第2話 今まで、何もニュースが無かった日ってあるのかな? ……多分無いよね……。

 今日は土曜日。 ……最近眠気が取れないと思ったら、毎朝、白樺先輩が迎えに来るようになってから、いつもより早く起きるので、日々僕のベスト睡眠時間が削られ、その皺寄せが週末に来るんだ。


 その日はお昼頃までベッドでゴロゴロしていたが、お腹が空いてきたので、ナメくんを連れて台所に向かった。


「おはよう」


 ……おはよう……って時間でも無いのだが『こんにちは』って言うのもちょっと変だよね。


 母が「おはよう。 お昼、冷やし担々麺なんだけど、起きたばっかりじゃ食べられないでしょ? パンで良い?」


 冷やし担々麺かあ〜! 辛い物を食べてシャキッとしたい気もするな。


 僕は冷やし担々麺をリクエストして、椅子に座った。 ナメくんも、頭のぼんぼりを変形させて背中に付け『カタツムリ』に擬態して、机の上でお行儀良くしている。


 ……以前書いたが、母はナメクジ嫌いなので、ナメくんは、母の前ではいつもカタツムリのふりをしているんだ。


 僕は担々麺、ナメくんはレタスを食べ終え、ふと考えた。


 ……『暗躍者クリープス』って、こんな時に『直接』して来る事は無いのかな?


 そう言えば、以前も狭間さんが目を離した隙に襲って来たっけ……。


 ……! もしかしたら、狭間さんは今でも教室で『暗躍者クリープス』の警戒をしてるのかな?


 僕はナメくんバイクで、学校に行ってみる事にした。



 ……ナメくんバイクでホバリングしながら、窓から教室の中を覗こうとしたら……


 既に窓からこちらを見ている狭間さんが居た! ……何で、僕が来る事が判ったんだ?

 

「前にも言ったけど、私は『策定者フォーミュレーター』……輪音りんねくんの監視が仕事だから……」と言って、自分の席についた。


「一度聴こうと思っていたんだけどさ、狭間さん、いつ休んでるの?」


「……輪音くんに心配をかけたくないから言うね。 私も普通の人間だから、ちゃんと家に帰るし、休んでるよ。 ……今日は、偶々たまたま学校に来てただけ」


 狭間さんの話では、僕を監視する……と言っても私生活全てを監視しているのではなく、誰かの人生との干渉を、概念として監視しているのだと言う。 ……何だそれ? ……まあ、監視カメラみたいに全てを視られている訳じゃ無いようなので、ちょっと安心した。


 ……また『暗躍者クリープス』は、その名の通り『暗躍』するので、誰かの目がある時は『直接』して来ないそうだ。 挾間さんが起きている間は、挾間さんの眼窩に詰められた『被覆素子ライニング・エレメント』と眼鏡アイウェアで警戒され、挾間さんが休んでいる時は、別の何かによって警戒されていると言う。


 次いで狭間さんが「ただ、それはあくまでも『直接』だけ。 この前の『マイケル・ジンジャー』みたいに『間接』される危険はどこにでもあるから、くれぐれも気を付けてね……」……と言った。


「そ、それにしても、あれから一度も『暗躍者クリープス』は攻めて来ないね」……僕はちょっと気分を変えるつもりで、狭間さんに軽く言ったが、狭間さんは表情1つ変えず、こう言った……


「……『暗躍者クリープス』の『直接』は、日々増えている。 ……今日だけで312人の『変革者イノーヴァー』と2,865人の『変革者イノーヴァー守護使ガーディアン』が……死んだ……!」


 ……!

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