番外編IFその2~もしも、セヴランのウソが大公の耳に入っていたら~ セヴラン視点(4)

「ぁ、ぁぁぁ……。そう、だ……。そう、だった……」


 閣下から理由を伺った瞬間、思い出した。思い出してしまった。



『オレは大きな力を有し、圧倒的な覇気を纏っているからだろうな。あの大公閣下ですら、オレの姿を見たら背筋を正すんだぞ』


『この男が本気を出したら、きっとワシであっても敗れるだろう――。話を伺っていると、ある時そう漏らしたんだよ。さすがは閣下。よく分かってらっしゃる』



 かつて俺は、そんな嘘を口にしていたことを。


「噂の出所を辿ってみると、セヴラン殿にたどり着いたのだよ。その様子、やはりワシの追跡は間違っていなかったようじゃな」

「……………………」

「セヴラン殿。間違って、いなかったようじゃな?」

「! はっ、はいっ! たしかにっ! 口にっ、致しました!」


 以前聞いた話によると、閣下の情報網は随一。こいつは即否定をしたいものだが、下手に誤魔化すと大変なことになりかねないから……。

 正していた姿勢を更に正し、大声で肯定をした――させていただいた。


「と、当時は……。その……。自慢を……婚約者に…………格好を、つけたくて……。良いところを…………こんなにもすごいのだと、思わせたくて……。大きな大きな存在である……大公閣下のお名前を……。だ、出させて、いただきました……。そ、それは、随分と、昔のこと、でして……。わ、忘れて、しまって…………おりました……」

「やはり、そうじゃったか。……愛する者の気を引きたくなる。その気持ちは、分かるぞ」

「閣下! いたみい――」

「じゃが、そのやり方はいかんのう。他者に大なり小なり害をもたらす方法は、いかんのう」

「っっ!!」


 穏やかさを持つ瞳に、じっと見つめられただけだった。

 なのに、身体が動かない……。金縛りに遭ったかのような感覚に、陥ってしまった……。


「実はのう。中には、その噂を信じてしまう者もおってな、いささか面倒なことになっておるんじゃよ」

「………………」

「セヴラン殿。ワシは事の大小に関わらず、『迷惑』をかけた者には『お礼』をするようにしておるのじゃよ。そこでこうして、直接お主に会いに――」

「お許しください閣下!! 猛省しております!! その償いはさせていただきます故!! おゆるしくださいませぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」


 金縛り状態となっていた四肢を無理やり動かし、四つん這いになって額を地面につける。そうしてまずは姿勢で内心を示し、それから俺は――

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