばいな、へベルナが驚愕している、いや、なんかみんな知っていて当たり前みたいに過ごしてたから、今更聞けないなと思ってたから......


「ルキウス=グラディウスですよ......」


 やれやれと首を振るへベルナ。


「グラディウス家は代々アルカディア帝国で政治的にも軍事的に影響力のある家なんですよ、そんな家系なものでルキウスは苦労していました......アキラもあまり世話になっている訳にはいけませんね」


 へベルナはそう言って話し続ける。


「そうだなぁ、部屋探しとかしないと」

「まぁ、屋敷を出たらお金が必要になります、仕事先も見つけずに部屋を借りるのは、流石に......」

「うっ......」

「その為にも近々ソルテシアに行きますよ、アキラの事を皆に紹介しないと流石に怪しまれますし」

「俺は怪我で治療してた、だっけ」

「えぇ、かつては旧友でコンビ仲、仲間思いなアキラは勝手に行動して、捕まり、逃走、その後に少年を助ける為に戦いを挑み怪我を負った......」


 それで本当に誤魔化せているのか?


「大丈夫です【赤の壁レッドウォール】はともかく他のギルドではある程度は信じては貰いました」

「【赤の壁レッドウォール】ってへベルナのギルドだっけ、迷惑かける......」

「......えぇ、そうですね......」

「......どちらにしても早く犯人を捕まえないとな......」


 仕方ない、あっちからしたら俺は仇敵みたいなものだしな。


「そうですね、私も皆を回復させたいです」


 へベルナは悲しげに歩いている、そうか、へベルナの仲間も被害に遭ってるんだ、

 なんでそんな大事な事失念していたのだろう。


「へベルナ、俺が捕まえるからな!」

「......よろしくお願いしますね」


 そうだ、早く強くならねば......、大体へベルナにカッコ悪い所しか見せられてない。

 それじゃあ、いけない早く強くなろう。




 ◆◇◆◇




 ある日、いつも通りへベルナ講座の準備をしていた時のこと


「アキラ、今日ソルテシアに向かいギルドマスターたちに会ってください」

「へ?」

 へベルナが買ってきたのであろう、服を出してきて

「さぁ、着替えてください!」

 まさに怒涛である。



 ■



「アキラ、もっとシャキッとしてください」

「いっいや、してるって」

 なぜかへベルナは俺の冒険者用の服を着せている。


「あのっへベルナそんなにべたべた触らないでくれるか!?」

「私達の仲でそんなの気にしないでください!」


 別に俺一人で着替える事出来た、ただ第一印象が大切だぁ、とへベルナが言い始めて服を直し始めたのだ。


「いや、流石に恥ずいって」

「何を恥ずかしがるのですか、アキラ、冒険者というのは――」

「今は冒険してない!」


 へベルナは俺の背中を軽くパンパンっと叩く、それだけ仲良くなってきたと思えば嬉しいが......普通に恥ずかしい。


「今からギルドマスターに会いますからね、疑われないように、歴戦の英雄のように――」

「盛りすぎなんだよ!」

「そういう気概を持ってください、という事です」


 しかし、ソルテシア......俺の事を誰も覚えていないと良いが



 ■



 久しぶりのソルテシア、思ったより俺の事を認識されていなくて助かった。

「話すってへベルナの関係についてだよな?」

「そのあたりでしょうね、色々考えておいた方が良いと思います」


 あそこにいた理由は貧困の為として、逃げ出した理由かぁ、変身したからとか言えないし。


「そういえば、作戦に参加していたギルドについてきちんと説明していませんでしたね」


 へベルナは説明してくれた、

黄金の鍵爪ゴールドクロウ】ギルドマスターはバルガ=ブレイザー

 対人戦や魔物の討伐をメインに行うギルドであり、作戦中の主戦力であった。


「バルガさんは話の分かる人ではありますが、今回の事はあなたを疑っていました」


緑の園グリーンガーデン】ギルドマスター ハネリィ=ミリド

 後衛でサポートに徹していた、全員外にいたために被害はなし。


「恐らく今回の人選では一番、あなたへの疑いは浅いです、そもそも戦場と化した現場で逃走するのは可能だったという見解です、バルガさんも一応それには同調していましたね」

 ハネリィ......後衛でサポートしてたのに逃げられるって節穴すぎないか?

 そのおかげバレずに済んだんだけど......


赤の壁レッドウォール】のギルドマスター・アーヴィ=パウン

 へベルナが所属しているギルド、ネイロス=ザッドルアは作戦の責任者であったために解任され新たにアーヴィがギルドマスターに就任した。


「アーヴィについてはそうですね、野心家......といいましょうか......」


 なんだろう、歯切れがわるい、へベルナもそのギルド所属だというし、

 かなり関係が悪いのかも、俺の所為だな。うん。


 へベルナが説明していると大きな木造の建物の前に立っていた。


「ここは【緑の園グリーンガーデン】です、みな集合しているはず」


 規模は大きくなく木々や草花がギルドを包んでいる、自然って感じだ、ギルド事に特色があるらしいから、このギルドは自然を重んじているのだろうか?


「行きますよ」


 俺が失敗したら俺だけじゃなくへベルナもまずい立場になるんだ。



 ■



 ギルド内は緑に統一されていて、ところどころに観賞植物を世話している者もいた、俺たちが入るなり興味津々と言った様子で見てくる。


「――」「――?」


 大体30人くらいだろうか。

 敵意というよりは好奇心的な目を感じる、このギルドは被害はなかったらしいが、俺が怪しいのに変わりないだろうに


 奥に進んでいくと、2人の人間が座っていた。大柄な坊主頭の男と緑髪のポニーテールの女、随分と動きやすそう、というか露出のすろい衣装を着ている。


「へベルナ=マギアフィリア、アキラ=フジワラを連れてまいりました」

「どうも......」


 へベルナは静かに礼をしたのに習って礼をする。


「【緑の園グリーンガーデン】ギルドマスター・ハネリィ=ミリドです、あなたがアキラ=フジワラですね?」


 ハネリィは緑の瞳で俺をじっくりと見てくる。


「へベルナとは古い仲とか」

「そうです......よ?」

「ふふっ」

 怖、なんで笑った

「......バルガ、あなたも自己紹介してくださいな、名前がわからないとアキラも困るでしょう」


 ハネリィは隣に座るバルガを肘でグイグイと押されると、はっとバルガは軽く咳をして

「っと、そうだった【黄金の鍵爪ゴールドクロウ】ギルドマスター・バルガ=ブレイザーだ」

「アキラ=フジワラです」

「アキラ、端的に言えば、俺とハネリィはお前を信じ切れていない」


 言い切った、まぁ言ってくれた方が助かるな、それを晴らすために今も訓練をしているのだし。


「だが、逃げ出したから犯人は早計だと俺は考えた――」

「私が考えました」


 バルガは近くの水を一気に飲み干す。


「帝国も進展がなければお前を捕まえるだろうよ、今はへベルナが見張りを兼任しているから不問にしているようだが、俺の所も仲間も昏睡状態で意識を回復していないし、言いたい事は山ほどある」

「......」

「だが、もっと注意すべきことがある、だろ?ハネリィ」


 バルガはハネリィに目を向ける。


「そうです、あの場にて逃走が確認されたのは、アキラ=フジワラ、へベルナが戦闘したという【暗闇の蛇】の魔導士......そして謎の怪物」


 怪物って、絶対に俺だよな。


「私としても不甲斐ないです、採掘場内部でなければもっと戦えたのですが」

「まぁ、しょうがねぇだろ、へベルナがいなけりゃあ、怪物とか魔導士の存在は把握できなかったんだ」


 口が裂けてもそれも実は俺でしたとは言えない。


「?アキラどうかしたましたか」

「いっいや、なんでも?」

「ふむ、なら良いのですが......」


 どうにか、二人のギルドマスターとはうまく話せたが......


「「......」」

「......遅いですね」


 あとアーヴィが来ない。


「少し空けます」


 ハネリィは席を外して、何処かへ向かう、連絡でもするのだろうか?


「しかし、へベルナの事を思って一人で向かうなんて男気のあるやつだ、今は容疑者だがよ、容疑晴れたら俺んところ来いよ、可愛がってやるぞ」


 バルガは笑顔で俺に向かい話してくる、少し罪悪感あるな......


「しかも、だいぶ前の事とはいえ、へベルナとコンビを組んでた事もあるってことはそれなりに実力もあるんだろ?いいねぇ」

「ははっまぁ......」


 ウソを貫き通すのはきついな......


「そんな事ないですよ、彼の腕、鈍ってましたから今も修行をしてあげてるんです」

「まじか、アキラお前恵まれてるな、へベルナに修行してもらえてるとか」

「はははっ感謝しかないっすよ」


 へベルナは強いからな、実際へベルナのおかげで自分の実力に自信がついてきてる。


「ただ、コンビを組んだことあって、修行もしてもらえて、他の奴らからどんな目で見られるか......」

「えぇ、アキラは信用できる人物として流布できますね」

「いっいやそういう事じゃ――ん、ハネリィが戻ってきたな」


 ハネリィは溜息を交えながら



「へベルナ、【赤の壁レッドウォール】のマスターは今回来るのは難しいとの事です、そして彼のギルドの中で貴方に敵対的な思想を持つ者が把握されているも行っていました」

「......そうか、ネイロスがマスターを変えられる羽目になったのはアキラの所為と考えてんのか」

「組織として脆い状態、統制をとれていないのでしょうね」


 大ごとになってきてるな、これ犯人捕まえるとかそんな余裕あるのか?


「そうですか......」


 へベルナが見るからに落ち込んでいる。


「へベルナ気にすんなって、いいじぇねぇか、元【赤の壁レッドウォール】のへベルナがいるんじゃあ気まずいだろう?」

「あっバカ――」


 それは、どういう......


「――っあ、すまん」

「......いえバルガさん謝らないでください、何れはバレる事でしたので、アキラ、私は既に【赤の壁レッドウォール】の冒険者ではありません」

「......俺の所為か?」

「......」


 そうなのだろう。


「正直今回【赤の壁レッドウォール】が来ることはないと思ってました、あそこは既にギルドとして維持できていませんから、その過激派については警戒しておとしましょう」


 へベルナはこっちを見る。


「遅かれ早かれ瓦解する、その時にアキラに報告しようと考えていました」



「「......」」



 嫌な沈黙が起きる。



「......いや、しかし、あれだな!うん!」

「バルガ、もう少し話を考えてください」



 この後【黄金の鍵爪ゴールドクロウ】【緑の園グリーンガーデン】とで、俺は完全な潔白を証明をすることは出来なかったが、他のギルドにアキラ=フジワラを主犯の一人とは断定できない事、二つのギルドは俺がへベルナと過去にもコンビを組んだ旧友である為に信用している事を再度通達してくれるらしい。



 へベルナが俺に黙っていた事、きっと俺に変な心配をさせまいと思っての事だ。


 バルガとハネリィとの話は終わりソルテシアを俺とへベルナは二人で歩いていた。


「......」


 やばい、気まずい、俺は別に気にしてないのに、というか俺の所為でギルド辞める羽目になったんだろう?だったらへベルナが落ち込む必要ない。


「......」


 それに本当は、こうなることは想像はできた、被害者がいる事件なんだ、俺は犯人かもしれないんだ、そんな奴をへベルナは庇っているんだ、なら、こうなることくらい想像できただろう?


「すみません、こういう情報共有はしっかり行うべきでしたね......」


 あまりに恥ずかしい、散々庇ってもらっている人に謝られた。


「......いや、謝るのは俺のほうだ......」

「......アキラ、ギルド【赤の壁レッドウォール】はいま内部分裂が起きているのは、さっき聞きましたね」

「結構ひどい事になってるのか?」


 ギルドマスターはいるらしいが、代理も立てられない状態なんて相当だろう。


「はい、前マスターのネイロス=ザッドルアが辞めた後に№2のアーヴィ=パウンが新たなギルドマスターに就任しました」


 アーヴィはその際ネイロスを庇った人間を次々と除名していったという。


「どうしてそんな奴がマスターに?」

「【赤の壁レッドウォール】ではギルドマスターは選挙制です、人気だったのでしょうね、私はマスターを決める前に彼の代行権限で除名させられましたが......」


 ギルドマスターを決めるのはギルド事に違うのか。


 すると急に立ち止まり

「......んーっ!」

 へベルナは大きな伸びをして。


「戻りますか、アキラ」

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