第32話 紅月-32

          * * *


「ユッコ。あんた、北斗なんて変わった苗字よく思いついたわね?」

「まぁ、なんとなく…」

「どうして、そんな名前にしたの?」

「別に…」

「ふーん」

「どうして、そんな目でみるの、お姉ちゃん?」

「あんた、従姉妹にそういう名前の人がいたの知ってた?」

「え?」


          * * *


 先代のファントム・レディは、従姉妹だったの。あんまり、つきあいのない家系だったから、会ったことなかったのよね。それに、結婚してもう苗字が清水に変わってたから、よけい耳にする機会もなかったのよね。

 知らない、ってお姉ちゃんに答えたら、それならいいけどって言われたわ。

 姉は気づいていたのかもしれない。あたしも、ファントム・レディになっていることを。


 ―――じゃあ、先生と朝夢見ちゃんとは、親戚なの?

 再従姉妹になるのかしら?だから、よけい他人のように思えなかった。母親を亡くして、落ち込んでいるあの子を見たとき、何とか元気づけようと思ったの。それで……、魔が差したのよね。


 未来ちゃんは、護身用。あの子、憧れの君を探して放浪してたから、結構危ない目にもあってたみたいでね。なまじ柔道の経験があるから、世の中を甘く見てるように思ったの。それで、身を護るために基礎訓練して、色んな護身術教えて、ついでにファントムも教えたの。その程度。だから、未来ちゃんは、ほとんどファントムは使えないはずよ。

 それにね、言い訳みたいになっちゃうけど、今ならあたしが二人をフォローできるっていうのも大きな理由ね。あの子たちが、おかしなことに巻き込まれても、かばってやることもできる。厄介な相手だったらあたしがあしらってあげられる。悪党に成り下がったファントム・レディを、あの二人で盛り返して、泥だけあたしが被ることもできると思ったの。あの子たちには、輝くファントム・レディになって欲しいの。


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