1.初めてのダンジョンでの出会い。








「【エクスプロード】……!」



 ――ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!



 無詠唱で上級魔法を放つと、ドラゴンの頭が消し飛んだ。

 これくらいの魔物であれば、学園を退学になったボク程度の魔法でも問題なく倒せるらしい。魔素の欠片を拾いながら、ボクは一息つく。


 これを換金すれば、多少の路銀にはなる。

 それでもまだまだ足りない。ボクは、気持ちを引き締めた。


「今日はあと、二十体は狩りたいかな? 色々試しながら、頑張ろう」


 そんなわけで、ボクは新たな魔物を探して歩きまわる。

 そして、大きな影を見つけた時だった。



「ん、悲鳴――!?」



 そちらの方向から、女の子の悲鳴が聞こえたのは。

 ボクは即座に駆け出して、声のした方へ。

 すると、そこには――。



「だ、誰か助けてくださいっ……!」



 緑色の髪をした、一人の女の子が倒れていた。

 継ぎ接ぎだらけの汚れた衣服を身にまとっている彼女は、必死にドラゴンから逃げる。そして、今にも喰らいつかれそうになった。しかし――。



「え……?」

「大丈夫、だったかな?」



 ボクが、それを許さなかった。

 間に割って入り、牽制するように魔法を放つ。するとドラゴンは驚き、数歩後退した。その隙に女の子をちらりと確認する。


 セミロングの緑の髪に、赤の瞳。

 端正な顔立ちをしているが、どこか煤けている。衣服のこともあったが、おそらくは貧困層出身の女の子、なのかもしれない。

 小柄なその身を小さくして、少女はボクを見上げていた。



「あの、あなたは……?」

「ごめんね、今はそれよりも――!」



 不思議そうな表情を浮かべた女の子にそう言って、ボクはドラゴンを見る。

 こんな女の子を餌食にしようとするなんて許せなかった。

 だから、先ほどのドラゴンよりも徹底的に――。



「燃えてなくなれ――【エンシェントフレイム】!!」




 ボクは、炎系最上級の魔法を放った。

 ドラゴンの周囲には魔法陣が展開され、直後に爆炎が巻き起こる。そして、それが収まった時にはもう、魔物の巨躯は綺麗に消え去っていた。



「す、すごい……」



 後方で、女の子の呟く声が聞こえた。

 ボクはその言葉よりも、彼女にケガがないかが気になり振り返る。



「……あ、膝を擦りむいてる!」

「え、あの……!」



 そして、治癒魔法を施した。

 それ以外に目立った傷は見当たらなかったから、これでいいかな?


「あ、ありがとうございます!」


 そう思って一息つくと、少女は立ち上がって頭を下げて言う。

 ボクは少し気恥ずかしくて頬を掻くしかできなかった。

 そうしていると、彼女はこう名乗った。



「あ、あの! あたしベネット、って言います!」



 そして、その次にこう口にするのだ。




「もし良ければ、あたしとパーティーを組んで下さいませんか!?」――と。




 それが、ボクとベネットの出会いだった。


 







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