第7話 辻副院長は綺麗な人だ

私にも味方はいるようだ。

それが雲の上の存在だったとしても。

副院長同士の戦いと、院長VS事務長の戦い。

それと何故私に関係があるのか。


私は平穏無事に過ごしたいだけだ。



「山崎さん、昼休み中に副院長の部屋に行ってきて。呼ばれているわよ」


仕事中の私に、師長は声をかけた。


もちろん、看護師の副院長とやらだ。裏の人間。どういう人だろう。

外来に掲示されている副院長は医師のみで、もちろん裏にいる看護師の副院長や事務長の名前はない。


緊張した面持ちで副院長の部屋のドアをノックして入ると、美人な女性が座っていた。

艶々の髪は長くて1つにまとめられており、スタイルがいい。身長は161cmの私と同じくらいだろうか。副院長は若く見える。若くて30代後半くらいだろうか。


「お話するのは初めてですね、山崎さん。辻(つじ)と申します。」


声も素敵だ。人を安心させる声。

最後に安心したのは、いつのことだろうか。


「覚えていただけるなんて嬉しいです。」


「今まで辛かったことでしょう。」


 私の目が潤んだ。


「ところで、本題ですが」


 辻副院長の笑顔か消えた。


「塚本先生に何をされましたか。個人的な事情があると思いますので、言えることだけで結構ですから。」


今までのことを洗いざらい話した。

私は泣いていた。


「そうでしたか。大変でしたね。実は、色々なところから苦情が出ているんです。塚本先生は頭の回転が早い人です。丸め込まれることが多いですから、皆さん後で気づくんです。意義がある人は、大体はあなたを呼び出した梶原副院長に丸め込まれるんです。」


「そうしたら、小川係長もあちら側の人なのですか。」


「小川係長は私の刺客です。簡単にはマインドコントロールされないと思います。」




 マインドコントロール。私もされていた。

 だから、私は塚本先生をあんなに好きだったんだ。

 そう、好きだった。だから私はおかしくなりそうだったんだ。


 でも、辻副院長はもっと素敵な人だった。美人で、安心感を感じて、優しげなオーラが出ているけれども、締めるところは締めていて。仕事の顔かもしれないけれども、いいなあと私は思った。

 私は一目惚れをした。

 でも、この想いは隠しておかなけばならない。

 







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