一肌脱ぐえっちな先輩

 階段を降りてくる。

 このままだと篠原にバレる。俺と先輩の同居が! そんなのバレたらドン引きされるだろうな。しかも『ご主人様』と呼ばれてるし、下手すりゃ通報案件だ。


「篠原、すまない。ちょっと料理していてな……戻らないとなんだ!」

「え、そうなの? 手伝おうっか?」

「いや、それは……大丈夫だ」

「遠慮しなくていいよ。私、これでも料理得意だし~」



 マジか。篠原ってアイドルなのに料理が得意なんだ。それはそれで腕前とか気になる。いや、そうじゃない。今はこの場を切り抜けないと!



「また今度にしよう。時間がある時の方がいいだろ?」

「ほんとー! じゃあ、約束だよ、指キリげんまん」


 小指を差し出してくる篠原。

 えっ、もしかして……指キリしないとダメなヤツ? というか、篠原と指キリ……それってつまり、あの細くて綺麗な指と接触するということ。



「……難易度高いな」

「難易度? あ~、いいよ。気にしなくて。ほら」



 意外にも、篠原の方から俺の指に絡めてきた。積極的かっ! わぁ……篠原の指ほっそいなぁ……。そして、小指と小指が絡まっていた。



「……」



 俺は言葉が出なかった。



「指キリげんまん嘘ついたらハリサンゼンボンねっ」

「さ、三千本!? なんか多くね!?」

「かもね。じゃあ、またね、紗幸くん」


「……篠原、指……」


「……あぁ、ごめん。なんか手が震えて……離れないや」


 困惑する篠原。

 その顔は真っ赤で今にも爆発しそうだった。そんな顔をされたら、こっちも照れるってーの。いやだが、このままもまずい。名残惜しいが、早く別れないと。



「ま、またな」



 俺の方から指を離す。

 篠原は小指を大事そうに握って走り出していく。そ、そんな嬉しそうにされるとは……アイドルってすげぇな。



「どうなされたのですか、ご主人様」

「……うおッ、せん、ぱいっ」



 びっくりしたぁ。

 篠原が帰ったタイミングで先輩が声を掛けてきた。



「ど、どうしてそんな驚くんです? 誰かと話していたんです?」

「あー…ご近所さんとね」

「なるほど、ご近所付き合いもありますもんね」



 嘘は言っていない。

 ご近所なのは本当らしいし、うん、先輩に嘘はついていない。セーフだ。



「そ、そうなんだ。それより先輩……可愛いです、メイド服」



 きちんとカチューシャまで付け、白と黒のミニスカメイド服。メイド喫茶『フリージア』の衣装だ。それを着て奉仕してくれる先輩。マジ天使である。



「さっきも着ましたけどね」

「いや、先輩はいつだって可愛いんですよ」

「……も、もう。ご主人様ってば……そんな褒めれちゃうと一肌脱ぎたくなってしまいます」



 はだけた胸元を強調してくる先輩は、俺の目の前に最終兵器をズイズイと寄せてくる。………な、なんてギガマックス盛りなんだ!!



 もう我慢できないッ!



「先輩、注文・・があります」

「はい、なんでしょう?」

「メイド喫茶フリージアにもあるメニュー『耳かき』を所望します」


「承りです。では、ご主人様、リビングへ」



 手を繋ぎ、家の中へ戻っていく。

 なんて幸せッ!!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る