第12話お前何してんだ


「……てかさ、巧」


「何?」


手を引込めて、元の位置に座りなおした高城が、『今思い出した』と言わんばかりに目を細めて声色を落し、テーブルに肘をついて、何か聞きたげな様子。


「本当に気になるんだけど。お前、学校休んで、何してるんだ? 中間の勉強も放棄してまでしてさ」


「何って…ゲームとか昼寝しているだけだよ」


ヒヤリと背中に氷でも入れられたような錯覚に陥りかけたが、咄嗟に僕にしては上出来な嘘をついた。


が――。


「嘘だろ。今、目泳いだ。そんで、こっちを見ろ」


「うっ」


高城には、一発で嘘がバレた。


そして、再びグイッと身を乗り出して、僕が目を逸らさないようにするためか、目と鼻の先辺りまで顔を近づけて。


「何してた? 今度は嘘つくなよ。目見れば分かるんだからな」


「別に、家にいてもやることがないからコンビニとか喫茶店とか空いている店にいるだけだよ……。先生とか誰にも言うなよ……」


家の事も口が滑って話してしまったぐらいだ。


今更……でもないか。


大体、高城も素行が悪くて不良で有名だ。


チクったりはしないだろう。


そう思って、正直に話したけど。


「……」


まだ、何か高城は不満顔で、見たことがない位に険しい表情をして、恐る恐るといった感じで――。


「………喫茶店って言ったよな」


「言ったよ」


「何て店だ?」


「店の名前? そんなのイチイチ覚えてないよ。 鳥陀かじゃって駅付近だよ。結構、入り組んだ場所にあるから、ちょっと分かりにくいかもしれないけど」


鳥蛇は観光スポットが多く、そのため外国人などの観光客が行き来している街。

居酒屋や夜営業するような店も多く乱立し、ネオンが眩しい――。


「鳥蛇って言えば、やべぇとこじゃねーか。何でそんな所に行ってんだよ」


高城の言う通り、中学生が行くような街ではないのは分かっていた。


「さぁ……なんでだろう? 結構、適当に歩き回ってるから……流れ着いた? かな」


「なんだそりゃ。……やめとけ。一応俺とは違って巧は優等生なんだから、さ。鳥蛇とかそーいう危ない所は昼はともかく夜はやめとけって。な? わかるだろ?」


僕の身を心配してくれていたのは分かっていた。


夜遊びがいけないことも。


だけど、「うん、そうする」とは簡単に口に出せなかった。


僕はあの時、もう鳥蛇かじゃの街に入り浸っていた。

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