第7話『マトリックス』って映画、大好きなんだけど、まさかこんなにたくさんの続編が作られるとは、想像もつかなかった!

「狭間……さん……」……と言ってみたものの、あとに続く言葉が見付からない。


 狭間さんが怒っていない事だけは間違い無さそうだ。 しかし、僕が想像していた返事とは方向性が全く違うので、却って言い出しっべのこちらが言葉に詰まってしまった。


「輪音君……私が、輪音君をいつも見てた事……気付いて無いでしょ?」……と狭間さんが切り出した。


「……え? い、いや……あの……」


 ……正直に言うと、僕は狭間さんを気にした事は無かった。 ……そんなに広い教室では無いけど、僕の視線は、いつも『動いているもの』を追っていたように思う。 なので、あまり動きが無い狭間さんに視線が向く事は無かったんだ。


 ……ただ、それを言ってしまうと、せっかく『僕をいつも見てた』……って言ってくれた狭間さんに申し訳無いから、思わず口ごもってしまった。


「……気にしないで。 私、輪音君をいつも見てたからこそ『私を見ていない』事、判るの」


 ……やばっ! バレてる!


「……私は、自分から誰かに何かする事も無いし、誰かに何かをして貰った事も無い。 だけど、輪音君は、いつでも『誰かの為』に、一生懸命だった」



 ……ん?


 ……ちょっと待てよ……?



 僕が、いつでも『誰かの為に』…って思っていたのは……何年か前の話だ。


 ……そ、それに……この人……



 ……『狭間やすり』なんて人……このクラスに居たっけ?



 僕は、急いで教卓に行き、机の中の座席表を取り出して、席を見比べた。



 ……!



 ……座席表より……机が……ひとつ多い!



 ……狭間さんは上目遣いで僕を見詰めたまま……だ。


 これって……現実!?

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