第十四話 兄弟
ロバートは5歳の頃に流行り病で両親を亡くしている。
幸か不幸かロバートとその兄、ジーマは流行り病にかかる事はなかった。
肉親が兄弟しかいなくなった今、二人は力を合わせて頑張って生きていかなくてはいけない。ロバートは口にせずともそう思っていた。
しかし兄はそうは思っていなかった。
なんとジーマは商人として認められる15歳になった日に、まだ10歳だったロバートを置いて村を飛び出たのだ。
ロバートは面倒見のいい村の人に育ててもらい今の今まで生きてはこれたが唯一の肉親に捨てられたという事実はずっと心のどこかでひっかかっていた。
風の噂で商人になったことは知っていたが
王国で商売をしていても合わなかったのでどこか遠くで働いているのかとロバートはずっと思っていた。
まさかその存在が今ここにいるとは。
ロバートは捨てられた事を怒るべきなのか、再会を喜ぶべきなのか分からなかった。
「まさかお前が商人になってるとはなあロバート! 大人しくあのクソみてえな村に引きこもってりゃいいものを!」
「
「ぐ……村を捨てた兄ちゃんに村を悪く言う資格はないっす! 兄ちゃんがいなくなった時村のみんながどれだけ心配したと思ってんすか!」
ジーマが村を出たがっているのはみんな知ってはいたが、ジーマがあまりにも急にいなくなったため村人たちは魔物に襲われた可能性も考え三日三晩ジーマのことを探した。
ロバートがもういいと懇願しなければ村人はもっと探していただろう。
「心配? はっ、そんな1銅貨にもならないもんがなんだってんだ。ちっ! それにしてもアクィラ商会も落ちるとこまで落ちたもんだ。こんな田舎もんと商売するなんてな」
ジーマはミギマを睨みつけながら嘲笑する。
しかしミギマはそんな挑発には乗らず毅然とした態度で言い返す。
「ロバート様は我が商会にとって良きパートナーとなりうるお方です。それ以上の侮辱は許しませんよ?」
言葉遣いこそ丁寧だがミギマもブチギレ寸前だ。
切迫した状態ではあるが自分のことで怒ってくれることがロバートは嬉しかった。
しかしジーマからしたら不愉快極まりなかった。
彼からしたら弟は吹けば飛ぶような存在。いつまでも田舎にすがりつく愚か者。
ああ不愉快だ。
こうなったら全部、ぶち壊してやる。
「おめえら!」
ジーマが一緒に入ってきた男たちを呼ぶと男たちは「はい!」と大きな声で返事する。
「やっちまえ」
下卑た笑顔でジーマがそう言うと、男たちは待ってましたと言わんばかりにロバートの荷車に手をかけアクィラ商会の外へ待ち出す。
「お、お前らなにやってんすか!?」
その蛮行を阻止せんとロバートも外に出て荷車を取り返そうとするがジーマが目の前に立ちはだかる。
「お前みてえな甘ちゃんに商売人は無理だロバート。兄弟のよしみでこの商品は俺がもらってやる」
「ふざけんじゃないっすよ! その商品はあんたみたいな腐った人間が扱っていいものじゃないんすよ!」
ロバートは生まれて初めて拳を握り、ジーマの顔面目がけて拳を振るった。
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