第44話<ハッピーの行方>3
理解はしていても他に手がかかりが無いせいか、誰も移動しようとはしない。
そのまま30分が過ぎた頃「クソー!奴達来んな~!」と悔しがる健太の怒声が辺りに響く。
「ここに来るとは限りませんからね‥‥」
ハカセとチビが見渡す視線の先には、年寄りの通行人しか居ない。
「俺は来るまで何日でも待ったるで!」
やる気を示すように健太はガッツポーズを見せつけるが「それでは練習が出来ませんよ」とハカセは現実的な一言で健太を切り捨てる。
「ソレは困るな‥‥」
数分間うなだれ悩んだ後「とりあえず、菓子買って考えるか~!?」と現実逃避をした健太が、諦めて駄菓子屋に入ろうとした時「またコイツ達か~、ウロチョロしやがって」と聞き覚えの有る嫌な声が背後に響く。
「お前達バレてるんやぞ!早くハッピー返せ!」
ためらう事もなく、健太は振り返り様に怒声を返す。
「知らんわ、ハッピーって何やねん!?幸せ分けてほしいんか~」
ブラバン部員二人のバカにした口調と笑い声に、健太の表情は険しく変わっていく。
「ハッピーは僕達が基地で飼っていた鳥の事ですが、何か知りませんかね?」
間に入ったハカセが、冷静に聞き直すが「知らんわ!知ってても教えてやらんけどな~!」と二人は、バカにして相手にしようともしない。
「こんな奴達、放っといて早う行こうぜ」
三人を無視して、自転車を停めた二人が駄菓子屋に入ると「クソー!絶対あいつらや!」と健太は二人の後ろ姿を睨みつけている。
「どうします団長?他の方法を考えますか?」
念のためかハカセが健太に耳打ちすると「イヤ、もう一回隠れて後をつけてみよう!」と健太はあくどい表情でケタケタと笑う。
「でも、お互い自転車ですよ?」
ハカセは不安そうに停めていた自転車を見つめるが「大丈夫!あいつらバカやから気付かんやろ!」と健太は微塵も気にしていない。
「相手が自転車に乗るのは間違い無いので、場所を変えてスタンバイしておきますか」
ハカセの言うとおりに場所を変えた三人が、塀に隠れてブラバン部員を待つ事十分が過ぎると「出て来た~!二人共静かにしろよ」小声にしたつもりでも大きな声の健太が、団長らしく睨みを効かす。
「良っしゃ俺達もついて行くぞ」
身を隠す方法も無いまま三人は尾行を開始するが、気付かれるまで数分と持ちそうにない。
少し走ると案の定「なんか、ついて来てるで~!?」と気付いた部員の一人がバカにして笑い始める。
「お前達ついてくるな!」
部員二人はスピードを上げて引き離そうとするが「そっちこそ、いい加減白状しろ~!」と健太を筆頭に三人の追いかけるスピードもアップしていく。
コントのような追跡劇が数分間続くと「知らんもんは知らん言うてるやろが!」
疲れ果てた部員が本音の怒声を挙げ。
自分達が誤解していたのを察した三人は、その場に立ち止まった。
「ほんまに知らんみたいやな」
「なんだか悪い事してしまいましたね‥‥」
申し訳なさそうにハカセは俯くが「ええやろ!疑われるような事してきたのはあいつらやし!」と健太は少しも気にしていない。
「そんな事よりハッピーどう見つけよう」
「とりあえず基地に戻りますか、もう作戦会議と言うよりは反省会ですけどね‥‥」
目的も定まらないまま基地に向かう三人が対岸の橋を渡ろうとすると「あっ!アレ!アレ~!?」と健太が突然大声を挙げ、対岸の基地を指差す。
「どうしたんですか、そういえばこっちにも誰かの基地が作られていましたね」
自転車に乗ったままハカセとチビが覗き込むと、対岸の基地が建っている段ボールハウスの横にはハッピーを入れたケージが置いてあった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます