無人島しか勝たん!

光城志喜

無人島編

序章

プロローグ:状況把握

 周りには生い茂る山々、流れる川の音。

 浜辺には一隻の小さな小舟がボロボロになって打ち上げられていた。

 そんな中に一人の少女が立っていた。

 彼女の名は森島優良もりしま・ゆら

 十五歳である。

 度重なる不幸の末、現在こうして孤島で一人になっている。

 その少女は遠い空を眺め、呟いた。

「どうしてこうなったの?」

「一緒に無人島で生きようって決めたのに……」

 涙が少女の顔から一粒こぼれ落ちる。

 彼女はしばらくその場で倒れこみ、泣き続けていた。

 自分のせいで居場所を失い、さらには大事な妹までも失ってしまった。

 そんな煮え切らない思いがこみ上げていた。

 近くを探しても妹の気配はなく、どれも葉っぱや流木ばかりで人の気配はありそうにもなかった。

 もしかしたら、もう少し探せばいるかもしれない。

 倒れていて、助けを求めているのかもしれない。

 もう一度立ち上がり、さっきよりも先の方を捜索する。

「せめて、どこかに手がかりさえあれば」

 砂の細かい部分まで凝視していると気になる人工物の一角が見ていた。

「もしかして……」

 砂の中から拾ったのは白いペンダントだった。

「これは、沙夜さやが作ってくれたペンダント!」

 沙夜さやは一個下の妹で、この島に来る前に一緒に船に乗っていた少女である。

「私、大事なペンダントなくしていたんだ」

 その瞬間、彼女の記憶からペンダントを貰った時の光景が蘇る。


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 それは、出発する数か月前

 近所の山の展望台での事


 あの時私は家に帰らず一人、山に登って夜空を眺めていた。

 ぼぉーっと眺めていると、後ろから沙夜がやって来る。

ねえ~ちゃん! やっぱりここにいた!」

「今日は天気がいいから絶対にここに来ると思ったんだ~」

 この時の沙夜さやは私の家での出来事には触れなかった。

 沙夜さやはただ、渡したいものがあると言って隣に座った。

 そう言ってポケットから出てきたものが二つのペンダントだった。

「えっとね、たしかこっちがねえちゃんの分だね!」

 そのままペンダントを受け取ると、暗くてよく見えなかったが、手で触った感覚だと飾りの方に何か凹凸があった。

「なんかデコボコしているような気がするけど、これは?」

「あつ、それはね。私のペンダントと組み合わせると…」

 二つのペンダントを星空に掲げて、沙夜さやのと私のを合わせると。星の形が出来上がった。

「今気づいたんだけど、私の方が星の部分が大きくない? 真ん中で区切ればよかったのに……」

「そう思ったんだけど半分ではないような気がしたんだよね。」

「いつも、優良ゆらには助けられているしどちらかといえば半分にするのはどうなのかなって思って……」

 その時、私には完全に分かったわけではないけど、きっと私を慕ってくれているのではないかとそう思った。

 しばらく沈黙が続いたあと、沙夜さやは急に私の前に立った。

「私ね、きっと二人で協力すれば今の暗い状況も明るく照らすことができると思うの!」

「あの一番星みたいに」

 そう言って、沙夜さやがずっと眺めていた星に指をさしていた。


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 あの時の記憶が鮮明に思い出された。


 しばらくしたあと彼女は決心する。

「せめて、沙夜さやの分まで生きないと!」

 そう言って涙を拭い、大きな流木をかき集めた

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