第7話<握り拳と掲示板>3

1時限目終了後休み時間


「やはり誰も見ていませんね」


データ取りするつもりだったのか、ノートとペンを持ち通行人をチェックするハカセ。


「あれっ、おかしいな~」


掲示板に見向きもしない同級生達を、不思議そうに首を傾げて見つめる健太。

約束どうり集まった二人は階段の隅に隠れて様子見しているが、チャイムが鳴る迄の間状況は何一つ変わらないままだった。


「まだ朝やからかな!?」


幸せな勘違いに浸る健太を傍目にハカセは「時間の問題ではないと思いますけどね」と冷たくあしらう。


「次の休み時間かな~!」


2時限目休み時間


「おかしいな~!」


不満そうに健太は掲示板の四隅に張り付けてあったリボンを、団員募集の張り紙に付け替えた。


「そんな事しても無駄だと思いますよ」


呆れた様子で不必要になったノートを閉じるハカセ。

3時限目休み時間


「なんでや!」


壁を叩き始める健太をハカセは「まだ初日ですからね‥‥」と慰めるが健太は変わらず壁を叩き続けている。


4時限目休み時間


「‥‥」

「‥‥」


意気消沈して身動き一つしない健太とは裏腹に、冷静なハカセは眼鏡の汚れを拭き取っている。

もう階段の隅に隠れる事もなく、二人は無言で掲示板の前に立ち尽くしていた。

放課後になっても健太の甘い予想は全く当たる事無く、掲示板を見ている同級生は誰もいなかった。


「なんでやろう~、みんな授業中に来てるんかな~?」


まだ微かな期待を口にする健太にハカセは「常識的に授業中は無いと思いますよ」と呆れ顔で笑い、健太は「やっぱり無いか~!」と笑い飛ばした。


「目立つ募集用紙でも考えましょうか?」


すかさずハカセはノートを取り出すが「イヤ、直接頼もう!今からスカウトや!!」と突然走りだす健太。


「ちょっ、ちょっとドコに行くんですか‥‥」


慌てて後を追うハカセに健太は「職員室!先生に聞いてみよう!」と走りながら振り向き答えた。


「なるほどリサーチですね」


職員室に向かって二人が廊下を駆け抜けていると「コラッ!廊下を走るな!」と担任の怒声が廊下に響いた。


「あっ丁度良かった、先生!」


立ち止まり振り向き様に呟く健太に先生は「何が丁度良かったや、廊下は走ったらアカンぞ!」と呆れ顔で窘めるが、少しも気にしてない様子の健太は「他のクラスで声の大きい奴って知らないですか」と質問を始めてしまっている。


担任はまるで諦めたかのような小さなため息を吐いた後「声が大きいといえば1組の野村優かな‥‥」と素気なく答えた。

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