第6話

「どういうつもり?」

 

 お祖母様の部屋に入った途端にお祖母様は僕を睨む。

 魔法が展開され、ここを一時的な防音室に変える。


「はぁー」

 

 僕はため息をつき、肩を竦める。


「何を言っているのかさっぱり。どれに気づきましたか?」


「……っ!!!」

 

 お祖母様は僕の言葉を聞いて眉をひそめ、表情を驚愕の色に染め上げる。

 お祖母様。お祖父様に嫁入りしてきたローオス帝国の隣国である『ミーシャ王国』の公爵家の娘。

 無能とまでは行かないが、平凡。特に何か秀でたものもない公爵家の人間だろ考えれば無能と呼ばれるかもしれない人たちの集まりであるイグニス公爵家の中で唯一の才人。

 この人は僕が無能じゃないことを知っている。

 僕がとんでもない無能を演じることで周りの貴族、王子たちから敬遠させ、権力闘争に巻き込まれないようにしている。

 ということをイグニス公爵家の人間で唯一知っている人だ。

 だが、詳しく僕が何をしているかまでは知らない。


「執事長を寝返らせたことですか?ミーシャ王国に内通者を送り込んだことですか?ミーシャ王国で麻薬を流行らせたことですか?裏組織を掌握したことですか?」

 

 僕はつらつらと今までやってきたことの一部を話していく。


「それとも─────」

 

 魔力を開放する。


「僕がドラゴンを殺したことですか?」


 

 凍る。

 


「……っ!!!」

 

 動けない。

 お祖母様の下半身はガッチリと固められていた。

 凍ったのはお祖母様の下半身だけじゃない。

 部屋すべてが凍りついていた。


「な、な、な……」


 お祖母様はどうやら二の句を告げられない様子だった。


「ふー」

 

 僕はゆっくりと息を吐き、椅子に座る。

 魔法で作った氷の玉座に。

 ……かてぇ。つめてぇ。

 実用性皆無だが、威圧感は十分だろう。


「ミーシャ王国。王国内は大変なようですね」


「何か!あなたが何かしたのッ!!!」


「いや?まだ何もしていないですよ?今は、ね?」

 

「……」


 お祖母様は僕の言葉の意味を理解し、顔を青ざめる。


「祖国がなくなるのは嫌ですよね?なぁに。僕の目的はイグニス家の繁栄。そちらが何も手出ししなければ何もしませんよ。安心してくださいよ」

 

「……すぅ」


「ふぅー。僕はね、あなたに感謝しているんですよ。あなたのおかげでイグニス公爵家は繁栄出来たのですから。ですから、余計なことはしないでくださいよ?」


 僕は氷の玉座から立ち上がる。

 はぁー。頭が良いってのも考えものだなぁ。お祖母様にこんなことしたくなかったんだが。

 まさに、勘がいいガキは嫌いだよ?ってね。

 ガキじゃないが。


「じゃあまた」

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