【書籍化】庭に出来たダンジョンが小さい! ~人間は入れないので召喚モンスター(極小)で攻略します~

フーツラ@発売中『庭に出来たダンジ

第1話 謎の穴

大学3年の夏休み。里帰りした実家の裏庭で直径5センチぐらいの穴を見つけた。最初はセミが出てきた穴かと思ったが、よくよく見ると何か違う。具体的に何が違うかと問われたら困るのだが、とにかくセミの穴ではない。


にわかに悪戯っ子の魂が蘇った俺は落ちていた細長い枝を穴に差し入れて様子を窺う。


グリグリと枝を穴の中で回すと、何か反応があった。


グリグリグリ。うん? 枝が引っ張られた。


グリグリグリグリゴリ? 様子がおかしい。枝を引き抜くと大分短くなっていた。試しに別の枝を入れても同じことが起きる。これはモグラか何かの仕業? 随分と攻撃的な奴だ。


さて、これからどうする? 危ないかも知れないが、やはり正体は確かめたい。ここは実力行使。


と、言うことで大人気なくシャベルの登場です。


「フンッ」


穴に向かってシャベルを突き入れ、地面を抉る。まだまだ穴は続いており、少しずつ大きくなっている。今は直径10センチぐらいだ。


「フンッ」


「フンッ」


30センチぐらい掘ったところで穴は横へと伸びていた。今のところモグラはいない。シャベルに恐れをなして逃げ出したのだろうか? シャベルが最強というのは人類以外にも広がっているのか?


「フンッ」


「ギィー!」


えっ?


シャベルの先から嫌な感触が手に伝わった。視線の先では緑の小さな生き物が痙攣している。


「何だ? これは」


見ていると徐々に動きが弱くなり、遂に緑の生き物は動かなくなる。うっかり殺してしまった。そんなつもりはなかったのに……。


せめて供養をしよう。しかし、どうやって? シャベルで緑の生き物をすくって思案に暮れる。


大体、この生き物はなんだ。セミでもなければモグラでもない。サイズを気にしなければ、これは……ゴブリン。ゴブリンです。


裏庭の穴を掘り返していたらゴブリンを殺してしまった。体長5センチぐらいの。


ゴブリンをご存知だろうか?


いわゆるRPGの雑魚モンスター。ファンタジーな存在だ。シャベルの上にいる生き物だったものは、見れば見るほどゴブリンなのだ。


ゴブリンのいる穴。それはつまり、ダンジョンなのでは? 俺はダンジョンをシャベルで掘り返してしまったのか!?


いやいやいや。そんな筈はない。現在の気温は40℃近い。暑さで頭がおかしくなったのかも──。


ボフン! 


シャベルの上のゴブリン? は煙になって消えてしまった。そして、小さく透明な石が残っている。ダンジョン、ゴブリン、そしてこれは……魔石!? 魔石なのか? この5ミリ程度の小さな石は!


「ハルくん、そうめん出来たよ!」


勝手口が軽く開いて、母親の声がした。とりあえず素麺で頭を冷やそう。俺は魔石と思われるモノを摘んでポケットに入れ、勝手口から家へ入った。

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