第27話<仲間外れ3>

普段からしかめっ面な体育教師の顔が、低い地声で更に威圧感を増している。


「はい、担任の許可は得ていますので‥‥」


気まずそうにハカセが説明をしていると「お~!応援団か青春してて良いやないか!」と体育教師は突如満面の笑顔を見せた。

以外な展開に面食らう表情のハカセだが「そうっすよね~!応援団格好良いしょ!」と健太は素早く同調し始めている。


「で?何を応援してるんや?」


笑顔だが尋問的な体育教師の問いにハカセが答えきれずにいると「今は野球部とかの試合にゲリラ応援なんす!」と物怖じする事無く答える健太。


「そうか頑張っとるんやな、だが休み時間に太鼓はあかんぞ!」


釘を刺すように体育教師が二人をひと睨みすると「はい、頑張ります!」と思わず立ち上がる健太に合わせて、ハカセも慌てて立ち上がり二人は一礼する。


「それでは失礼します」


ハカセの一言で二人が立ち去ろうとしたその時「応援と言えば、今度ブラスバンド部が始まるんじゃなかったか?」と思い出したように、二人を引き止める体育教師。


「え‥‥」


予想外な存在のライバル部登場に、顔を見合わせ立ち止まる二人。


「確か掲示板に張り出してたぞ」


笑顔で教えてくれた体育教師に、二人の返す笑顔は引き攣っている。

再び一礼した後、駆け足で掲示板を確認しに行った二人は「マジで‥‥」と掲示板を見上げたまま立ち尽くしていた。


掲示板にはブラスバンド部員募集を大々的に描いた張り紙が、張り出されていた。

次の日チビは学校に来ていたが、あえて二人は呼びに行かず基地で待っていた。


「やはり来ないのですかね‥‥」


辺りを見渡すハカセに「イヤ、チビは絶対来る!」と健太は手渡す予定の団旗を担ぎ、落ち着き払っている。


「そうだと良いですけどね」


ハカセが愚痴をこぼした瞬間、笑顔で手を振る健太。

健太の見つめる先に居たのは、学校を休んでいたのが嘘のように元気に手を振るチビだった。


「ヨッシャ-!やっぱり来た~!」


笑顔で川原を駆け降りて来るチビに、健太は説明も無く団旗を手渡す。

チビは受け取った団旗を嬉しそうに見つめている。


「良いのですか、何も言わなくて?」


練習を始めようとする健太に、ハカセが小声で耳打ちすると「ん‥‥何の事?ああ旗守る役の事か?」と見当違いな様子の健太。


「違いますよ!イジメられている事を知ったのも、保健室に応援しに行った事も言わないのですか?」


ハカセが不思議そうに小声で聞くと「仲間やからな!」と健太は格好付けたポーズで、ハカセに笑顔を返す。

二人の会話を聞き取れなかったチビが、不思議そうな顔をしていると「シャ-!練習開始や-!」と健太はいつものように大声を張り上げた。

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