7.ゲームセンターで。










「ゲームセンターなんて、本当に久しぶりだな」

「私も、かな」



 街を歩いていると、親父が唐突にゲームセンターに入ろうと提案してきた。

 恵梨香さんも乗り気だったので入店したのだが、何故にゲームセンターなのか。もしかしたら、俺と絵麻のことを気遣ってくれたのかもしれなかった。


 そう考えることにする。だってそうでないと、立派な大人がリズムゲーをノリノリでやってることに説明がつかない。

 俺は親父と恵梨香さんが仲良く遊んでいるのを眺め、そう思った。



「ねぇ、お兄ちゃん……?」

「どうした? 絵麻」



 苦笑いしていると、義妹が遠慮がちにそう声をかけてくる。

 返事をすると、彼女は視線をある方向にやった。

 それを追いかけた先には――。



「アレがしたいのか?」

「……うん。だめ、かな?」



 俺は不安げな絵麻を見て、首を左右に振る。

 そして笑った。



「駄目なわけないだろ? 行こうぜ」

「……うんっ!」









 ――で、俺と絵麻は狭い空間に二人きりになっている。



「小学生の頃、瀬奈と撮った以来だな。――プリクラ」

「…………あ、野川さんとは撮ったんだ」

「え、なに。いまの間は……?」



 身を寄せ合っている義妹がなにやら不穏な言葉を口にした。

 だが、それも一瞬のことで。絵麻は「なんでもない」と笑うと、不慣れな手つきで機械を操作し始めた。そして、しばしの間を置いて――。



「これで、良いのかな?」



 プリクラ機から、可愛らしい音声が聞こえた。

 どうやら上手くいったらしい。なので、俺と絵麻はひとまず……。



「え、どんなポーズを取ればいいんだ!?」

「あ、どうしようお兄ちゃん!?」



 二人そろって、寸前に困惑していた。

 普段はこのような遊びに興じない俺たち。当然ながら、正解と思しきポーズだって思いつかないわけで、困った末に俺が取った行動は――。



「ええい、絵麻!!」

「ひぅ!?」



 ――絵麻を、全力で抱きしめることだった。


 短い悲鳴を発しながら、縮こまる義妹。

 俺も顔が熱くなった。そして、硬直して撮影終了。



「…………」

「…………」





 その後、なにやら操作があったけど。

 俺たちはしばらく無言だった。




 



 

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