第20話 選ばれたエンディング

「節操なし男とは、まさか俺のことを言っているのか?失礼だな!!お前、まだ1年だろう?3年の俺に向かってなんという口の利き方だ!しかも選択肢だと?そんなものは必要ない!アメリアは俺の婚約者だと決まっている!!」


アーサーが青筋立てて、一人で激昂している。


本当によくしゃべる男ね・・・。

自分は周りに失礼なことをしまくっているくせに、自分がやられると怒り出すんだから。

節操がない自覚もないし、まだ私を婚約者だとか寝惚けたことを言っているし。


私がうんざりした目でアーサーを見ている間にも、カイルがアーサーの言葉を華麗にスルーしながら無駄なく動き回り、皆を誘導していた。


「はい、クロード様派はこちらへ移動をお願いします。あ、あなた方もクロード様派ですか?お目が高い。ささっ、こちらへ。節操なし俺様男派はいらっしゃいますかー?そりゃあいないですよねー。はーい、誠実な将来有望クロード様派の方はこちらへー。」


カイル、なんちゅう誘導の仕方をしてるんだか。

とうとう、『誠実な将来有望男』と、『節操なし俺様男』の二択になってるじゃない。

うわ、カイルの楽しそうな顔ったら。

ここぞとばかりにアーサーのことをディスりまくってるわ。


3分後、パーティー参加者は全員、会場の片側半分に移動完了していた。

もちろんマルチエンディング方式で、Aのクロードの婚約者バージョンを選んだ方々である。


予想通りとはいえ、Bのアーサー側・・・じゃなかった、節操なし俺様男側には誰も立ってないわね。

日本だと、面白がってわざとBに行く人とかたまにいるんだけど。

さすが貴族の子息と令嬢、ちゃんとわきまえててくれて助かるわ。


私が変なところで感心していると、結果を告げるカイルの大きな声がホールに響いた。


「ただいまの結果を申し上げます。良識ある皆様の選択の結果、エンディングはAの我らが生徒会長クロード様とのハッピーエンドに決まりました。拍手ー!!」


皆がつられて拍手をし出し、「わぁぁ」と歓声が上がった。


「それでは、エンディングをお楽しみ下さい。」


カイルが仕切り終わり、頭を下げ、照明係へ戻ろうと踵を返した。


「ちょっと待てー!!」


さっきまで1人で喚き続けていたアーサーだったが、ようやく結果が目に入ったらしい。

ふるふると震え、顔を真っ赤にしながら怒鳴り始めた。


「なんだ、この茶番は!!どうせ初めから結果を仕込んでいたんだろう!汚いぞ!!神聖なる卒業パーティーを台無しにした罪は重いからな!!」


いやいや、そもそもが余興の劇だから、仕込んであったものなんですけどね。

でも台無しにしたのはあなたであって、選ばれなかったのも自分の人望の無さなんだけど。

もうこの人どうするよ?


ヤケになって騒ぎ立てるアーサーを前に、私が辟易していると、突然会場の扉が音を立てて開き、よくとおる年配の男性の声が会場を包んだ。


「盛り上がっているようですね、諸君。」


思わず息巻いていたアーサーも黙り、声の主を確認する。


「学長!!」


生徒会長のクロードが真っ先に声をあげた。


学長だわ!!

きっとこの状況を見かねて出てきてくれたに違いない。

もはや救世主に見える。

お願い、なんとかして下さい。


扉の傍には学長と、その後ろにもう一人の男性が見える。


あれ?

あの人は確か・・・


「父上!?なぜ父上がここに!!」


アーサーが突然焦り、狼狽えだす。


そうそう、アーサーのお父さんの伯爵だわ。

最近は領地にいらっしゃるから、久しぶりに見かけたけど、なんだか昔の私の記憶よりとても怖い顔をしてる気が。


何が起きるのかと、その場の全員が成り行きを見守っている。

会場を、ピリッとした緊張感と静寂が支配していた。


しかし静寂はすぐに破られた。


「このバカ息子がー!!」


伯爵の怒鳴り声が轟いたからである。


卒業パーティーは親子の修羅場へと化した。


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