第25話地下迷路の裏ルート

十二月初め、クリスマスが近づいてきたある日のこと。

夕食の時間に重雄はみんなに告げた。

「実は子ども会でクリスマス会の会場として、この屋敷を使わせてほしいと頼まれたんだ。」

「子ども会・・・」

それは侑にとって憧れで、懐かしくもあるイベントだった。

屋敷に来る前、親がいない侑にとって子ども会は興味をそそられるパーティーであり、屋敷に来て参加できるようになってからは小学六年生まで続いた、子どもだけの楽しく儚い時間であった。

「あら、子ども会のイベントは公民館でやるんじゃなかったの?」

百合絵の言う事に侑は頷いた、重雄は腕を組みながら言った。

「それがな、自治会の手違いがあってな。老人会のイベントと公民館を使う日がダブルブッキングしてしまったんだ。そこで子ども会委員長が、クリスマス会をする場所を探していたんだ。」

そういえば今年の夏は野球部が合宿で屋敷を使ったことがある、大きな屋敷は何かと重宝されるようだ。

「それでクリスマス会はいつなの?」

「十二月二十五日、クリスマス当日だ。クリスマス料理を作るイベントをやるから、キッチンも貸してほしいそうだ。」

「じゃあ、クリスマスは賑やかになるね。」

「ああ、だが侑はもう参加できないぞ。」

そんなことはとっくに分かっているさ・・・、侑は心の中でそう思った。






そしてクリスマス当日、屋敷には多くの子どもたちと子ども会委員会の人たちがやってきた。

侑は子ども会の邪魔にならないように二階で過ごしている。

子供たちの楽しむ声とクリスマスソングが、屋敷の一階から響いてくる。

「ぼくもクリスマス会に参加したかったなあ・・・。」

侑はぽつりと呟いた。

そして数時間後、宿題を終えた侑は退屈になって、ふと一階へと降りてみた。

すると上条が何やら慌てている、侑は気になって声をかけた。

「上条さん、どうしたの?」

「侑様!カンナちゃんという、五歳の女の子を見ませんでしたか?」

「ううん、見てないよ。」

「そうですか・・・、それにしても一体どこへ・・・?」

「何かあったの?」

「実はカンナちゃんが、いなくなってしまったんです。今、屋敷の隅々まで捜しているのですが、見つからないのです。」

「えっ!?早く見つけないと!!」

そして侑は上条と一緒に、カンナちゃんを捜した。

しかし屋敷全体をくまなく捜したが、カンナちゃんの姿はどこにもなかった。

侑と上条は、重雄のところへと向かった。

「上条、カンナはいたのか・・・って、侑がいるじゃないか!」

「すみません、侑様にも捜索を手伝ってもらいました。」

「父さん、カンナちゃんはいつからいなくなったの?」

「今から三時間前、ちょうどランチを食べ終えて、屋敷の中で宝さがしをしていた時だ。」

「うーん、もしかして地下迷路に迷い混んだとか・・・?」

「それはあり得ない、あの地下迷路への入り口は奥の扉いがいにない。あそこはふだん、鍵がかかっているからな。」

確かに重雄の言うとおりだ。

「ねえ、最後にカンナちゃんを見たのはどこ?」

「屋敷の庭の東の方で見たそうだ。」

「ありがとう」

侑はそう言うと重雄の制止を無視して、屋敷の庭の東側へと向かった。

侑はくまなく捜したが、カンナちゃんらしき少女の姿はどこにもいない。

しかし侑は茂みの中に小さなブレスレットを見つけた、ハートマークがついていて鮮やかなアクセサリーが飾られていた。

「これはもしかして・・・」

侑はみんなのところへ戻ると、ブレスレットをみんなに見せた。

「それは・・・、カンナのです!!」

カンナの母親は侑からブレスレットを受けとると、涙が溢れてきた。

「とにかく、みなさんはお帰りください。クリスマス会はこれにて終了です。」

委員長の号令により、子どもたちと委員会の人たちは帰宅していった。

そして重雄は警察へ通報し、かけつけた警察と重雄とカンナの母親は、カンナを捜しに屋敷の中へと入っていった。

それをただ見るしかない侑・・・、すると侑の頭の上に一枚の封筒が落ちてきた。

「これは・・・、Uだ!」

侑は封筒を開けた、そこにはこんなことが書かれていた。

『東の庭にある田月女又心の中へ入れ』

これを見た侑は久しぶりの謎だと思った。

「どうしたんだ、侑?」

重雄が侑に声をかけた、そして侑が持っている封筒に気がついた。

「おい!その封筒は、もしやあの・・・」

「待って、父さん!!この手紙には、カンナちゃんの居場所が記されているんだ。」

「何だと!?どこにそんな根拠があるというんだ!!」

重雄は侑がバカなことを言っていると思いこんだ。

「根拠は無いけど・・・、でもこの手紙が来たということは、必ず何かの意味があるはずなんだよ!」

侑の強い訴えにより、重雄は侑の言葉を半信半疑で信じることにした。

「あの、どうなさいましたか?」

カンナの母親が声をかけてきた。

「今、カンナちゃんを見つけ出す手がかりを見つけました。」

「本当ですか!?早く娘を見つけてください、お願いします!」

カンナの母親は重雄に悲痛な声で訴えた。

果たして侑は、カンナの居場所を突き止めることはできるのか・・・?







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