第10話 マルチエンディング採用です
数日後、クロード渾身の台本が出来上がった。
私達は放課後の生徒会室で、各自配られた台本を読んでいるのだが、それぞれ自分の台詞がわかりやすいように、あらかじめクロードが印を付けてくれている。
さすがはクロード、気が利いている。
それにしても、ざっくりと断罪劇について説明した後は、質問に答えただけだったのに、よくぞここまでお手本のような、『ザ・断罪劇』の台本が書けたものだと感心してしまう。
クロードは初めて聞いた話のはずだが、前世で読んだ、典型的な悪役令嬢の断罪返し小説みたいな出来である。
しかも、劇らしく少し大袈裟に脚色してあり、これならパーティーの参加者もすぐに余興の劇が始まったと気付いてくれそうだ。
台本の出来に満足しながら読み進めると、最後のページで異変に気付いた。
ラストが書かれておらず、急に尻切れトンボで終わっているのだ。
「クロード、最後の部分が書いてありませんが、一体どうなるんですか?」
メンバーを代表して訊いてみると、クロード自身まだ結末を悩んでいて、皆の意見が聞きたいらしい。
書かれているのは、ヒロインに対するアメリアの虐めが事実無根であり、アメリアは無罪だと証明されたところまでであった。
「僕が浮気したことを謝罪し、アメリアとヨリを戻すというのはどうだろう?」
と、すっかり浮気者モードのクロード。
「はんたーい。助けてくれたフレディにときめいて、アメリア様と新たにくっつくっていうのはどう?」
と、面白がってクロード以外を勧めるセレン。
「あの、アメリア様が男性に頼らず、自立して、たくましく女一人で生きていく!っていうのはどうでしょう?」
おおっと、珍しい。
エミールが率先して意見した上に、まさかのアメリア独り立ちエンディング!!
「それいい!カッコいいー!!」
セレンが嬉しそうに手を叩いて賛成している。
あれ?
フレディとくっつく案はもういいの?
それぞれ、どのエンディングがいいか意見が割れてしまった。
そこで私は前世のゲームを思い出した。
乙女ゲームって、何通りもエンディングがあって、自分で選べたんだよね。
それが使えるかも!
「どうせなら、ご覧になっているパーティー参加者の皆さんに、その場で決めて貰うっていうのはどうでしょう?」
私は提案してみた。
いわゆるマルチエンディング方式である。
「その場で決めて貰う?どういうことだい?」
意味がわからないといった様子のクロードに訊かれ、私は説明した。
「いくつか劇の終わり方を用意しておいて、エンディングの前に、この後の展開は○択です。皆さんは何番目のラストが見たいですか?って直接訊くのです。」
「うわ、面白そうですね!僕、照明だから、出ていって説明する役やりますよ。」
カイルがすかさず賛成し、斬新さが買われ、マルチエンディング方式に決まった。
またしても前世の記憶をしょうもないことに使った気がする・・・
でも面白ければいいか。
結局、その後3パターンのエンド候補が決まった。
①クロードが謝罪し、婚約破棄しないエンド
②守ってくれたフレディと恋に落ちるエンド
③アメリア独り立ちエンド
以上の3つから、その場で選ばれたものを演じることになったのである。
皆、画期的で盛り上がると喜んでくれた。
その分、練習が大変なんだけどね。
クロードだけが、アメリアがフレディと恋に落ちるなんて、たとえ劇でもイヤだと駄々をこねていた。
クロードはイケメンで完璧なのに、こういう可愛いところがズルいのだ。
思わずキュンとしてしまったじゃないか。
演じる私達でさえも、当日その時まで最後がどうなるかわからない状態に、ワクワク感が増していくのを感じていた。
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