道具屋での戯言
坂門
第1話 長いタイトルについてのあれやこれや
ここは中央都市にある小さな道具屋さん。
暇を持て余す
ふたりのおっさんが、どうでもいい事をおしゃべりしています。少し聞いてみましょう。
■□■
「なぁ、ドゥラス。気がついた事あるんだけどよ、言ってもいいか?」
「なんじゃ、あらたまって。気持ち悪い。言えばいいじゃろう」
「あのよ、すんげぇ長いタイトルってどう思う?」
「はぁ? 何が言いたい? 質問か?」
「そうそう」
「どうこうも何も思わんよ。それが何じゃ?」
「長いタイトルのメガヒットって無いと思わねえか?」
「知らんよ。ヌシと違って、ワシは詳しくないもの」
「それよ、それそれ。メガヒット狙うって事はさ、ドゥラスみたいな興味の薄い人も手に取らないとメガヒットにならないんだよ」
「で?」
「『勇者に追い出された無能なフリをしていた魔法使い、今度は悪役令嬢になって王妃を目指すけど、ドラゴンに襲われて凄い魔法の使い手だってバレちゃった』ってタイトルあったらどう?」
「え? それタイトルなのか? あらすじじゃろ?」
「だよな。長いタイトルのいい所ってさ、あらすじを読まなくとも内容が分かるんだよ。これってアドバンテージだと思わね?」
「良く分からんし、そんなタイトル覚えられん」
「そこ。長いタイトルに免疫のある人達には、あらすじ読まなくていいから手に取りやすい。でも、免疫の無い一般の人には特殊なジャンルとして敬遠されちゃうんだよ。だから、中ヒットはいっぱいあるけど、メガヒットには繋がらない。どうよ」
「何言ってんだ、ヌシは?」
「だからさ、メガヒットを狙うならタイトルは長くしない方がいいんだよ。逆に、小さく当てるなら長いタイトルの方が確率は上がる」
「みんなメガヒット狙うんじゃねえのか?」
「長いタイトルの時点でメガヒットの可能性は低いんだって、興味の薄い大多数が手に取りやすいのは短いタイトルなんだよ。タイトルの長さで、相手にするパイの大きさが変わってきちまうんだよ」
「?? 何が言いたいのか、さっぱり分からんぞ」
「だから、中央都市で道具屋やるのと、山向こうのザーゴ村で道具屋やるのではどっちが客が多い?」
「そんなもん、人の多い中央都市に決まっておろう」
「中央都市が短いタイトルで、ザーゴ村が長いタイトル。比べれば、訪れる人数が全然違うのは一目瞭然。ただ、中央都市はライバルも多く成功するかは賭け、勝てば大儲けが出来る。ザーゴ村では大儲けは出来ないかも知れないけど、一定数の顧客は確保出来るから安定した収入を得られる。そんな感じ」
「で、結局何に気がついたって言うんじゃ?」
「でっかく当てるならタイトルは短い方がいいよねって話」
「それだけ言えば良かろう。長々とどうでもいい話しやがって」
「何だよ、人がせっかく説明してやったのに⋯⋯あ、いらっしゃい! 買い取り? していますよ。バグベアーの皮? いいですよ。いくら? そうですね⋯⋯ドゥラス、いくらだっけ?」
「忘れた」
「え?! すいません。すぐ調べるんで、ちょっと待って下さい⋯⋯って、あれ? お客さーん!! ちょっと、待って!」
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