第Ⅰ章 第6話 ~誓うよ、魂(アニマ)にかけて~


~登場人物~


ノイシュ・ルンハイト……主人公。男性。ヴァルテ小隊の術戦士で、剣技と術を組み合わせた術剣の使い手


ミネア・ルンハイト……ノイシュの義妹。女性。ヴァルテ小隊の術戦士で、霊力を自在に操る等の支援術の使い手


マクミル・イゲル……ヴァルテ小隊の隊長。男性。ヴァル小隊の術戦士で、増強術という支援術の使い手


 ウォレン・ガストフ……ヴァルテ小隊の隊員で、戦士。男性。あらゆる術を無効化する術耐性の持ち主


 ノヴァ・パーレム……ヴァルテ小隊の隊員で、術士。女性。様々な攻撃術の使い手


 ビューレ・ユンク……ヴァルテ小隊の隊員であり、術士。また修道士でもある。女性。回復術の使い手







開いた鎧戸よろいどから差し込む月明かりが部屋を薄暗く照らしている。ノイシュは眼を細め、その先に映る後ろ姿の少女を見据えた。


 寝台に下着姿でした義妹は静かに腕を伸ばし、外の月を掴む仕草をする。ノイシュが後ろから彼女を抱き締めると、ミネアはゆっくりと顔をこちらに向けてきた。


「ノイシュ……」

 彼女の感触と体温を全身で感じながらノイシュは微笑んだ。


「どうしたの」

「本当に、これで良かったの」

 ノイシュは顔が熱くなるのを感じつつも、強く頷いた。


「後悔なんてないよ、絶対に」

「誓える……? ノイシュのアニマが、心から私を求めているって……」

 義妹が身体ごと向き直り、真っすぐにまなざしを投げかけてくる。鼓動こどうが強く脈打つのを感じながら、ノイシュはその澄んだ瞳に向かい合った。


――アニマ……あまねく人々が宿す霊体であり、術を発現させる力の根源――

アニマが、求めているって――」

 ノイシュがそこまで口すると、ミネアは静かに頷いた。

「学院の講義で教わったでしょ。アニマは霊力だけじゃなく、私達の嗜好しこうや人格をも決定しているって……きっと、かけがえのない人への想いも、そうなんじゃないかなって……」


 ノイシュはうつむき、彼女の言葉を心の中で反芻はんすうした。この胸に溢れる温かく優しい気持ちや切ない痛みも、その奥底に宿ったアニマによるものなのだろうか――


アニマは己が求める人と出会った時、互いに強く惹かれて、求め合って、決して離れようとしないって……たとえどんなに二人が離れていても、絶対に――」

 義妹が敷布のれる音を立てながら近づいてきた。

「――貴方のアニマにかけて、誓えますか……私を求めて、止まないって」


 ノイシュは顔を上げ、再びミネアのまなざしを受け止める。そして静かに頷いた。

「……うん。誓うよ、アニマにかけて」

 ノイシュが微笑むと、次第に義妹の目尻が下がっていく。


「……ありがとう、私もアニマにかけて誓います……ずっと、ノイシュのことを……っ」

 ミネアの頬に一滴の涙が伝っていく、ノイシュは引き寄せられるように身体を近づけ、義妹を抱き締めた。ひたすらに彼女の高い体温と柔らかな感触を求めていく。このまま自身の身体を失くし、彼女のアニマと混ざり合えたら――


「ノイシュ、ずっと、ずっと傍にいて――」

 彼女の言葉を聞きながら、そして自らもそう願いながら、次第にノイシュは無意識の世界へと誘われていくのを感じた――


「ノイ……たしの故郷に……行こう……れしかった……私の育った街はね……――」


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