第4話 相合傘

風、咲、良は足繁く〝ひまわり〟に通った。

店主の俊は優しく時にはロッカーらしく

少年、少女をロックに染めていった。

まず、俊が早い段階で勧めたのが、

ビートルズであった。

俊は、「偉大なロックバンドは、いっぱいいる

レッドツェッペリン、ヴァンヘイレン、クイーン、ディープパープルあげたらキリがない!

だけど、メロディーとコード進行で革新的な

曲を書いたのは、ビートルズだ ストーンズも凄いけど、俺はビートルズ派だね!」

そう言ってダビングしてくれたのが

〝赤盤〟初期のベスト盤であった。

初めてプリーズプリーズミーを掛けてくれた時、

良が「俺これ知ってる!ポンキッキで掛かってたぞ!」

と曲に合わせて、志村けんのような踊りをして、

みんなを笑わせた。

そんな5月のある日

風と咲がいつもと同じように、朝 教室へ入ると

黒板に、

横山風/上杉咲と相合傘がデカデカとかかれていた。

横にはBには、絶対行ってる!

性的なハラスメントまで書いてあり

クラス中から、からかわれた。

風は、顔を真っ赤にし

「誰だ書いたの!」と怒りをあらわにした。

咲は、顔を両手で覆い隠し、泣いてしまった。

そのうち、耐えきれなくなり、教室を飛び出して

しまった。

何人かの女子が慰めに追いかけたものの、

その日を境いに、あきらかに咲の風に対する態度が

変わってしまった。

一緒に〝ひまわり〟にいき、俊さんの

ロック講座も聞くことがなくなってしまった。

風は、なんとも釈然としない気持ちで

何故か家で、ビートルズの〝アンドアイラブハー〟を聴く機会が増えた。

歌詞の意味もわからずに。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る