第18話 消えないscratch

第18話  消えないscratchスクラッチ


突然背後から聞こえた声に驚いた様子の3人に女性は、


「驚かせてすみません・・・私はサチと申します。いきなりですみませんが皆さんは旅をしてるのですか?」


「あ、はい・・・クロノス様の頼みで旅に出たばかりですが。」

(これって旅って言っていいのかな?一応各国を周るよう言われてるけど・・・)


「そうなんですね。すみませんがノーザンベースから早く出てくれませんか?」


「え!?な、なんで?」


「私たちは極魔獣について調査をしに来たんですよ。」


「俺たちもなんの理由も無しに帰るわけにはいかないんだ!」


「貴方達にどんな理由があったとしても、早いうちにここからほしいのです!もうここは!」


女性の気迫に押され、リュール達は一旦その場から離れ、来た港とは反対の港に向かって行った。


「あの女性、なんであんなに必死だったのかな?」


「うーん・・・私の予想だとあの悲劇について何か知ってるはず。」


「だが、あんなにも焦ってたし、もしかしたらぞ。」

(お父様は別の魔獣を放つからと言っていたがあの女に気づかれたのか?いやまさかな・・)


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 3人が港に向かって歩いている頃、跡が残ったままの道で、

「あの子達大丈夫かしら?少し焦りすぎたかも・・」


「・・・もう大丈夫?」


「ええ、もう、出てきても大丈夫よ。」


草むらにそう声をかけると、子供達が出てきた。そう、彼女は子供達を守るためにリュール達を離れさせたのだ。


「サチお姉ちゃん。あのお兄ちゃんたちは?」


「あの人達は旅人さんよ。」


「そーなの?」「剣持ってたよ〜勇者さんかな〜」


「念のためよ。もし、危ない人達だったら大変なことになるから。」


「はーい♪」「わかった〜」


「良い子達ね〜」

(あの旅人達には申し訳ないな。嘘をついてこの場から離れてもらったけど・・・この子達の為だもの。)

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 時刻は午後6時30分。港に着いたリュール達は、


「・・・やっぱりあの人は何か知っているはずだよ。」


「リュール、お前もそう思うか。」


「ああ、きっと何か隠しているだろう。」


「なら、戻ってみる?お兄ちゃん。」


「うーん・・・そうだね戻ってみよう。」


「・・・・・・・ぁ!」


「何か聞こえた!?」


「まさか!」


 そして3人は来た道を走って戻って行った。この先に待ち受ける事件など知る事も無く。

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 教会の地下にある紅錠こうじょうの牢獄でパラドクスは独り言を呟いていた。


「そろそろか。でも、いいのだろうか・・・あの魔獣を放つとは。まぁ、どうせ使い捨てにする予定だしな。奴が勝とうが負けようがどうでもいいからな。沢山暴れてこい。今からお前をする。」


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