第40話「メール攻勢と夜の執筆~一寸先はエキセントリック~」
夜である。執筆タイムである。
ちなみに、夕飯は梅香さんからいただいた煮物と唐揚げで済ませた。
「うーん……」
デートイベントを書くのは精神力を使うな……。
……というか、今さらながら西亜口さんに見られながら小説投稿というのはより精神力を使う。命を削るレベル。
――ブィイイン!
「ぬぐぁ」
誰からのメールだ。
西亜口さんか? 未海か?
スマホを手に取る。
『かまえーーーー!』
里桜からだった。
『すまん。今、忙しい』
正確には筆が止まっているが、集中力を途切れさせるわけにはいかない。
『わーん! 祥平つめたいーーーー!』
許せ。
――ブィイイン!
しつこい。
一応画面を見てみるが、今度は未海からだった。
『お兄ちゃん、かまってーーーー!』
なんなの俺。そんなに俺って女子からかまってもらいたいキャラだったか?
まぁ、いい。
『ごめんな。今、忙しいんだ』
やや表現をマイルドにして未海に返す。
泣かれても困るからな。
『お兄ちゃん、冷たいよぅ!』
すまんな。お兄ちゃんは小説を書かないといけないんだ。
――ブィイイン!
「ええい、今度はなんだ?」
画面を確認すると今度は西亜口さんだった。
『殺すわよ』
「なんでだよ!?」
いきなり脅迫だよ!
西亜口さんエキセントリックすぎるよ!
――ブィイイン!
『今のはロシアンジョークよ』
本当にロシア恐ろしいな……。
いや、ロシアというか西亜口さんが恐ろしいだけかもしれないけど……。
『とにかくさっさと書いて更新しなさい』
ごもっともで。
『了解』
とだけ書いて返信した。
「あとは書く。書くしかない。書け俺。書かねば」
デートイベントを書くのは難易度が高い。
というか、昨日の川越散策はデートと呼べるものだったのか?
刃傷沙汰になるのを必死に防ぎ続けていただけだった気がするが……。
「……今のラブコメの流行りはリアリズムな気がするんだが、俺の周りの女子はエキセントリックすぎるんだよなぁ……」
どんどんアサっての方向にいっている。……でも、いいんだ。
これ以上ないくらいキャラは立っているからな。異様なほどに。
ラブコメにとって大事なのはキャラだ!
「とにかく、ありのままを書く。西亜口さんはかわいい、未海もかわいい、里桜も、まぁ、かわいい……」
かわいいは正義。
かわいければ問題ない。
かわいさが一番大事。
それだけを胸に、俺はひたすらラブコメを書いていく。
筆力なんてあとからついてくる。キャラに向きあえばいい。
ありのままを書けばいい。
「書く、書く、書く、書く、書く」
呪文のように繰り返しながら、執筆、執筆、執筆……。
こういうとき、重複表現とか気にせず書ける一人称はいいな。
集中力を高めて作品世界に没入していく。
「……よし」
いい感じだ。
昔に比べて格段に女子をかわいく書けている気がする。
そもそも、ちょっと前までの俺は女子との接触は里桜と梅香さん以外になかったからな。人生わからないものだ。
「……ほんと、西亜口さんと出会ってから、人生、激変したなぁ……」
西亜口さんと出会わなかったら里桜もここまで俺に積極的に絡むようにならなかったろうし、川越に行って未海と再会することもなかったろう。
「……一寸先は闇というか一寸先はエキセントリックだな……」
しみじみと実感する。
俺にラブコメなんて書けないと思ってたが、やってみるもんだな。
「って、浸ってないで書かないと」
今は過去を振り返っている場合ではない。
ストックがない。昨日は更新も休んだし。
俺は気合を入れ直すことにした。
「があああああああああ!」
根性! 熱血! 集中!
俺とは無縁だった精神論を総動員して執筆しまくった。
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