アングルボザ~大蛇は近未来に転生す~

管理人

プロローグ:世界の終焉、大蛇の死

『……ダメだ力がもう出ねえ』


 一匹の大蛇が血まみれの状態で横たわっていた。頭部はぐしゃりと砕かれ、大量の血が吹き出している。


『でも……アイツには目一杯の毒をお見舞いしてやったんだ。今頃くたばってるところだろうよ……』


 大蛇にはもう動く力も戦う力も残っていない。今は消えかけている意識を維持するだけで精一杯であった。


『もう思い残すことはなにも……あ、そうだ

 。俺が死んだら、甦らせてもらえるようヘルに頼めばよかったかも。はは……まあ、んなこと出来るわけねえけどな』


 もうすぐ死ぬというのに冗談を吐く大蛇。だがその言葉からは死への恐怖と無念の感情が滲み出ていた。


 ここで願いを言ったところで何も起きるはずがない。だが、この願いが本当にヘルの元へ届いていれば、もしかしたら自分を生き返らせてくれるかもしれない。大蛇はそんな泡沫うたかたのような願いに期待を寄せていた。


 しかし、そんな奇跡が起きるはずもなく大蛇は自ら出した血と毒に包まれながら息絶えたのだった。


 その大蛇の名は。最高神オーディンに捨てられ、アース神族への復讐に燃えていたミドガルズの大蛇は雷神が持つミョルニルの一振りによって崩れ落ちたのであった。


 これは遥か昔、地上に神と巨人がいた時代。そして世界が炎で焼きつくされ、終焉を迎えようとしていた時の話である。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る