第24話 隣人3

「あー・・・」

なんか久しぶりな感じがした。

たった一日時間を置いただけなのに

とても遠くに感じた。

“あの”部屋に入ったのが・・・

ここで藤井さんと作業したのが・・・

「藤井さん・・・」

なんか二日前の朝のように藤井さんがあいさつをしてくれるような

そんな気がしていたが

そこには誰もいない・・・

わかっていたことだがなんか

こう・・・・

胸が締め付けられる。

せっかく今朝はあんなにポジティブな気持ちが沸き上がっていたのに

この場所はやはり俺をもういちどネガティブへと引き戻してくれる。

さっきまでの普段の暮らしとはかけ離れたそんな世界

それが【特殊清掃】だったと改めて教えてくれる。

しかもだ

この場所は特に俺の気持ちを落としてくれる

ある意味スペシャルな場所らしい

外観や雰囲気

初めてみたときはただのノスタルジーであった

だが“あの”部屋の状況をみてから

俺はずっと・・・

「あー・・・やめやめ」

深淵の淵暗闇に飛び込みそうな心を押しとどめる。

そうまだこんな時間・・・

現場についただけのそんな時間

今からこんなネガティブな気持ちにどっぷりと浸かっていたら

今日一日をまたあらぬことで考えを埋め尽くし

明日から気分の悪い朝を過ごす。

今朝のように

普段というありきたりな日を過ごして

いつもみたいにただ仕事のことだけを現場では考えて

帰った時にはシャワーで体を洗い流し

食事をして

楽しみにしていた動画をみたり映画を見たり

そしてFPSでいいところまでいって気持ちよくなって

満足した気分でベットに入る。

そんな時間を繰り返して

繰り返して・・・

普段を生きるのだ・・・

ガチャ・・・

「!!」

ドアの物音

しかし“あの”部屋は目の前

ドアはピクリともしない

そして

キーーーガチャン

その音の方に顔を向ける

するとそこには

「おにいちゃん!!」

隣のおばさんが声をだしながらこちらに向かってきていた。

「どうも」

そういっておばさんに頭をさげた。

「おにいさん今日はひとりかい?」

そういって周りを見た。

それに

「あ・・・えー・・・そうなんです」

なんとなく言葉に詰まりながら答えた。

その様子にすこし首をかしげるおばさん

しかし

「そうかい!昨日はきてみないだったからもう終わったのかなって思ったんだけどね」

とおばさんはいう。

「昨日はちょっと違うことがありまして」

ぼんやりとぼやかして伝える

「そうだったのかい?一昨日いたでしょ?差し入れ!持て来たのよ!!」

そういって手に袋を渡してきた。

「え!?いや!そんな悪いですよ!!」

「いいの!いいの!!本当は一昨日のおにいさんの分もあるけど・・・いないならおにいいさんが食べてちょうだい!」

中身はコーヒーやお菓子がはいっていた。

「本当に悪いんで!」

そういって手に渡された袋をおばさんに近づけるが

「ほんとにいいから!!」

強引に胸に押し付けられた。

「あ、あの・・・ありがとうございます」

このまま返すのも悪いと考えてそのまま

おばさんの厚意に感謝してそのままもらうことにした

「でも、今日くるとよくわかりましたね?」

さっきおばさんが言った。

「昨日で作業が終わったとおもった」その言葉

もし一昨日で終わっていたら?

おばさんがただお菓子やコーヒーを飲めばいいだけの話だが

どこかまるでもう一度誰かがくることが分かっていたような

そんな気がしていた。

「いやね、昨日いなかったから部屋の中かな?って扉たたいてみたんだけど・・・」

そういって“あの”部屋のドアを見た。

「返事がなかったから誰もいないかなって戻ろうかなって思ったけどためしにね?」

とドアノブをみて

「悪いとは思ったのよ?でも開いたからね?」

「え!?」

驚いたそんなはずは!?

俺の動揺とは裏はらにおばさんは話を続ける。

「中覗いたらさ・・・匂いもすごいし、部屋もまだかたついてないし、まだ来るんだなって思ってね~」

「あ!あの中にはいいたんですか!?」

「いや本当に確認のためよ!悪気はなかったのよ!!」

「いや・・・あの本当に開いたんですか?この部屋!?」

「ええ、開いたわよ」

たんたんと話すおばさん。

そんなはずはないのだカギはなにかあっては困るのでしめて帰るのが習慣だし

あの時は藤井さんもいた。

一連の流れで俺もそしてたぶん藤井さんも確認したはずだ

心に焦りが生まれる。

それが本当なら仕事として俺はやらかした

そんな仕事に入る前から失敗をしたことに落胆をしていた。

「それにしてもここの人は本当におかしな人だったんだね・・・」

おばちゃんがいう。

「え?」

「いやね、部屋見たら写真かい?たくさん落ちていて悪いなとは思ったけどね?一枚だけ拾ってみたらなんかさ、女の人の顔?潰されていて気持ち悪くてね・・・」

「写真ですか?落ちてましたか?」

「あれかい?写真はあとでかたつけるのかい?まだたくさん落ちていたから?」

「そんなはずは・・・」

「え?なにかあったかい?やっぱりまずかったかい?」

「いいえ、あの・・・」

「そうよね、ごめんに勝手に入ることして!」

そういって顔の前で手を合わせた。

「いや、あの戸締りしてなかった私たちの責任なので」

「まぁ、それでもね、ごめんね」

もう一度謝り

「じゃ、私は部屋に戻るね!今日も頑張ってね!」

そういっておばさんは自分の部屋のドアノブをとり

ガチャ・・・キーーーガタン

音をたてて閉まった。

それを確認してすぐ

“あの”部屋のドアノブを握りしめた

ガタ!ガタガタガタガタ!!

なんども押引きを繰り返すが扉は本当にすこし

ほんのすこしだけ動くだけで開くことはない

そしてカギを取り出してその鍵穴に差し込み

カッチン

と音開錠の音をたてた。

そしてもう一度扉を引いた。

ガチャ・・・

扉が開き中から独特な匂いをあふれ出した

「どうして・・・・」

いろいろなことを考える。

だが混乱はしている。

だって

おばさんは「開いた」と

中に入ったと・・・

しかし

今確認したら

御覧の通りな状況で開いてるところか

鍵すら開いてなかった。

わからなくなり天を仰ぐ

しかし

「大家さん?もしかしたら状況を確認に?」

なくはない。

それならさっきの話も腑に落ちる。

そしておばさんはたまたま大家さんがいないときに中に入った

そうに違いない。

そのあと大家さんが鍵をしめて帰った

だから今開かない。

そうきっとそうだ・・・・

自分を納得させる理由を見つけて

それで自分を落ち着けた。

そうしないと・・・・

「とりあえず準備しようか・・・」

完全に納得したわけではない。

しかしそうしないといけない

そんな気がした。

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