第13話 地獄の中の華

華菜枝の中で忘れていた地獄のような苦しみが涙と共に溢れ出す。


辛い記憶が、脳裏に深く絡みつき解けない棘が深く深く心の奥を抉り傷を付け血を流す。その傷は永遠に癒えることを知らず、ドロドロと醜い憎しみの感情だけを幾重にも幾重にも重ね悪臭を放ち毒の華を撒き散らす――――。


既に服部は沙那恵と深い間柄であることを知り1度は落胆するも、あらゆる手段を使い服部の気を引こうとしていた、あの頃。時に大胆に、そして時に、か弱き女を演じ涙を流した――――。


心の中でも常に泣いていた…あの頃。偽りすぎた、もう1人の自分の姿に快楽を得ていた。


「…これが本当の私よ――――」


偽りの自分を演じ続けるうちに、何時しか本物と偽物の区別がつかなくなり後戻り出来なくなっていった――――。


そして華菜枝の心は完全に崩壊した。


本当は、ただ愛されたいだけ…甘えたかっただけ。自分という存在を認めてほしかっただけなのに――――。


運命の歯車は容赦なく廻り続け、毒の華は弱った心を養分に成長を続ける。


小さな勇気の欠片さえ、あの時あったなら…何か切っ掛けさてあれば変われたかも知れない――――救われていたかも知れない。


「そんな勇気·····私にはなかったもの」


崩れ落ち身体を受け止めてくれる者は誰一人としていない――――。


「…この呪われた運命に歯向かうなんて…無力な私には出来るはずがない――――」


救いを求めても誰にも見向きもされない辛い現実が蝕み続ける心の闇を深く深く広げていった。


弱々しく投げた言葉は虚しく中を切り、救いを求めて伸ばした手は穢れた大人達の手により阻まれ落ちていく――――。

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