第17話 サマダ再来

 サマダが死んでから10年の月日が流れた。

 ニンジン国は、クロが王として、政治をしていた。キュウリとモモ、ピーマンも健在だ。

 ピーマン姫はあの後、サマダとの子を産んでいた。名前はゴーヤといい、苦い人生でも頑張れば(料理すれば)良くなる(美味しくなる)という願いを込めてだ。

 そんなゴーヤも9歳、来月には10歳になる。彼は、サマダの血をしっかり引いてるようで、剣術に優れている。そして、最近分かってきたようで、彼もまた前魔王の力が使える。

 判明した頃は、生き残った王族達が彼を批判していたが、クロとピーマンの必死の説得で、多少は了承するようになった。

 ニンジン国は、崩壊寸前まで行ったが、ライゴウ国とサイゴウ国の支援を受け、再び以前の繁栄をもたらした。

 そして、今日、ニンジン城でライゴウ国と会談する予定になっている。ライゴウ国からは、ライオン王、シマウマ、ウマがやってくる。クロは、新しい城の掃除を召使に命令した。

 城に、ライゴウ国の人々が到着した。

 馬車から、ウマ、シマウマ、ライオンといった順番で降りてきた。

 クロは、彼らを出迎えると、「よくぞ、はるばるここまで来てくださいました。うちの国の料理を用意しておきました。是非、ゆっくりしていってください。」

 クロとライオンは固い握手とハグを交わした。ウマは、右手で杖を付いているシマウマの横に付きながら、それを眺めていた。

 「シマウマさん、よくぞサマダにとどめを刺して下さいました。」クロは、そういうと、シマウマにも握手を求めた。シマウマは、左手をあげようとすると、体がプルプルと震えだしたので、クロは、「ああ、すみません。無理になさらず。しかし、本当にうちの国は皆あなたに感謝しているのですぞ。」と感情を込めて言った。

 大部屋に移動すると、クロとライアンは、机の端に並んで座り、反対側にウマとシマウマが座った。

 ピーマンが部屋にゴーヤを連れて、入ってきた。

 「おお、ピーマン王女。最後にお会いしたのは5年前でしたっけ。立派になられましたな。」ライオンは、真っ先に立ち上がり、彼女に話しかけた。「ライオン王様、お久しぶりです。ええ、もう5年ほど前ですかね。最近では、私もクロの代わりに政治することもあるのですのよ。こちらが、私の息子です。」ピーマンは、ゴーヤに手を向けた。「ああ、この子がサマダの子か。しかし、サマダのことはワシもすまなかったと思っておるよ。我国が彼の故郷を滅ぼしたのだな。子供に罪はない、大切に育てるんじゃ。」ライオンは目を赤くし、涙目になった。

 「いえいえ、こちらこそ。多くの被害を出した大罪人、サマダを出したこの国を許していただき、誠にありがとうございます。今夜、私達もこちらでご料理をいただく予定ですが、よろしいでしょうか。」「ええ、いいとも。ぜひ、空いている席にお座り下さい。」ライオンは、ゴーヤにニコッと笑いかけると、席に戻っていった。ピーマンとゴーヤは、ライオンの隣に座った。

 クロは、それを見て、料理の用意を指示した。

 宴会が2時間ほど続いた。ゴーヤが眠たくなってきたようで、ピーマンは挨拶すると、彼と共に部屋を出ていった。

 それを見ていたシマウマは、急にウマに耳打ちした。ウマは、立ち上がり、シマウマの杖を持ってくると、肩を持ち、立たせてあげた。ウマは、「父親が、風に当たりたいと。少し、高台まで案内してくれますか?」と後ろにいたニンジン国の兵士に話しかけた。クロは、「案内してあげてくれ。」を声を出したので、話しかけられた兵士は、「どうぞ、こちらです。」と部屋をあとにした。

 高台に着くと、シマウマは、またウマに耳打ちした。

 ウマは、「シマウマをお願いします。父がここにしばらく残りたいそうなので。もう一人兵士の方を呼びますので、父が帰りたいとおっしゃれば、1人、私を呼びにきてください。」と言って立ち去った。 

 シマウマは、しばらく椅子に座って、満月を眺めていた。兵士は、彼をずっと見ていたが、石のように動かないので、飽きて、彼の見ている満月を一緒に眺めた。

 そんな中、兵士はいきなり頭を何かでぶたれた。彼が、よろよろと、立ち上がると、シマウマが、杖を使わず立っているのが見えた。兵士は、剣を構えた、しかし、シマウマは、リーチのある彼の鞘で兵士の頭を打つと、兵士は、それで気絶してしまった。

 シマウマは、兵士を崖から落とすと、杖を服にしまい、そそくさと城内へ入っていった。

 ピーマンは、ゴーヤが寝息を立て出したのを確認すると、部屋をでた。

 それを見ていたシマウマは、ピーマンに気づかれないように、ゴーヤの部屋に入った。「この時をずっと待っていた。俺の息子よ。憎きシマウマの体で生きた10年は辛かった。ゴーヤ、これからはお前の体で生きるとするか。」

 シマウマは、ゴーヤの上に跨り、じっとした。

 ゴーヤは、ハッと目を覚ました。シマウマの顔を見ると、発狂し、彼を押しのけた。

 シマウマ(サマダ)は、背中から床に叩きつけられ、それが老体に響いたのか、海老のように悶えた。 

 ゴーヤは、「おい、貴様。一体なんのつもりだ。お母様に言い付けてやる」と言って部屋を出ていった。

 サマダは、立ち上がると、ゴーヤをヨロヨロと追いかけて、ゴーヤの肩を掴んだ。「息子よ。ククク、俺はサマダ、お前の父親だ。シマウマの体を乗っ取って、生きながらえた。次は、お前の体をもらう。」

 ゴーヤは、なにかを察したのか、サマダの腰に差してある剣を奪った。

 サマダは、焦った。すぐに、杖を取り出すと、ゴーヤに襲いかかった。ゴーヤはそれをかわすと、剣を抜き、サマダの首を切り落とした。

 転がった首をゴーヤが眺めていると、ウマがひょこっと顔を出した。

 「殺せましたか。流石、サマダの息子だ。」ウマは、そう言うと、シマウマの首とゴーヤの手をとり、大部屋に戻った。

 彼らが部屋に入ると、ライオン以外の全員がびっくりした顔を見せた。

 ウマは、ライオンに向かって「王、ゴーヤは一人でサマダを討ち落としました。彼は神童です。」と大声を出した。「おお、そうか。お前の手を煩わさなかったか。」ライオンは、そう言うと、クロに事情を話した。

 ピーマンが慌てて部屋に入ってきた。「は〜、良かった〜。大丈夫?」ピーマンはゴーヤを涙声で話しかけた。

 クロは、彼女に近づき、「これが彼らの今回の目的だったらしい。」と肩を叩いてあげた。

 クロは気付いていた。彼らがサマダを利用して、ゴーヤも殺そうとしていたことを。

 ライゴウ国一行は去った。ゴーヤの噂は世界で広まるだろう。クロは、彼の命をより大事にするよう、ピーマンに話した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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