僕の見た霧の中には夢の跡

おくとりょう

波間で揺れる月にあらわる

 そこは港。夜の海。

 暗い水面がゆらゆら揺れる。そこに映るは丸い月。にじんで、ぼやけて、白く光る。


 それは静かな夜のこと。

 チャポチャポ、チャポと。岩に打ちつけ跳ねる波。囁くような小さな音が穏やかな闇に弾けて消える。


 そこへ浮かぶは黒い影。雷のように突然に。

 薄く漂う白い霧。波打つ海が盛り上がり、大きな影が姿を見せる。ぶわぁっと広がる潮の香り。荒ぶる波が岩に砕けて、音と香りを辺りへ散らす――。


 夜凪は終わり、風は巡る。誰も知らない月の下で。

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