6.騒動後。










「お兄ちゃん、大丈夫……?」

「いや、大丈夫だよ。でもごめんな、めちゃくちゃになって」

「そんなことないよ! すごくカッコよかった!!」

「かっこよかった、ねぇ……?」




 ショッピングモールから少し離れた公園で。

 俺と絵麻は、二人並んでブランコに揺られていた。

 あの後の事の顛末を簡単に説明すると、結局は周囲の大人が助けに入ってくれた、という感じだ。警備員のオジサンを呼んでくれた人がいて、間もなくあの青年は連行されていた。対して俺はと言えば、途端に膝から力が抜けてへたり込んでしまった、と。


 なんというか、最後の最後にカッコがつかなかった気がする。



「お兄ちゃんが来てくれなかったら、私どうなってたんだろ」

「大丈夫だったんじゃないか? 警備員さんもきたんだし」

「むぅ、そんなことないもん! ひどい目に遭ってたよ!」

「そ、そこ力説するのか……?」



 俺が否定すると、躍起になって断言する義妹。

 その倒錯した様子に、思わず苦笑いしてしまった。すると、



「そういえば、お兄ちゃんどこに行ってたの?」



 そこでふと、彼女はそう訊いてくる。

 俺は絵麻のその言葉を聞いて、手元にあった紙袋の存在を思い出した。



「そうだった。これ、渡さないと」

「…………え?」



 立ち上がり、義妹の正面に立つ。

 そして、彼女の細い肩に優しくそれをかけてあげた。



「これって、マフラー……?」

「うん。俺からの、クリスマスプレゼント、ってことで」

「クリスマス、プレゼント……」



 桃色の毛糸で編まれた、愛らしいマフラーを見て。

 絵麻は少しだけ呆けた後に笑った。そして、



「ありがとう、お兄ちゃん!」



 そう、真っすぐに言うのだった。












 ちなみに余談だが。



「ぶあっくしょい!?」

「あ、お兄ちゃんコート返すよ!?」

「お、おう。そうしてくれると、助かる……」



 マフラーで程よく暖を取れた絵麻。

 彼女はコートを返してくれたのだが、どうにも……。




「う……!」




 この短時間で染み付いた義妹の女の子らしい香り。

 それに包まれる感覚は、どうにも慣れないのだった。



 





――――

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