2.まさかの接触。










 終業式が終わって、全校生徒が下校することになった。

 俺は雪の降る外をぼんやりと眺めながら、生徒玄関に突っ立っている。



「しまったなぁ。傘、忘れた」



 しんしんと降り積もる雪。

 俺は深く、白いため息を漏らしていた。

 今朝は少しばかり慌ただしく、折り畳みのそれを忘れてしまったのだ。なのでしばらく、足止めを喰らっている。まぁ、すぐに止むだろうけど……。



「傘、忘れたのですか?」

「そう。まぁ、すぐに止むだろうけど」

「なるほどです。それなら、私とお話しませんか?」

「あー、暇つぶしにはなる――――ん!?」



 ちょっと待て。

 俺は今、誰と会話しているんだ。

 というか今の声、どこかで聞き覚えがありまくるのだが……。



「どうしました?」

「え、えぇ? 砂城……さん?」

「はい。そうですけど」

「…………」



 そして、現実を目の当たりにして硬直した。

 だって俺の目の前に、あの高嶺の花がいたのだから。しかも、こちらに話しかけて小さく首をかしげていた。なにその仕草、可愛いんですけど。


 ……って、そうじゃない。

 どうして、砂城絵麻が俺に話しかけたんだ!?



「ど、どうして……!?」

「どうして、とは。もしかして、ご迷惑でしたでしょうか」

「いや、そんなことはなくて……!!」

「………………?」



 ――ヤバい。

 こっちがあまりにも挙動不審だから、不思議そうな顔をされてる。

 でも、こんなのどうしようもないだろう。憧れの対象から不意打ちで、突然に声をかけられたのだから。キョドってしまうのも無理はない話だった。


 どうにかして、話を繋がないと……!



「ど、どうして俺に声を?」



 そして、とっさに出てきたのはそんな言葉。

 すると砂城は、少し考えてからこう口にするのだった。





「私、貴方に興味がありましたから」――と。





 …………へ?




 いま、砂城はなんて言った。

 俺に興味があった、だって言ったか?



「えっと、なにかの冗談――」

「いいえ。私は冗談の類が得意ではないので」

「………………」



 沈黙。

 俺は彼女の言葉に、声を失った。

 そして――。



「あ、俺もう帰るわ!」

「え? あの、まだ雪――」

「それじゃ!」



 完全なる敵前逃亡!!



 俺は全速力で、雪の降る外へと駆け出した。

 ただ、最後に背中に投げかけられた砂城の声は耳に届く。




「また、明日……!」――と。








――――

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