終章 吊り橋効果で気になるあの娘を落とそうバレンタインデー大作戦♡ 栞奈の場合【朗読あり】※朗読URLは小説情報に記載してあります
第4話 栞奈の場合 その1
私の名前は
自慢じゃないけれども、学校の成績で他の人に後れを取るつもりはないわ。小・中のテストはほとんど満点。偏差値の高い高校に入ってからは、私より頭の良い人が何人も出てきて主席の座は譲ったけれども、上にいるのは両手で数えるほど。スポーツも音楽・美術や家庭科などでも、それは同じ。きっと負けず嫌いな性格のせいね。絶対に負けたくなくって、陰でものすごく努力をしたもの。
そんな私にとって唯一の汚点。それは私の後をずっとついて回る幼馴染の存在。そいつの名前は
高校受験の時も、あのブタが私と同じ高校に入ろうとしたから、私は付近で一番レベルの高い高校を選んでやったの。そうすればあのブタも諦めると思って。なのにあのブタ突然勉学に目覚めて。毎晩徹夜で受験勉強をしていた。お母さんに「耕作君の勉強も見てあげなさい」なんて言われて渋々付き合った。私の勉強もあったし、そのついで。正直、一生懸命勉強しているブタの姿は嫌いじゃない。勉強中は集中していたから気にしなければいないのと一緒だしね。でも時々、話かけて来てサブイボ。「飲み物いるンゴ?」って「ンゴ」って何よ! ンゴって!
そんな努力もあってか、あのブタがまさかの高校一発合格。同じ高校に入りやがった。「また一緒に行けるね」なんて笑顔で言っておいたけれども、内心では落ちれば良かったのにって思った。だってまた3年間一緒ってさあ、もういい加減にして欲しい。でもブタの知能じゃ高校生活は無理ね。中退するんじゃないかしら? なんて思っていたけれども、意外と頑張るのよね。落第ギリギリでも、なかなか試験は落とさないの。赤点取っても補修で凌いだり、ブタなりの努力はしていたみたい。余裕があった私は、ノートを貸してあげたりして、一応表面上は応援してあげたわ。クラスは一緒じゃなかったから、学校生活は平穏だったし、関わらなければいいのよ、関わらなければ。ブタを気にしないように、私はバレーボールとバドミントンの2つの部活を掛け持ちして、県大会に出場。優勝は逃したものの、友達や仲間と良い思い出を作ったわ。そう言えば一度、あのブタがテストで予想より遥かに良い点を取った時に、私にご褒美をおねだりしてきて。秘密を一つ教える事になったの。
「その大きな二つの膨らみのサイズは幾つンゴ?」
「はあ? 死ねよブタ」
思わず本音が漏れちゃった。
「ありがとうございます!」
えっ、なんかお礼言われたんですけど?
「冗談、じょうだンゴ。指輪のサイズは幾つンゴ?」
「指輪? 多分10号かな」
「10号ンゴ~、ンゴ~」
ブタがブヒブヒ言って喜んでるっぽい。まいっか。
あのブタが追って来られないよう、高校以上にレベルが高い大学を選んだわ。専攻は薬学。偏差値的にも高いけれども、学力より専門知識が求められる。何かの時にその知識が役立つかもって思って。ま、ブタに合格は不可能ね。そうして予定通り、ようやくあのストーカーから解放されたの! 私は自由よ! テニスサークルに入って人生初の彼氏を作ったわ。あ、あのブタ私と付き合っているつもりっぽいんだけれども、私はそんな気全然ないから!
大学一年間は本当に充実していた。勉強も楽しかったし、スポーツも。それにサークルの打ち上げも。合コンにも何回か行ったわ。彼氏が出来たのは、そんな集まりの中で。大学が終われば一緒に遊びに行って、家に帰らない日も多かった。親には少し言われる時もあったけれども、基本的には放任主義の家庭だし、もう成人も近かったから、口うるさく言われはしなかったかな。ただ「耕作君、受験勉強頑張っているみたいね。あなたも見てあげてね」って言うから、あまり気乗りしなかったけれども、豚小屋に行ってブタの面倒も見たわ。人畜無害なペットだと思えば、それほど苦にはならなかったし。あのブタに対する感情を数値化するなら、不快感6割、空気のように気にしない3割、ペットみたいでかわいい1割。ってところかしら? ブタが私と同じ大学に入るために頑張ってるなんて言うから、「違う大学で良くない?」暗に「来るな!」って言ったんだけれども、ブタに人間の言葉は通じなかったみたい。逆に頑張っちゃった。勉強中に「ンゴンゴ」話しかけてくるのがイヤで狸寝入りしていたら、毛布を掛けてくれるのはいいんだけれどもさあ。その後耳元で荒い息しながら、髪の毛撫で回されて! フガフガンゴンゴ言いながら髪にチュッチュとキスする音がするの! もうサイアク! もし起きていたら、っていうか狸寝入りしていなかったら、本気でぶっ飛ばしていたかも。この時点で不快感は7割にアップね! 机に突っ伏していたから顔は見られていないと思うけれども、その時の私はきっと不快感丸出しの表情をしていたと思うわ。翌日、すぐさま髪の毛を切りに行ってさっぱりした。中学生ぐらいからずっと伸ばしていたんだけれどもね! 殺意の波動に目覚めそう! ってか目覚めた! あのブタいつか殺してやるわ! ええ絶対によ!
そして1年が経ち……まさかの、ブタが私と同じ大学に合格。マジか! ストーキング能力高すぎ。「栞奈が勉強を見てくれたおかげンゴ。ありがとンゴ!」お礼を言われるのは悪い気はしないわ。って私、墓穴掘った? 今の大学には彼氏もいるのに。あのブタがいたら恋愛の邪魔。いつもみたいに纏わり付かれたら、私の恋愛はどうなるの!?
ブタから電話が掛かってきたのは、そんな大学受験が終わった2月上旬だった。
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