第12話 ……………… ナディーヌ視点

「……………………」


 すっかり、忘れてしまっていた部分。それを理解したわたくしは、頭の中が真っ白になっていた。

 ライズネルト様と婚約されたというコトは、いずれ公爵夫人となるというコト。

 公爵は、侯爵より上なのだから……。悔しがるはずが、なかった……。


「やっと、納得していただけたようですね。ミレネア様、もうよろしいですよね?」

「……………………」

「放心されているので、そう判断させていただきましょう。……エリザベット様、掴んでいた手も離れたことですし。準備に参りましょう」

「お待たせしてしまい、申し訳ございませんでした。……ミレネア様。失礼致します」


 わたくしの行動は全部、何もかもが無駄になったんですもの……。反応する気力すら、湧いてこない……。

 ただただ目の前で行われるカーテ・シーを眺め続け、会場をあとにする二人を見送って……。しばらくしたら…………。


『婚約っ!? おめでとうございますっ!!』

『ライズネルトさまっ、ニーエイルさまっ、おめでとうございますっ!!』

『大ニュースですわねっ。早く皆さんにもお伝えしませんと……っ!』


 サプライズが始まって……。会場には大きな拍手と歓声が響き渡って……。

 わたくしはぼんやりと、それを眺めて………………。


「ナディーヌ!? どっ、どうしたというのだ!?」


 気が付くとわたくしは、お屋敷に戻ってきて……。

 お父様に説明する気力も、湧いてこないから……。着替える気力も、湧いてこないから……。

 そのままベッドに倒れ込み、こんなことを、考えながら……。両目を閉じて、眠りの世界に逃げ込んだのでした…………。


((そういえば明日は、セヴラン様とお会いする約束をしていましたわ……。…………エリザベットを上回れないのなら、婚約している意味も結婚する意味もないのに……。どう、しましょう…………))


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