第25話 ノア様の作戦

「わかった、ありがとう。実はある作戦を考えているのだ。明後日、皆王宮に集まってもらえるかい?そこで全て決着を付けよう」


明後日?明日ではなくて?真実の鏡があれば、すぐに決着が着く気がするのだけれど…


「殿下、どんな秘策があるのですか?私たちにも教えて下さい」


1人の男性が詰め寄って来た。


「それは当日までのお楽しみだよ。必ず皆、明後日は王宮に来て欲しい」


「分かりました。ではまた何かありましたら、すぐに招集をかけて下さい。それではこれで」


「ああ、皆、ありがとう」


ん?なんだか物凄くあっさりした会合になったわね。こんなので良かったのかしら?そう思いつつ、来てくれた貴族たちを見送る。


「さあ、やっと帰ったね。本題に入ろうか」


貴族たちが帰り、私とお兄様、ノア様の3人になったところで、ノア様が話始めた。


「殿下、一体どういう事ですか?どうして皆を帰らせたのですか?彼らは協力者ですよ」


お兄様がノア様に詰め寄っている。確かに真実を話し、協力してもらった方が良い気がするのだが…


「申し訳ない。でも僕は用心深いんだ。仲間のフリをして、実はスパイが紛れ込んでいるかもしれないしね。それに義兄上、エディソン伯爵家は実は人魚の血が入っていて、海でも呼吸できる事を皆は知っているのかい?」


「いいえ、知りませんが…それとどういう関係があるのですか?て、まさかステファニー、お前勝手にポセイドンに会いに行ったのか?そう言えば、服が濡れていたな!」


くるりと私の方を向き直し、怖い顔で怒るお兄様。


「義兄上、ちょっと落ち着こう。そう、僕とステファニーはさっき、海の神ポセイドンに会って来た。そして、3日の猶予をもらった。この3日で全てを片付けられなければ、この大陸は海に沈められる」


「何だって!殿下も行かれたのですか?まさかあなた様も…」


「いいや、僕は生粋の人間だよ。ただ人魚の血を引くステファニーと口付けをする事で、僕にも期限付きで君たちと同じ能力が手に入るんだ」


ノア様がさらりとお兄様に説明している。


「なるほど。それで、殿下。何か秘策はあるのですか?」


「ああ、ポセイドンからこれを預かった。真実の鏡だそうだ。この鏡は、真実を映してくれる。もちろん、過去の出来事も。早速見てみたいと思っているのだが、いいかな?」


「真実の鏡だって。それさえあれば、確かに王妃たちを簡単に断罪できる!早速鏡を見てみましょう」


鏡の使い方は簡単だ。鏡を持っている人が、見たい事を念じるだけ。ノア様が鏡を持ち、王妃たちの悪事を見たいと念じると、映るは映る。王妃やモリージョ公爵の悪事の数々。


あろう事か、陛下が体調を崩していたのも、王妃たちの指示で陛下の食べ物に少量の毒を入れていたからという事が判明した。この毒は長期的に摂取することで、徐々に体を弱らせていき、最後には命を落とすとの事。


かなり時間はかかるが、毒だと言う証拠が見つかりにくいと言ったメリットがある。なんて恐ろしい事を…


さらに鏡を見て行くと、今日集まってくれた貴族の中にも、王妃派がいた事が判明した。何て事なの…


「あいつがまさか俺たちを裏切っていたなんて…」


ショックを受けるお兄様。


「義兄上、申し訳ないが彼らの所に行き、“僕が大ほら吹きで、実は作戦なんて何もなかった様なんだ…これじゃあ、戦えない”そう言って嘆いて来てくれないかい?そうすれば、王妃たちも油断するだろう」


「分かりました。早速行って来ます」


その後も色々と真実が明らかになって行く。陛下に使われていた毒も判明した。早速執事に依頼して、解毒剤を手配してもらう事にした。そして、ある映像に差し掛かった時だった。


カラン

ノア様が鏡を落としてしまったのだ。


「ノア様、どうかされたのですか?大丈夫ですか?」


心配で声を掛けた。


「すまない、大丈夫だ。なんだか映像ばかり見ていたから、少し疲れたみたいだ。今日はこの辺にして、僕は少し休むよ」


ふと外を見ると、日が沈み真っ暗になっていた。


「分かりましたわ、では夕食をお部屋に運びますね。ノア様、この鏡、私がお借りしてもよろしいですか?」


「ああ…構わないよ…それじゃあ、僕は少し休むね…」


なんだか物凄く顔色が悪いノア様。大丈夫かしら?そうだわ、夜中に王妃たちの手下たちがノア様を襲って来ないとも限らない。きっとさっき紛れ込んでいたスパイたちによって、ノア様の居場所は付き止められてしまったものね。


とにかく、護衛騎士を増やしておかないと!護衛騎士たちに指示を出した後、食堂で食事を摂る。どうやらお父様が捕まったショックで寝込んでいるお母様。お兄様も今スパイたちの元に行っているし。結局1人で食事を済ませ自室に戻る。どうしても調べたい事があり、早速真実の鏡に向かって念じた。すると、真実が浮かび上がる。


これは…


食い入るように鏡を見つめる。まさか、そんな事があるなんて。でも、これは紛れも無い真実なんだ。よし!


ステファニーはある決断をするのだった。



※次回からノア視点です。

断罪もノア視点で進みます。


よろしくお願いしますm(__)m

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