S坂高校奇譚研究会のすべて! ー死に至る屋台

相田あざみ

プロローグ

 それは、夜になると、どこからともなく現れる屋台の話。

 人々はその灯りに惹きつけられ、屋台へと吸い込まれていく。


 何の屋台? そんなのラーメンに決まってるじゃない。たぶん、ラーメンね。


 人々はラーメンの匂いに惹きつけられ、屋台へと吸い込まれていく。


 え? こんな春先におでんなんてありえないわ。バカじゃないの?


 とにかく、人々はその屋台へと吸い込まれていく。

 屋台は毎晩にぎわっていた。一度食べると病みつきになり、その屋台から離れられなくなってしまう。

 その屋台は、知る人ぞ知る隠れた名店として、カルト的な人気が出るようになった。


 なんかお腹が空いてきた? どうでもいいから、話の腰を折らないでよ。


 しかし、この店には、恐ろしいもう一つの顔があったのだった。

 この店の虜になった客たちは、呪いにかけられて、やがて死に至るという。

 屋台に通いつめた客たちが、次々に謎の死を遂げたのだ。

 自殺、病死、事故死、死因はまちまちだった。共通点は、その屋台の常連客であること、すべて突然訪れた不可解な死であること。

 だから人はこう呼ぶようになった。

 死に至る屋台。


 いや、わたしがつけたんじゃないって。本当よ。うるさいわね。


 毒物の混入か、大規模な陰謀か、はたまた本当に呪いなのか、真相は誰にもわからない。

 ただ、わかるのは、一つだけ。

 死に至る屋台を見かけても、決して近づいてはならない。

 その匂いにつられて、口にしたら最後、もうそこから逃れることはできないのだから。

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