第25話 ふたつ星

ルームナンバー5022 午後10時56分

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開いたそこは、宇宙そら──

なのでしょうか?

優しい、濃い藍色の空には、

星あかり 月あかり



「これはすごい、まるで星の世界に来たみたいだ」


ドアを開けた陽司くんが驚きの声をあげた。


陽司くんの肩越しに見たそれは、まるで星々の中に浮かんでいるような私たち。

光量を絞ったフットライトだけの地上50階の部屋。

カーテンを引いていなかった2面の大きな窓ガラスの向こうは遮るものなんて何もない宇宙。


「ほら、来て、沙羅さん」


沙羅の右手を引いて部屋を横切り窓辺に立つと、地上のきらぼし、天空のきらぼしが迫ってくるようだ。


「私たち、宇宙に浮いているみたい。新宿でこんなにたくさんの星が見えるなんて」


窓に一歩、二歩と近づく沙羅さん。

そのまま宇宙に溶けてしまいそうで慌てて背中から抱き止めた。


「陽司くん・・・?」


「だめだよ、行かないでよ」


「── 行かない。どこにも行かないから」


ね?と微笑む沙羅の額に優しくキスをする。


こんなに純粋な人を、俺は。

俺はこの人に幸せをあげられるのかな。

人の道を狂わせてしまっていないかな。

この人のご両親を悲しませていないかな。


「そんなことを考えていたの?」


えっ💦

天下一品の独り言、この後に及んでの外漏れ案件!?!?!


慌てて身体を放すと沙羅さんは、にっこりと微笑んで俺の目とバチッとあった。


「どんとこい、なのよ」


「ど・・んとこい、なんだね」


「陽司くん」


「は・・・はい」


「私、あなたが好きです。こんな私を好きになってくれて、大切にしてくれて」


「何いっちゃってんの!俺が勝手に好きになったんだ。沙羅さんを一年も待たせて、連絡もしないで不安にさせた」


「いいえ。私たちには必要な一年だったの。私をここまで大切にしてくれるあなたの気持ちに私は答えたい、報いたい、です。だから ───」


「だ、だから ──?(ゴクリ・・・)」


「先にお風呂、失礼します!」


沙羅は香月の腕からスルリと抜け出すと部屋の奥へトコトコと数歩だけ歩き、ぽいぽいっとハイヒールを脱いでピタリと立ち止まった。


香月は急に止まった沙羅の背中をビクッと見つめていたが、突然クルリとこちらを向いた沙羅はにっこり笑い、


「覗いちゃだめよ」


と言ってバスルームへ消えた。


香月は閉じられた扉を見ながら、ヘナリとその場に座り込んでしまい。

沙羅が残したハイヒールをボーっと見ていた。が、


やがて、もうおかしくて仕方ないといった様子で、


「参った・・・本当にすごい。天下無敵だよ沙羅さん。俺、一生大切にするよ」


顔を両手で覆ってからパンっと膝を叩き立ち上がる。


「おい、覗いちゃだめなんだってさ。

お前たちも見るなよ?」


クスリと笑いながら窓外に瞬く星々に釘を刺して、そっとカーテンを閉めた。



次話は「星に誓いを」です。

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