第5話 記憶が戻ったみたいです
ふわりと意識が浮上する。
ここは・・・ベッドの上?
私、溺れたはずだけど、助かったの?
あの女の子も無事だといいんだけど。
ふと目に入った天井と照明に違和感を感じた。
病院にしては天井が高く、アンティーク調のランプが輝いているし、壁を見やれば、花柄の壁紙が目に入った。
あの壁紙、見覚えがある気がする・・・
頭がズキっと一瞬痛んだ。
私の部屋・・・?
しかし理亜の部屋は六畳で、白い壁紙だったはず・・・
戸惑っていると、少し年上だろうか、女性が部屋に入ってきた。
メイドさんのような格好をしている。
ここの病院は、看護師さんの制服がクラシカルなのかな?そんなはずないか。
なんて、今はどうでもいいことを考えていたら、看護師さんらしき人と目が合った。
私を見やり、私が目を覚ましていることに気付くと、彼女は驚いた顔をしながらこちらに駆け寄ってきた。
「お嬢様、目を覚まされたのですね!具合はいかがですか?痛いところは?私のことがわかりますか?」
一気に捲し立てられて、圧倒される。
ん?お嬢様??
『この人誰だったっけ』と思った瞬間、アメリアとして生きてきた過去を思い出した。
「マーサ?」
おずおずと答えてみると、
「私がおわかりになるのですね!良かったです。階段を踏み外された際に、頭を打たれたのではと心配しておりました。」
そうだった、確か劇のことを考えていて・・・
って言うことは、さっきの川でドボン事件は?
もしやアレで理亜は死んじゃって、理亜がアメリアに転生しちゃったってこと?
で、階段から落ちて、理亜の記憶が戻ったと。
だから2人分の記憶があるのか。
そっか、なるほどねー。
って!!
そんな、ゲームや小説みたいなことって!!
頭の中で一人で突っ込んでいたが、表面的には無言で難しい顔をしていたのだろう。
「お医者様は意識が戻れば大丈夫だとおっしゃっていましたが、やはり痛いところがおありですか?もう一度診ていただきますか?」
不安そうな様子のマーサに、
「大丈夫です。鏡ってありますか?」
と尋ねると、
「こちらにございますが・・・。」
と明らかに戸惑いながら手鏡を渡してくれる。
そうだ、私はアメリアなんだ。
つい遠慮をして敬語になっちゃったけど、喋り方に気を付けなくちゃ。
理亜の記憶とアメリアの記憶が一度に混じり、頭の中がグルグルしている。
とりあえず鏡を覗き込む。
そこにはプラチナブロンドの艶々とした髪に、緑色に輝く切れ長の瞳を持つ美しい女性がいた。
見慣れている顔のはずだが、思わず、
『超美人さんなんですけどー!』
と理亜の意識が叫ぶ。
突然思い出されたせいか、今のアメリアには理亜の感覚が強いようだ。
美しく生まれ変わった自分にテンションが上がり、目を輝かせながら自分の顔を色々な角度で眺め続ける私を、マーサが不審そうに見ている。
うん、ナルシストだと思われる前にやめよう。
その後、心配して様子を見に来た両親と弟相手に、
『パパさん、イケメン!ママさん、若すぎ!弟君、食べちゃいたいくらいの可愛さ!!』
と、理亜の意識が暴走し、10歳の弟のルイはアメリアに撫でくり回されて、嬉しそうに笑っていた。
マーサだけが、そんなアメリアの変わりように違和感を感じ、心配そうにじっと眺めていた。
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