第5話 高校三年生であろうとも、ここまでコケにされれば(1)

「あら?」


「あらあら」


「神宮寺さんと彼氏さん、笑っているね?」


「ああ、和君が、お猿さんみたいにキィキィと大きな声で騒ぐから真宮寺先輩と今彼に大笑いをされちゃったよ。だからもう、キィキィ言うのは辞めようね。和君……。和君には由美がいるから大丈夫……」だからと。


 最後に一言多いい俺の近所、幼馴染の由美が呆れた顔で。


 やっぱり俺に、一言多いいことを俺に告げてくるし。


 俺の隣の美少女さま──。


 余り感情を前に出さない、山本加奈さまも、無神経に俺が沙紀と、元彼に車内で嘲笑いしていると告げてくるから。


 俺の心の中に募っている二人への不満、不快感……。


 そう、沙紀とアイツの今カレへの憎悪は収まりつかないから。


「うぎゃぁあああっ! うぉおおおっ!」と。


 俺はクラスメイトの山本と幼馴染の由美──。


 それと白いユーノスロードスターの車内で、お猿のように真っ赤な顔をしている俺のことを。


 自身のお腹を押さえつつ、ケラケラ笑う。


 俺のバカな元カノと今カレの二人へと聞こえるように呻り、吠えたから。


 四人の内の一人──。


 俺の家の隣、御近所さま、幼馴染さまの顔色が流石に変わったよ。


「か、一君……。いつまでもこんなところにいないで。もう帰ろう。早く」と。


 俺の二の腕を自身の華奢両腕で掴み、引っ張り急かし始めだした。


「や、山本先輩も。もう行きましょう。いつまでもこんなところにいても仕方がないですから」


 由美は俺だけではなく、山本にも早く帰ろうと急かし始めるから。


「ああ」と。


 俺が不貞腐れた声で、由美へと言葉を返せば。


「うん、分かった」と。


 山本も頷き歩き始めるから。


「フン!」と俺は鼻息荒く吐くと。


 由美に腕を引かれるまま、子供のように不貞腐れた顔をしつつ歩き始める。


 そしてバカップルが乗っている白いユーノスロードスターの真横に通りかかった寸前に。


 俺のことをまだ涙目で笑っている二人のことをジロリ! と睨んでやる。


 するとバカップルは阿保だから。


 俺の怒り顔を見て、更に笑い始めだした。


「あっ、ははは」


「わっ、ははは」と。


 俺が広島県内でも大変に大人しく、真面目で有名な、理数科もある高校へと通っているものだから。


 バカな俺の元カノのイケメン彼氏は、特に俺のことを侮りながら指までさす阿保な行動にでたよ。


 だからさ、俺、その阿保な県立K大の兄ちゃんの白いユーノスロードスターへと向けて、「ペッ!」と唾を吐いてやった。


「おい! クソガキがぁ! 何ー! 俺の大事な車に唾を吐いて、んだぁっ!」


 K大生のカッコだけの兄ちゃんは、阿保だから俺の喧嘩を直ぐに勝手くれたよ!


 だからそいつが罵声を吐きつつ、立ち上がろうとした瞬間に俺は。


 そいつの首の襟を掴む、なんて映画やアニメ、マンガじゃねぇからしねぇよ。


 あれは本当にヤンキーの喧嘩を知らない奴等が描いた! 書いたことだからね!


 本当に相手の襟元を掴むのは。


 自分がそいつよりも立場が上の時だけだよ。


 普通にヤンキー同士のガンのつけ合い、飛ばし合い。


『あぁ、あああっ!』


『ああ~』と呻り合い! 吠え合いになれば。


 その後は口喧嘩なんか、お互いしないよ。


 相手が近寄った瞬間に、直ぐに殴るか?


 俺の場合は、今回は?


 流石に警察沙汰になると不味いから。


 俺の掌の裏の甲を使用して、相手の顎に一発、ガン! と、素早く入れ。


 バカな丁稚の兄ちゃんが「うっ」と悲痛な声を漏らした瞬間に。


 そいつの顎の下──首元をグッ! と力強く握り。


 相手の首の襟を掴む要領で持ち上げる。


 みなも相手と口喧嘩になりそうになったら。


 いきなりワンパン入れるのが嫌なら、こうしないとダメだよ。


 でッ、ないと?


 相手が自分よりも年上とか、体格がよければ。


 向こうの方が勢いつくからね。


 最初に相手の首を握り、押さえる方が、相手は自分にビビッて大人しくなるから。


 その方が効率的なのだ。


 だから俺が二高生だからと思って、絶対に反抗をされないと、安易に思っていた沙紀の今カレ、大学生の兄ちゃんは。


「うぅ、うううっ。離してくれ……」


 と、呻ることしかできなくなった。


 だから俺は、自身の脳内で。


(ざまぁみろ! このクソ丁稚が!)と思いつつ。


「おい! 家庭教師の先生よ! 余り調子にのるなよ! 次にこの辺り……。俺の下校に引っ掛かる時間に車を停めているのを見掛けたら。新天地公園に溜まっている俺の昔の後輩やツレに言って。お前の車をボコボコにするように言うからな、わかったかぁ、クソボケがぁ!」


 俺は沙紀の彼氏の喉元を相変わらず、強く握りながら罵声を吐いた。


 いくら沙紀とアイツ彼氏の顔色が変わろうとも、お構いなしだ。


 まあ、本当は彼女連れの男にこんなことをするのは。


 俺自身も不本意ではないけれど。


 流石に公衆の面前で元カノと。


 俺から沙紀をNTRした癖に侮り、調子よく嘲笑う。


 沙紀の家庭教師もしている大学生の男……。


 二人に対して俺は堪忍袋の緒が切れ、憤怒してしまう。


 でも、俺も中坊までは、地元でもわりと有名なクソガキだったから。


 沙紀の彼氏の首元を握る行為をやめ──。


 ドスン! と。


 バカな男を解放してやると。


 俺は直ぐにそいつの髪の毛を鷲掴みにして。


「お前~、と言うか先生だったけぇ~? ちょうどえぇ、わぁ? 俺、お前と話しがしたかたし。先生も俺と喧嘩がしたいのだろう……。だから裏へこいよ。相手をしてやるから」と。


 俺は沙紀の彼氏に呻りつつ、吠え。


 コイツ!


 そう、俺から彼女を奪った男に対して。


 俺は生まれて初めて怒りをあらわにしながら、沙紀の彼氏の髪を引っ張りつつ。


 俺は沙紀の彼氏が。


「お、おい! 離せ! 俺の髪を!」と。


「俺がお前を馬鹿にしたのが悪かったから許してくれ。頼むから……」、


「さ、沙紀……。警察に。警察に電話をしてくれ。不良学生に絡まれているから」と。


 自分達が、俺に喧嘩を売ってきたのにさ。


 沙紀の彼氏は、アイツに警察を呼んでくれと嘆願を始めだした。


 だけど俺はアイツの彼氏を許す気は毛頭ないから。


 更に沙紀の彼氏の髪を強引に引っ張りながら。


 沙紀の方へと視線を変え。


「沙紀~、警察に電話するならば、してもいいけれど。沙紀、お前! 俺の成績を知っているよな? お前等が俺に喧嘩を売ってきたのに! 俺の人生を台無しにしてみろ! 俺はお前のことを絶対に許さねえからなぁ」と。


 俺が元カノ沙紀へと、ガル、ルルル! と呻り、吠えれば。


「か、和君ちょっと待って! 待ってよ~! これ以上は、新宮寺先輩の彼氏にしたら駄目だよ。大変なことになるよ!」と。


 俺のことを冗談交じりで煽るだけ、煽った、由美なのだが。


 俺がマジで切れ! 憤怒し始めるから!


 由美の奴は、自身の顔色を変え。


 俺の背後から抱き付き、慌てて本気で止めに入る!


 由美の奴は更に、こんな言葉も付け加えながら。


「新宮寺先輩は! 和君の元カノでしょう! なのに、今の彼氏さんと車の車内から和君のことを侮り。嘲笑い。煽って! 新宮寺先輩は和君が、中学生までは、地元や区内でも手が付けられないほど有名なヤンキーだったことを知らないの?」と。


 あいつは声を大にして叫びながら、沙紀へと尋ね。


「新宮寺先輩! 私達が和君を押さえている間に、彼氏と何処かへと行ってください。本当に大変なことになる前に! 和君が大学いけなくなったら、新宮寺先輩はどうするつもりなのですか! 本当にいい加減にしてください! この場から早く立ち去ってください!」


 由美の奴が俺のことを背後から抱き締めつつ、絶叫交じりで。


 沙紀と、アイツの彼氏にこの場から立ち去れと告げるのだが。


 俺は歩行者達が立ち止まって、こちらの様子を騒めきながら様子を窺ってこようが。


 もうお構い無しだよ。


 俺は中坊の頃のように。


「由美、離せぇっ! こいつだけは、許さねぇ、しばいたる!」と。


 俺は相変わらず呻り、吠えつつ。


 俺の背後から抱きつく由美を振り払い。


 沙紀の彼氏を殴ってやろうと試みる、と言うことはないから大丈夫だよ。


 流石にさ、俺が沙紀の今カレの大学生の兄ちゃんの喉元握り締め、持ち上げようと試みてから時間の方も経つ。


 そして俺の周りが警察沙汰になるかも知れないと騒ぎ始めれば。


 俺もあっさりと警察に通報しそうな、喧嘩もろくにしたこともないような。


 カッコだけのイケメン兄ちゃんの柔な顔を殴ることに躊躇い始めだした。


 だからそろそろ、沙紀の情けない大学生……。


 そして家庭教師の、大学生の兄ちゃんの喉元を握り込んでいる手をパッ! と離し、バカな二人を解放しようとすれば。


 パチン!


 パチンなのだ!


 それも沙紀の今カレから鳴るのではなく。


 相変わらず、ギャギャ、キッキッ! 吠え、暴れる。


 俺の頬から鳴るもものだから。


「「「…………」」」


 流石にこの場がシーン!


 静寂な空間へと移り変わっていく。



 ◇◇◇



「な、何をしやがる~! 山本~!」


 最初はシーン! と、静まり返った、この場! 俺の周辺なのだが!


 少し間が開けば、この通りだ!


 俺は沙紀の奴のバカな彼氏の喉元を掴む行為をやめ──。


 今度は俺のクラス、隣の席のショートカットがよく似合う美少女さまへと視線を変え。


 ガル、ルルルだよ!


 だって山本加奈が、中学生ガキの頃のように。


 沙紀とアイツの彼氏に対して呻り、吠えていた俺の頬をパチン! と叩きやがるから。


 今度は山本加奈へと呻り、吠えるのだが。


 山本は自身に呻り、吠える俺に対して、恐れ慄くことなどせずに。


 俺の鋭い眼光をあいつはジロリと睨み、弾き返してきた。


 そして山本加奈は自身の可愛い、小さな唇を開き。


「和也、帰るはよ」と。


 山本の奴は、先ほどまでの山田君ではなく。


 俺のことを和也と、沙紀の前で、重たい声音で名指しをすれば。


 山本加奈は自身の華奢な腕を俺の二の腕へと絡め、強引に。


 グイグイと引き始める。


「由美ちゃん帰ろう」と。


「神宮寺さん。余り、この辺りで彼氏にお迎えをしてもらわない方が良いと思う。この辺りは学園から近いから。先生達に見られる可能性もあるから。神宮寺さんも大変なことになるから」とも。


 呆然、唖然としている沙紀へと告げると。


「和也、行こう」と。


 山本加奈が再度俺に告げるから。


「うん」と俺は、何故か素直に頷き。


 俺の彼女のように振る舞う、山本加奈に手を引かれつつ。


 その場を後……。


 そう、何もなかったかのように振る舞いながら俺は、クラスメイトだけの関係? 山本加奈と。


 幼馴染の由美と三人で、その場──。


 俺の元カノ沙紀とアイツの今カレ。


 俺から沙紀をNTRした男の前から姿を消していく。


 それも少し間が開き、俺の荒々しい気持ちが収まれば。


 今度は俺の背から哀愁を漂わせつつ、ドナドナと帰宅の途につく。


 だって俺自身は、沙紀と別れたくて、別れた訳ではない。


 先ほど俺が何度か呟いた通りで。


 俺はアイツの彼氏の邪な策か?


 沙紀自身の邪な策かはわからないけれど。


 俺が多分、沙紀との別れを渋る、拒否をするだろうと思って。


 俺はアイツにうそをつかれ、騙されて別れた。


 だからさ、俺は未だに悲しいやら、悔しいやらで。


 俺自身の情緒不安定な気持ちが安定しないでいるから。


 俺の愚痴……。


 何故、こんな酷い出来事が起きたのか? の。


 俺の愚痴を先ずは、聞いてください。


 みなさん、お願いします。




 ◇◇◇



(お願い)


 レヴュー・星・感想・ハート等を軽い気持ちで頂けると励みになりますのでよろしくお願いしますm(_ _"m)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る