「ただいまー」

玄関に入ると、懐かしい我が家の匂いがした。

ひぐらしが一日の終わりを告げている。

家族みんなが食事を済ませ、あっという間に夜になる。

今夜も蒸し暑い。この季節はいつだってそうだった。

弟が仏壇にスイカを置いた。やけにしみったれた顔をしている。

「兄ちゃん、スイカ置いとくね」

「ありがとう」

届かないお礼を伝えて玄関に向かう。

今年も、そろそろ出掛ける時間が迫っていた。

「また来年来るわ。いってきます」

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