7.ゲームセンターで。
「ゲームセンターなんて、本当に久しぶりだな」
「私も、かな」
街を歩いていると、親父が唐突にゲームセンターに入ろうと提案してきた。
恵梨香さんも乗り気だったので入店したのだが、何故にゲームセンターなのか。もしかしたら、俺と絵麻のことを気遣ってくれたのかもしれなかった。
そう考えることにする。だってそうでないと、立派な大人がリズムゲーをノリノリでやってることに説明がつかない。
俺は親父と恵梨香さんが仲良く遊んでいるのを眺め、そう思った。
「ねぇ、お兄ちゃん……?」
「どうした? 絵麻」
苦笑いしていると、義妹が遠慮がちにそう声をかけてくる。
返事をすると、彼女は視線をある方向にやった。
それを追いかけた先には――。
「アレがしたいのか?」
「……うん。だめ、かな?」
俺は不安げな絵麻を見て、首を左右に振る。
そして笑った。
「駄目なわけないだろ? 行こうぜ」
「……うんっ!」
◆
――で、俺と絵麻は狭い空間に二人きりになっている。
「小学生の頃、瀬奈と撮った以来だな。――プリクラ」
「…………あ、野川さんとは撮ったんだ」
「え、なに。いまの間は……?」
身を寄せ合っている義妹がなにやら不穏な言葉を口にした。
だが、それも一瞬のことで。絵麻は「なんでもない」と笑うと、不慣れな手つきで機械を操作し始めた。そして、しばしの間を置いて――。
「これで、良いのかな?」
プリクラ機から、可愛らしい音声が聞こえた。
どうやら上手くいったらしい。なので、俺と絵麻はひとまず……。
「え、どんなポーズを取ればいいんだ!?」
「あ、どうしようお兄ちゃん!?」
二人そろって、寸前に困惑していた。
普段はこのような遊びに興じない俺たち。当然ながら、正解と思しきポーズだって思いつかないわけで、困った末に俺が取った行動は――。
「ええい、絵麻!!」
「ひぅ!?」
――絵麻を、全力で抱きしめることだった。
短い悲鳴を発しながら、縮こまる義妹。
俺も顔が熱くなった。そして、硬直して撮影終了。
「…………」
「…………」
その後、なにやら操作があったけど。
俺たちはしばらく無言だった。
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