第22話学校の裏トライアングル

中学二年生になった侑、相変わらず一人ぼっちの学校生活を送っていた。

そんな彼は野球部に所属している、バッターをしているが試合に出たことは無く補欠部員の一人である。

「侑、ボールの片づけやっておけよ~」

「おれたちは先に帰っているからな。」

先に帰る先輩たちをよそに、侑は部活動の後片付けをしていた。

「侑、ご苦労様。」

「あ、真澄ますみさん。」

侑と同じクラスの羽野真澄はのますみは、野球部のマネージャーで野球部の紅一点である。

三年のクラスでも真澄に好意を持つ生徒は多く、真澄に好かれていると噂されれば「真澄に近づくな」と圧をかけられるとまで言われている。

「ねえ、侑。あなたって、お金持ちなんでしょう?」

「うん、それがどうしたの?」

「さぞかし偉そうにしているイメージがあったけど、あなたはかなり控えめね。」

「え・・・、うん。ぼく、元からこうなんだ」

「そうなの。あのね、私はあなたみたいに落ち着いた人が好きなのよ。」

侑はドキッとした、侑の性格は今まで他の生徒と比べてデメリットと思っていたが、好かれるポイントと言われて侑は嬉しい気持ちになった。

「あ・・、ありがとう」

「おーい、二人とも。片付けが終わったら、速やかに帰るんだぞ。」

顧問の源田げんだが二人に呼びかけた、侑は真澄と一緒に後片づけを済ませると帰宅した。

真澄に好かれたことは驚いたけど、甘酸っぱく侑の心に残った。










そしてそれから一ヶ月後、夏休みが近づいてきた野球部では合宿が近づいてきた。

「えー、これから合宿に参加するメンバーを募る。参加したいメンバーは、親御さんの許可と一人三千九百八十円持って私に申し出るように。」

野球部のメンバーは多数が参加を申し出た、しかし侑はそれほど野球に打ち込んでいるわけじゃないので、合宿には参加しないことににした。

そして片付けの時、侑は真澄に声をかけられた。

「ねえ、侑は合宿に参加するの?」

「ううん、ぼくはいいかな。野球はそこそこできればそれでいいかな・・・。」

「侑くんって、あまり甲斐性ないのね。」

真澄の言い方は少し冷たく、侑は心にチクッとした痛みを感じた。

ところが夏休みの前日、源田から残念な知らせが届いた。

「実は合宿所が満員になって、使えなくなったんだ。申し訳ないが、今年の合宿は中止とする。お金は返すから、親御さんに渡しておくように」

源田は金が入った封筒を参加者全員に手渡した。

「中止かよ・・・。」

「楽しみにしていたのになあ・・・」

野球部には落胆の声が相次いだ。

ところがその日の練習終わり、野球部のキャプテン・宮坂カイトたち六人が侑に声をかけた。

「侑、頼みがあるんだけどいいか?」

「頼みって何?」

「実はさ、おれたちだけで合宿をすることに決めたんだけどさ。その場所に、お前の家を使わせてくれないか?」

「えっ!?ぼくの家を・・・」

「お前、野球はあまり上手くないけど、家はかなり豪華だというじゃないか。」

「三日だけでいいから、侑の家を貸してくれねえか?」

「えっと、親に聞いてみるけど・・・。野球の練習はどうするの?」

「それなら大丈夫、イチローセンターでやるから。」

イチローセンターは侑の家から徒歩十五分のところにあるバッティングセンターで、野球場も完備された去年建てられたばかりの新しいスポーツ施設だ。

「侑、絶対に許可を貰っとけよ〜!」

宮坂たちは手をふりながら去っていった。

侑はその日の夕食の時間に、重雄に相談してみた。

「合宿か・・・、ここは広いからな。みんなには雑魚寝さえしてもらえば、それでいいだろう。後はそれぞれの両親の了解さえあればいい。」

「ありがどう、父さん!」

まさか重雄が許してくれるとは、思わなかった。

そして翌日、侑は宮坂たちに許可を貰えたことを報告した。

「でかした侑!お前が野球部でよかったよ!」

侑は宮坂からべた褒めされた。







そして夏休みに入り、三日が過ぎた日のこと。

侑の屋敷に宮坂たち六人と、そこに真澄がやってきた。

「あれ?真澄さんも来たの?」

「うん、あたしマネージャーだから。」

「お客様、よくいらっしゃいました。それでは、お上がりください。」

上条がみんなを部屋へと案内した。

案内されたのは、体育館ほどの大きさの部屋だ。ここには昔ピアノが置かれれていて、社交パーティが開かれていたそうだ。

「ここを使ってもいいのか?」

「ええ、他に必要なものがあればなんなりと申して下さいませ。」

上条がドアを閉めると、宮坂たちは早速騒ぎだした。

「ちょっと、合宿で来たんでしょ!?」

「いいじゃないか、せっかく広い家に来たんだし!」

宮坂たちは早速、各々が持ってきたマンガやゲームで遊びだした。

それから一時間後に彼らはイチローセンターへ向かい、野球の練習に励んだ。

もちろん、侑も一緒なので終わる頃にはすっかりへとへとだ。

「さて、帰るぞ!」

宮坂が号令した時、侑のスマホに電話がかかってきた。

「もしもし?」

「侑様、そちらに皆さんはいますか!?」

上条の声だ、酷く切迫している。

「どうしたの?」

「すぐにお戻りくださいませ、真澄様が殺されてしまったんです!!警察へはすでに通報してあります!」

侑は目を大きく開いてで絶句した。




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